この記事は
「甘々と稲妻」と「幸腹グラフィティ」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
はじめに
「甘々と稲妻」を3巻まで購入。漸く読了しました。
やはり面白い!!
作品全体を包む優しい雰囲気が実に心地良い。
そして、今期から始まったアニメ「幸腹グラフィティ」も視聴。
キャラデザが超好み。
可愛い少女達が1つの食卓を囲んで、ほんわかとした空気を醸し出している。
これまたほっこりするアニメでした。
共に「食事」を通じた「家族の絆」を描いているかのような作品。
ちょっと比較しつつ、両作品についての記事を書いてみます。
連載誌の違いによる作風の微妙な違い
講談社の「good!アフタヌーン」誌上で連載中の「甘々と稲妻」。
青年誌連載という事もあり、メインは父と娘の心の交流としています。
これに女子高生を絡めて、ほんのりとした恋心(と思しき感情)をも描かれている。
一方の「幸腹グラフィティ」は原作未読の為アニメ1話分の知識しか持ち合わせていないんですが、芳文社は「まんがタイムきららミルク」連載中の4コマ漫画。
萌えを前面に押し出している「まんがタイムきらら」グループ誌連載故に、今作もまた萌えを意識したキャラクター設定となっている感じです。
中学生(後に高校生になるようですが)2人の少女を中心とした食事を通した暖かな交流を描いていくような感じですね。
「食事を通じた心の交流」という同じテーマを持ちながら、読者層の違いから作風も微妙に違うものですね。
「甘々と稲妻」はちょっぴり切なさも感じるんです。
主人公・公平の愛娘であるつむぎはまだ5歳の幼子。
母を亡くしたばかりで、寂しい気持ちをグッとこらえて公平の為に健気に我慢の日々を過ごしていた女の子であり、物語は彼女の笑顔を保つために動いています。
つむぎが「おとさん(公平)と一緒に食べるご飯はおいしいね」と満面の笑みを作るから、料理の出来ない公平は、同じく料理の苦手な女子高生(公平の勤める高校の教え子)・小鳥と共に切磋琢磨しながら手料理を学んでいく。
3人での食事会が、母(妻)を亡くして失いがちとなっていた父娘の心の交流となり、つむぎの笑顔が守られていって…。
でも、まだまだ5歳の少女だから、時折そんな温かい手料理から母の面影を思い出しては、しゅんと落ち込んでしまう。
これがまた切ないんですよね。
公平が一生懸命娘の笑顔の為に「手料理」…「おふくろの味」を再現しようとすると、逆に娘に悲しい・寂しい想いをさせてしまうところが。
普段はつむぎの天真爛漫な明るさがぱぁぁっと照らして、温かい食卓を囲んだ優しい空気の流れる作風に仕上げられていますが、切ない空気もその裏で確かに息づいている。
青年漫画らしい作劇を確かに孕んでいる作品なんですよね。
「幸腹グラフィティ」は、主人公が女子中学生の為か、同じく親しい人を亡くしているものの、その死に悲観に暮れるというよりも、「青春」に重きが置かれているようなイメージを持ちました。
きりんが前向きで明るい少女だったから、リョウもまた明るい日々を過ごすんじゃないかなと。
「食事は1人より大勢でわいわい賑やかに食べた方が美味しい」を地で行く作風とでもいうのでしょうか。
「甘々と稲妻」にも根付いている作風であるんですが、よりその面が強調されている印象があります。
簡単に言えば「甘々と稲妻」第9話の餃子パーティー回の底抜けに楽しいノリを中心にしてるような。
女子中学生同士のキャッキャウフフで楽しい交流がメインになっていくんじゃないかという想像ですね。
リョウやきりんと交流を深めていくんだろうなと思しきクラスメイトが何人も顔出ししてましたから。
萌えの定義に則れば、彼女達を含めた大所帯での交流を賑やかしく描いていきそうなんです。
あくまでもアニメ第1話を視聴しただけでの勝手なイメージですので、実際の原作は全然違う可能性はあります。
ですが、「同じように作った料理なのに、1人で食べる時ときりんと一緒に食べる時では味に変化があった」という描写は、そういう事を描きたいからこそだったんだと思っております。
さてさて、両作品とも主要登場人物にとって大事な人を亡くした点から始まっております。
これは何を意味しているのかなと考えてみたら、答えは1つしか浮かびませんでした。
家族の喪失という出発点
家族の形態も時代と共に移ろい、今や古い考えなのかもしれませんけれど、家族の交流の場と言えば、やはり食事になると思うのですね。
「サザエさん」だって「ちびまる子ちゃん」だって、1話に1回は必ずといって良い程家族の食事シーンがあります。
“一家全員”で1つの卓を囲んで、その日あった出来事を報告し合う。
食卓に並ぶのはいつも家庭料理。
一家の料理長を務める者…多くは専業主婦である母達が作ったおふくろの味を食べることで、家族全体の交流が図られていく。
「甘々と稲妻」も「幸腹グラフィティ」も、中心となる風景はコレになっている筈です。
ですが、最初からこの風景が作られているとドラマを作れません。
始めから心の交流がなされている中で「食事を通じた心の交流」を描いていくのは至難の業です。
作品としては面白味が無いかな。
だから、そこを開始段階から崩している。
「甘々と稲妻」での母と「幸腹グラフィティ」のお婆ちゃんは、共に「家庭での食事」を司っている中心人物でした。
そんな彼女達を亡くしている事はイコール「残された家族の心の交流の喪失」にもなっています。
仕事に忙しく、また、家事の出来ない公平はつむぎとの時間をなかなか作れずにいて、食事はもっぱら1人でコンビニのお弁当となっていた。
文字通り1人になってしまったリョウは、寂しいというよりも「1人での食事のつまらなさ」を感じていた様子。
誰かと一緒に食べるという機会を逸している時点からスタートする事で、再びそれを得たことでのカタルシスがあります。
今までは当たり前のようにあった一家団欒での食事。
一度喪失する事で、それがどれだけ大切だったのかを登場人物が知る所となり、それを大事にしようとして物語が動き出すという構図。
出発点が同じになっているのは、偶然と云うよりも、同じテーマを扱う上では一種の必然ともいうべきことなのかもしれません。
「家庭で作れる普通の料理」がポイント
料理漫画とは違うんだよというのも、両作品の特徴と言えそうです。
料理漫画って色々ありますが、その殆どが「プロの料理人」を目指す作品です。
有り体に言えば「普段家庭で作られない料理」が殆どなんです。
家庭で作られているような料理であっても、何かしらの工夫が施されているのが当たり前。
単純に高級食材の使用であったり、家ではなかなか出来ない様な調理上の工夫がされていたり。
だけど、この2作品は違うんですよね。
一般の材料を使って、一般の家庭で一般的に作られている品を、たいした工夫もなく登場させている。
流石に餃子の皮から手作りとかは、そうそう出来ないですし、やってる家庭も少ないでしょうけれども、基本は「普通の家庭料理を普通に作っている」。
「幸腹グラフィティ」にしても、リョウが風邪を引いたきりんに作っていたうどんに何か特別な作り方があるのではと、美味そうだったら真似しようと考えてちょっと期待しつつ見ていたんですが、そんなこともなく。
リョウが語った調理法は至ってシンプルなものでした。
あくまでも心の交流が主軸。
料理はその場を作り出す為の舞台装置に過ぎない。
料理ひとつ取ってもそういう「やりたいこと」が見えて来るようで面白いです。
料理に関しては、あくまでも「手作り」に拘っている点も良いですよね。
「幸腹グラフィティ」は今後どうなるか分からないんですが、でも、基本線は「甘々と稲妻」と同じなんじゃないでしょうかね。
手料理でないと、やっぱり心の交流がどうこうって語れないと思うから。
公平がぎこちないながらも一生懸命につむぎを想って作る料理だからこそ、つむぎは最高の表情を作ってくれるんでしょうし、僕等読者としてもそういう想いが見て取れるから感動できる。
なによりも「家庭で作れる普通の料理」をなによりも美味しそうに食べる姿が本当に良い。
これはどちらの作品にも言えることですね。
家で作った素うどんを食べて、心の底から美味しいと感動したことはありますか?
ただの白飯をおかずも無いのに、美味しい美味しいと頬張ることってありますか?
なかなかそういう経験って無いです。
ですが、公平もつむぎもリョウもきりんも、皆美味しいと漏らし、幸福な表情を浮かべる。
食事そのものが美味しいというよりも、「手作りの心の籠った料理を、家族で食べているから」。
だから一層美味しく感じているのだろうと。
これについては、つむぎが1話で実際に口に出していて、公平が小鳥と食事会を続ける意思を固めたきっかけにもなっている。
そんで、僕が「この漫画最高に良い!!」と確信したとこでもある。
こういう「食事を通した心の交流」の表現が心に響いたから、僕は両作品ともに面白いと感じました。
プロの作った料理では、作り出せない演出。
料理下手なお父さん(公平)と女子高生(小鳥)や普通の女子中学生(リョウ)の作った料理だからこその効果ですね。
終わりに
「甘々と稲妻」は3月に4巻が発売されるようなので、早速楽しみにしたいです。
小鳥の淡い恋心の行方にも惹かれていて、目が離せませんね。
「幸腹グラフィティ」については、今期楽しみなアニメの1つとなってくれました。
期待通りの出足で、毎週毎週待ち遠しい。
にしても、どっちも本当に美味しそうに食べるので、深夜に視聴してると大変ですw
食欲が無性に掻き立てられる作品。
ということで、夕食作りに行きます。(現在午後6時半、夕食時)
パスタだパスタだ、わーいわーい♪
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