「千歳くんはラムネ瓶のなか」第6.5巻感想

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「千歳くんはラムネ瓶のなか」第6.5巻の感想です。
ネタバレあります。

短編集!!!

シリーズ初の短編集。
詩的な文章で紡がれる女の子の気持ちを書かせたら、裕夢先生だよね~。
好きだわ~。
今回は特に朔がサブに回って、各ヒロインの視点で描かれてたから格別でした。

1章毎に感想を書きます。

一章 八月の夜に結んだ十年前のゆびきりげんまん

夕湖と悠月の物語。
夕湖のどこまでも前向きな傷心旅行的な。
6巻で吹っ切れたから、失恋の傷を癒すためとかいう訳では無かったから、傷心旅行と書くと違うか。
でも、朔への気持ちに一つ大きな区切りを着けて、改めて朔に恋するという意味において、とっても大きな意味を持ったお話だったと思う。

夕湖エンド全然あり得ると思うのですよね。
物語開始時点から周囲の生徒から「朔の正妻」扱いされていた夕湖は、他のヒロインとは一線を画すヒロインだったと思っています。
挫折も回り道も無く、そのままくっ付いたらラブコメとして呆気なさすぎるというか。
だから一度関係をフラットにすることで、夕湖も正式に「朔の嫁」レースのスタート地点に立てたのかなと。

そんな夕湖の再出発の場に悠月が選ばれたのは、2人が表裏一体の存在だからなのかもですね。
少なくともそういう風に読み取れました。
シンデレラと魔女に自分たちの関係を重ねてみたり、服と下着の好みから人間の表裏であると考えたり。
二人は鏡のように正反対のようだけれど、なづなという「第三者」が「似た者同士だよ」って教えてる。
悠月が夕湖を白雪姫と評するなら、悠月だって白雪姫なんだよと。
そう彼女自身が自覚して、朔への気持ちを強める。

「告白したヒロイン」と「告白しなかったヒロイン」。
2人同時に恋心を新たにさせていた良エピソードでした。

二章 やがて涙で咲かす花

個人的に今巻のマイベスト。
お話の感想とは違うけれど、プロの小説家と素人の物書きの違いって「異なる視点や思想、考え方を書けるか否か」にあると思うんですよね。

考え方って人それぞれだし、多くの場合「絶対的な答え」なんてない。
あるのは「より人の支持を得られるのはどちらか」という指標くらいかな。
「多くの支持を得た方が正しい」って訳では無いけれどね。

得てして1人で書いてると「自分の考え」しか作中に反映されないから、多くの人に刺さることは少ない。
だからこそ、色々な人の話を取り込んだり、プロになるなら編集者のアドバイスを聴いたりすることが大事になってくる…みたいな。

作中の話に戻りますね。
明日風のインタビュー。
どう感じました?
僕は、彼女と同じように「良い感じ」と思いました。
インタビュー対象者が答えに詰まっていたら、適切な手助けをして、答えを引き出している。
初めてということを考慮しても、自分がこんな風に上手く出来るかと想像したときに絶対に無理だなぁと心から思ったのです。
入念な下準備あってこそだし、彼女の努力とインタビュアーとしての素質の成果だな~。
すげぇなぁって。

でさ、このまま「明日風のインタビューが素晴らしかった」で作中の物語も終わってたら、それはプロの書いた物語では無いんだろうね。
インタビューで飯食ってる人たちからしたら失笑モノなんだろうから。

インタビューとは何かを全く知らん僕のような人間が仮に書くと、そんな失笑モノの物語しか書けない。

けれど、プロは違う。
明日風のインタビューはダメだと書ける。
何も知らない僕からしても納得出来る理由をしっかりと提示した上で。

なんか物語の事とはまた違ったところで、妙に感心してしまってね。
しかもですよ、この挫折を意味のあることとした纏め方も上手いし、古本屋での出来事も経て「明日風が地元に残る道を取るんだろうな」という薄っぺらい僕の考えすら「違う」と説得力抜群の心情描写で描かれる締めも素晴らしくて。

作外のことについても色々と考えさせられたエピソードでした。

三章 彼女と彼の椅子

朔のイケメン具合が最も出ていたお話。
高校生で大人(優空の父)相手にこんなにしっかりと受け答え出来るって尊敬に値する。
しかもさ、ただ話するだけでは無くて、どこまでも誠実。

優空に対しても椅子をプレゼントするとか。
狙ってないのに全力で落としにかかる朔、これは惚れるわな。

1章で夕湖も悠月も「朔にとっての初めて」について浮かれたり落ち込んだりと思い悩んでたけれど、優空もそうだったのね。
でもさ、朔が椅子をプレゼントしたからという訳では無いけれど、傍から見てると「朔の家のキッチン」は優空の専用席だよな~。

彼自身も料理するし、悠月だって出来るけれど、優空が朔の胃袋を掴んでるようにしか思えないんすすわ。
買い出しも料理も空気感が完全に熟練夫婦だもの。

今回「椅子」という形あるものを得たことで、優空の立ち位置も確固たるものになったように思ったのでした。

四章 かかげた両手に花束を

陽の物語。
熱血スポコン。
完全に少年漫画の主人公w
好きな人を侮辱されてブチ切れて強者に逆襲する。
「少年漫画」で育って、未だにどっぷりと漬かってる僕としては、一番感情移入して読めたw

それだけに真実が分かっても、先輩コンビが憎たらしくて仕方ない(汗

ところで美咲ちゃんは何者なの(笑
現役プレイヤー(しかも相当上手い設定なんでしょ)を手玉に取って、一緒にゲームに参加するってプロなの?w
公立高校の部活の顧問やってるのが不思議な逸材なんですが。

正直この先生との出会いが陽にとっては、掛け替えのない財産な気がしてなりません。

終わりに

ヒロインレースが混沌として来てる。
ここまで誰ルートになるのか読めない作品も無いよね。
全員が全員魅力的だし、誰が勝ってもおかしくないし、むしろ誰も負けて欲しくない。
総括としては、各ヒロインの魅力が滅茶苦茶堪能できました。

あと、金沢行ってみたくなったw
東北って会津若松しか行ったこと無いんよね。
寒いの苦手なので。
今度行ってみたいな。
その時はちゃんと「チラムネ」のコラボにも触れて。(金沢市でコラボしてるのかは分かんないけど)
この短編集をガイドブックに東北を周ってみても楽しいだろうなぁ。

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