「赤羽骨子のボディガード」実写映画版の原作ファンによる素直な感想

この記事は

「赤羽骨子のボディガード」実写映画の感想です。
ネタバレあります。

原作が滅茶苦茶面白い

今一番嵌っている漫画です。
「赤羽骨子のボディガード」。

漫画らしいコミカルさも感じるスタイリッシュな絵柄。(超好き)
ハッタリと外連味に溢れたスピーディーなストーリー(好き)
魅力的で可愛すぎるヒロインズ(孔蘭愛してるぞぉぉぉ)

少年漫画として隙のない面白さで、ドハマりしています。

さて、そんな愛すべき漫画が実写映画化。
普段なら「やめてくれぇぇぇぇぇぇ」って叫び倒すところなのですが、今回はかなり楽しみにしていました。
理由は特にないんだけれど、強いてあげるなら「(原作を)もっと注目されて欲しい」という想いからでしょうか。

ということで、前向きな鑑賞動機で見てきた今回。
素直に感想を書き記します。

世界観とキャラクターについて

このご時世、「ヤクザが未成年を配下に置いている」というのはアウトなのかな。
「尽宮組」という設定が完全に無くなり、正人は「国家安全保障庁長官」という組長とは正反対に近い立ち位置へ変更w
当然、3年4組、正親、丈夫らも国家側の人間に。
丈夫に至っては警備部所属の刑事(SP)だったのかな。
原作設定の影も形も無いことになっていました。

まぁ、仕方なし。
個人的に「主人公がヤクザ側のキャラ」という設定自体に嫌悪感に近い感情を持っていることもあって、この変更は納得出来ました。

だけれど、「骨子が狙われる理由」が意味不明になっていたのは辛い。
原作の「日本の裏社会の頂点ともいえる組長の後継者候補故に高額の懸賞金が賭けられて、多くの裏家業の人間から命を狙われている」という根底の設定がグッラグラして崩壊寸前。
「多くの裏社会の組織を崩壊(逮捕して壊滅)させてきたから」と説明されていましたが、それだけで正人本人ではなく、隠し子の骨子に100億もの懸賞金が賭けられる意味が分からない。

ここは作品を語る上で致命傷に成り得る部分。
人によっては駄作の烙印を押すだろうね。
無理に擁護するならば、「尽宮組」設定を使えなかった(使えなかったというのは、僕の想像に過ぎないが)弊害として、どうしようもなかったと見るしかない。
いくら逆恨みとはいえ、恨まれている本人の家族が執拗に狙われる納得いく理由なんて、簡単には説明できないでしょう。
それを語るだけで映画1本分は必要なんじゃないか。
クソほど大事な設定なのだから、しっかりと違和感なく作り込めよと思わなくも無いけれど、僕個人としてはスルーしました。

 

ネガティブな部分はここら辺にして、ポジティブな面にも目を向けます。
荒邦を含めて23人のボディガード。
原作ですら未だにキャラが立っていない・目立っていない者がいる中でも、なんとかして1人1人に見せ場を作ろうという気概が見て取れました。

例えば、霧宮、敷本、幡、杜窪。
それぞれ「配信者(ストリーマー)」、「技師(メカニック)」、「潜水士(ダイバー)」、「医師」という肩書を持っているけれど、原作での出番は今一つだしキャラも薄い。
そんな中で「スマホ(タブレット)の中だけで出てくる霧宮」、「猫型の変なスーツを着て戦う敷本」、「終盤のどんでん返しに加担させられていた杜窪」と印象に残るように見せ場が作られていました。
…幡は……、映画でも大きく目立ってた訳では無いけれど、原作には無い潜水シーンがあっただけでも感動した(笑
挙げなかった生徒も含めて、可能な限り観客の心に爪痕を残すような工夫が見て取れたのは良かった点。

そうそう。
忘れてならないのが那木うずめ。
「調教師」として様々な動物を連れている少女。
彼女を「殆ど喋らない初期の弥美姫」の通訳として活用してたのは笑ったと同時になるほどなと膝を打ちました。
人間も動物ですしね。
調教師として弥美姫も”調教”してたってことなのでしょうねw

 

メインキャストにも触れておきましょう。
威吹荒邦。
僕はSnow Manやラウールさんに明るくないので、殆ど印象論なのですけれど、彼には「不良生徒」の印象はまるで持てないんですよね。
爽やかな好青年で、荒邦とは真逆な感じ。
あぁ、荒邦の初心なところは印象近いかな。
それ以外は全然違う。
だからなのか、序盤はかなり違和感を覚えたんです。
不良な言動がどこまでも芝居染みて見えて、不自然に映りました。

見た目は近づけてくれてるけれど、中身が…って感じ。
しかし慣れからか中盤以降は普通に見れた。
荒邦の仲間思いなところや恋に初心で真摯な面が描かれてきたからというのも大きいかな。

他の要因を挙げるならば、正親の登場でしょう。
土屋太鳳さん!!
驚いた。
登場直後の正親の演技が迫真。
鬼気迫るという言葉が非常にピッタリで、こういう演技も出来るのかとただただ驚きました。
恋に落ちた後のギャップも完璧で、本作を演技面で引き締めてくださっていたと謎の上から目線で感じた次第。

シナリオ

前項と大いに被るところがあるのだけれど、マイナス点を挙げれば、やはり最大ポイントは「骨子が狙われる理由」だろうね。
ここが脆弱どころか完全に崩壊。
致命的なまでの欠陥なのだけれど、「映画には尺があるから」とか前述の無理矢理擁護でなんとか誤魔化せば、かなり纏まっていたのではないかと思う。
何故そうまで言えるか。
原作では序盤の原動力となっていた「裏切者は誰か」というところを持ち出しつつ、無難に着地出来ていたからですね。

「3年4組の中に裏切者がいる」。
あまりにもショッキングな謎を提示し、グイグイと読者の興味を引いていた序盤のストーリーにおける最大のキー。
これそのまま原作通りにしちゃうと尺が足りなくなるし、中途半端なままにすると後味が悪くなる。
「3年4組の外にいた」とするしか無いという点には先ず納得。

その中で、それでも内部に裏切者がいたという展開を作って観客の興味を引く為に、原作にもあった「澄彦裏切者説」を発展させていたのは好ポイント。
澄彦の解釈違いだろうかという原作既読者の違和感を逆手にとって、「実はそうじゃないよ」というオチに繋げていたのは面白かった。
僕自身「澄彦はそんなこと言わんだろ!!原作と解釈違いすぎる!!」とガッカリしてしまったのですけれど、彼が襲ったのが「詐欺師」の海代だった点から「もしかしたら」に思い至れたところも含めて、スタッフの掌の上だったのだろうな。

ただ単に「澄彦が裏切者をあぶり出すために一芝居打った」というシークエンスにするのではなく、そこにキャラの個性をしっかりと反映していたところが原作ファンとしては良かったのですよ。
澄彦の「司令塔」としての能力と海代の「詐欺師」としての見せ場を用いての逆転劇だったからこそ、高い満足感を得られたのだ。

総括

決められた尺の中で、最低限の原作愛を込めて作られていたように思えた。
「最低限」という単語をわざわざ付けたのは、やっぱり致命的な欠陥があったから。
そこはどうしようもないよねと個人的には納得したけれど、作品の出来を語る上では無視できない要素ですからね。

ま、人はどうあれ、個人的にはそこそこの満足感が得られたから良かったですよ。
なんかフジテレビが絡んでたぽいので、アニメ化の足掛かりになってくれたら嬉しいかな。

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