殺人ラブコメ漫画
コナンは殺人ラブコメ漫画である。
「週刊少年サンデー」2004年50・51合併号で連載500回を迎えた「コナン」。
この号に付録として掲載された「完全キャラクターBOOK」(49巻に再録)内での青山先生の発言です。
「コナン」を構成する要素の中でもラブコメの占める割合がかなり大きい事が窺えます。
だからなのかな。
やたらとカップル(未満)の男女が多いです。
それも、みんな両想いかそれに近しい関係ばかりで、告白一歩手前の状態で足踏みしてる状態。
公式でくっついたとされているのは、園子・京極ペアと高木・佐藤ペアの2組だけ。
平次・和葉、白鳥・小林、千葉・三池の各ペアはまだまだ。
白鳥・小林ペアに関しては、殆ど付き合ってると言えるような感じではありますけれど。
ラブコメってる片手間に殺人事件を解決してる感覚でしょうか(笑
そんな殺人ラブコメ漫画の主役といえば、当然のごとく新一(コナン)と蘭。
青山先生的にも一番魅せたい・ラブコメしたいカップルなのでしょうから、美味しいネタ・温めていたネタをこれでもかと注ぎ込まれている感じです。
映画第1作「時計じかけの摩天楼」にも青山先生のこのカップルへの情熱が見て取れます。
「別の漫画(確か「まじっく快斗」だったと思います)用に温めていたとっておきのネタ」を「映画は最初で最後かもしれないから」と惜しげも無く提供したというのは有名な逸話。
主役カップルだけにネタにも力を込めていると。
2話目から全速全開でしたしね。
コナンと蘭の出会いのシーン。
毛利探偵事務所に戻る道すがら、蘭はコナンが新一だと知らずに「わたし、新一がだーい好き」と告白。
「もしかしてオレのことが好きなの?」とからかったつもりのコナンも、この蘭の返答は「推理」出来なかったのでしょうね。
驚きと共に顔を紅潮させて、ついつい正体をばらそうとしちゃってます。
もしも小五郎が階段から転げ落ちて来なかったら、「コナン」はこの瞬間に最終回を迎えていたかもしれませんw
この後も、温泉旅館で蘭と混浴してしまったりとラブコメイベントを堪能(?)するコナン。
イベントをこなせばこなすほど、普通だったら仲が深まっていくもの。
ですが、この2人の場合は逆ですね。
ラブコメればラブコメるほど、ややこしい状況になっていっているんです。
蘭がコナンの正体に迫ること3回
新一(コナン)と蘭、2人のラブコメイベントの転換点と言えば、当然ですけれど「正体に感付かれる」ことではないでしょうか。
そこで、これまでの重要ポイントを軽くおさらいしておきます。
最初の疑いは、第8事件「月いちプレゼント脅迫事件」(第3巻)。
小学一年生とは思えない言動をするコナン君。
早くも蘭に疑われます(笑
正体は新一なんではという核心を突かれ、慌てたコナンは阿笠博士を身代わりに立ててアリバイを作って、なんとか誤魔化します。
この時、蘭が新一自身に「だーい好き」と告白してた件に気づいて取り乱しています。
嘘ついていたこともそうですが、このラブコメの一件もしっかりと受け継がれていて、蘭は「ただじゃすまさない」雰囲気をビンビンに醸し出していました。
あそこで蘭をからかおうとしなければ…。
コナン、痛恨のミスかもしれません。
2度目はそうそうに訪れます。
第37事件「追いつめられた名探偵!連続2大殺人事件」(第14巻)。
その前半を彩った有名マジシャン殺人事件。
事務所のソファーで寝ていたコナンは、蘭に眼鏡を外され、素顔を見られてしまいます。
事件になると鋭いのに、ラブコメパートでは相変わらずのうっかり振りを発揮するコナン。
あっさりと「小さい頃の新一そっくり」とバレ、またしても正体を疑われます。
事件も解決し、蘭と共に買い物に連れ出されたコナン。
工藤邸に誘導されて、詰問タイムの始まりです。
告白、添い寝(同じベットで寝る)、混浴。
「両想いのカップルが通り過ぎるイベント」の数々をなんだか知らない間に熟してしまっていたと気付いた蘭さん。
騙していたのねと激おこです。
完全にラブコメイベントの数々が仇になっています。
ただでさえ正体を偽って騙しているのに、新一(コナン)にとっては本人の意図しない点で「余罪」が増えていっています。
告白も添い寝も混浴も、全て蘭の方からアクションを起こしてますから。
前回のバレから余罪が2件追加され、いよいよ追い込まれてきました。
この時は、有希子の登場でいったんは引いた蘭ですが、疑いを完全に捨てた訳ではありませんでした。
第65事件「二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件」(第23巻)などでその様子が見て取れます。
この疑惑が完全に払拭されたのが第71〜73事件「命がけの復活」シリーズ(第25〜26巻)。
蘭の目の前にコナンと新一の2人が同じ場所に出現。
この時ばかりは流石の蘭も混乱(笑
目の前に同一人物と疑っていた2人がいるんですから、そりゃ驚きますよね。
一番驚いていたのは平次でしたけどwww
第8事件の時のような電話越しならば小細工の可能性を簡単に思いつけそうですが、変声機型マスクの存在に辿り着かない限りは、このトリックには考えが至らないでしょうし。
ともあれ、仲間の協力の元完璧なアリバイを手に、疑いを完全に晴らしたコナンですが、ささいな出来事から再び蘭から目を付けられます。
第138事件「奇妙な一家の依頼 疑惑を持った蘭」(第46〜47巻)。
蘭が新一に送ったメール。と同時にコナンの携帯にメールの着信が。
あまりにもタイミングが良過ぎるこの出来事が発端。
始めは「何十回も何百回も推理が出来過ぎる」とコナンの推理力の高さへの不信感から、コナンと新一が密に連絡を取り合ってるのではと疑う蘭。
事件捜査の過程で、つぶさにコナンの動向をチェックすることで、三度コナンの正体は新一だという結論に達します。
本気になった蘭は、非常に怖い存在です。
こうなるともう手が付けられません。
ロジックだとか推理だとか、そんな些細な事は彼女の怒りの前では紙屑同然です。
高校2年の新一が小1のコナンに小さくなれる訳無い?
そんなの阿笠博士の発明でしょ。
新一とコナンが同じ場所に同時に居た?
そんなの何か奇想天外なトリックでも使ったんでしょ。
コナンが苦労して築き上げた完璧なまでの「新一がコナンであるはずない」根拠の数々が、いとも容易く破られていきます。
まさに無敵。
というか、蘭の中の阿笠博士像がヤバいです。
人間を小さくする薬を開発しただけでなく、新一に飲ませて、知らぬ存ぜぬを決め込んでいるという認識です。
かなりの悪人として認識されてるんじゃなかろうか(汗
ボコにしてやると息巻く蘭。
いよいよ決定的証拠を握るべく、コナンの携帯を入手。
中を覗こうとしますが、ふと我に返ります。
「ホントにいいのこれで?」と。
「もしも本当にコナン君が新一だったら、この後どんな顔で会えばいいの?
あんな事やあんな事やあんな事まであったのに…」
あんな事(告白)
あんな事(添い寝)
あんな事(混浴)
あんな事(抱きかかえる)←New
余罪が1個増えてました。
もう仕方ありませんよね。
ラブコメ主人公の宿命でしょう。
回を重ねるごとにラブコメっちゃうわけですから。
さておき、この時もなんとか回避したコナン。
携帯番号を教えてしまいましたが、蘭の中からコナンと新一同一人物説を今度こそ完全に無くせたと見て良いでしょう。
以降現在(87巻)に至るまで267の事件を解決していますが、蘭に正体を疑われていませんので。
とはいえ、最終的にはばれてしまうのが漫画に於ける秘密というもの。
秘密の正体は絶対にばれてしまいます。
その時、このラブコメ余罪がコナン=新一の命を脅かすのでしょうか?
恐らくはノーでしょう。
蘭はこれらの件を恥ずかしがっているだけで、この事を強く非難することは無いと思われます。(羞恥心からの一撃くらいはあるかもですが)
「自分からアクションを起こしている」というのもミソですよね。
コナン=新一が下心からラブコメシチュエーションに持って行っているならまだしも、蘭の方からそのシチュエーションを起こしている。
こういう点、蘭はちゃんと大事にする子かなと。
分別を持って対処する気が致します。
なので問題はこっちじゃありません。
考えてみたんです。
コナンが犯している「最大の罪」って何か?と。
ラブコメシチュエーションの堪能?
これではないと書きました。
蘭を置き去りにしてる件?
うん。これは大きい。
酷く傷つけて、心配させてますから。
でも、僕としてはこれも違うんじゃないかと思っています。
最後にコナンの正体を疑った第138事件で、蘭がコナンの携帯を覗こうか逡巡するシーンでの事。
「自分にも言えない事情を抱えているだろうから、向こうから言ってくるまで待ってた方がいいかな」と迷っています。
第37事件で二度目に疑ってから第73事件までの間もそうなんですが、蘭って「待てる子」なんですよね。
何か特殊な事情を抱えているだろうからと慮って、新一から事情を説明してもらえる時まで待てる。
流石に何度も何度もその機会をはぐらかされているので、都度限界を迎えそうになってますけれど、基本的には待ってくれている。
だから、きちんと事情を説明し納得してもらえれば、大丈夫な筈。
納得してもらえるような事情ですしね。
正体を隠している件もここと密接に関わってきている為、当然この事でも無いと考えます。
では、何か?
最大の罪は「小五郎を名探偵にしてしまったこと」ではないでしょうか。
コナン「最大の罪」
間違いなく新一と蘭のラブコメでは、大きな波乱が今後待ち受けていると思うのですね。
その理由が、告白にあると考えます。
蘭から新一への告白は、完全にラブコメでした。
「恋愛シチュエーション」とでもいうのかな。
恋愛漫画に於ける真面目な雰囲気も、ドキドキした甘ずっぱい空気も無く、コメディ色が強いシーン。
非常にあっさりと終わってます。
2人が晴れてカップルになるには、あとは新一からの告白のみという状況が早々に形作られているんですよね。
両想いである高校生2人が、真に付き合う状態になる為の「儀式」のトリが新一からの告白であり、これを作品全体のクライマックスに持ってくるのではと想像していた時期もありました。
物語的にも一番盛り上がった時に、最高の台詞で蘭に告白する。
ラブコメとしても、最大に盛り上がりそうじゃないですか。
でも違ってました。
作品としても半ばで訪れたんです。
第217事件「ホームズの黙示録」(第71〜72巻)。
「コナン」は3話で1エピソードという構成が殆どであり、長編であっても5〜7話で収まっています。
そんな中、唯一単独事件としては最長の10話構成で描かれた一大エピソード。
ロンドンを舞台に、殺人狂から届いた暗号解読と犯人追跡を事件のメインとしたもので、非常に力の入った事件。
このエピソードで、新一が遂に蘭へ告白します。
告白するんですが、思っていた以上にあっさりというのが正直なトコ。
回想という形で描かれたというのも、このあっさり観に拍車を掛けていたのかもですが、然程盛り上がるような構成じゃなかったんですよね。
盛り上がる云々は僕個人の感覚なので、人によりけりなんですけれど。
クライマックスかと勝手に信じていた新一からの告白があっさりと描かれてしまった。
それも、作品の最終回のずっと手前で。
何故?とも思ったのですが、物語全体を読み返すと、当然の帰結だと気付かされました。
これまでの過程で、蘭はコナンの正体を新一ではと疑い、そして、完全にその疑惑を無くしました。
そう。
完全に無くしたんです。
今後、蘭がコナンは新一ではと疑う事は無いはずです。
最後の最後、作品の終盤でコナンの正体がバレるその時までは、ずっと蘭の中では「コナン≠新一」なんですよ。
だから、最初のコナンへの蘭の愛の告白は、蘭の中で新一への告白とはなっていない。
その証拠が新一の告白直後のエピソードである第219事件「絶叫手術室」(第72巻)で描かれています。
園子に焚き付けられ、新一へ告白しなきゃダメかな〜と悩んでます。
悩むという事は、蘭自身新一自身へ気持ちを伝えていないと思っているからであり、彼女の中でコナンと新一が違う人間だと完全に信じているからですよね。
コナン=新一自身は、蘭からの告白を受けたという認識でも、蘭はそうじゃない。
コナンの正体を疑わなくなった時点で、物語のラブコメの終着点が変わったんですよね。
新一からの告白がゴールなのではなくて、蘭からの告白がゴールとなった。
最終目的地へ辿り着く為の着火点だからこそ、新一からの告白は物語的に大きく盛り上げなくても問題は無いのかなと。
そう。
この先、ラブコメとして一番盛り上がるシーンとして、蘭からの告白がある。
世良という恋敵になりそうなキャラの登場だったリ、和葉に話した際も「もう少しこの幸せを感じていたい」と返事を先延ばしにしたいという本音を覗かせたりと、告白は先へ伸ばそうという”神の意志”が見られます。
作品として滅茶苦茶大きな節目で、告白があるのかなと。
となると、それは波乱含みに違いないんですよ。
だって、蘭が新一を好きなのは言うまでも無いんですから。
ただ単に蘭からの告白を描いても、分かりきってる事なので気持ちの部分で盛り上がり難いじゃないですか。
「蘭が新一を嫌いになるかもしれない」という波乱があってもおかしくない!!
いや、ある筈!!
と。
やっと繋がりますが、その「嫌いになるかもしれない」要因に成り得そうなのがコナン「最大の罪」。
「小五郎を名探偵にしてしまったこと」。
第1巻第1話でこんなシーンがあります。
蘭「バッカみたい…ヘラヘラしちゃって…」
新「なに怒ってんだよ、蘭?」
蘭「べつにー……新一が活躍してるせいで、わたしのお父さんの仕事が減ってるからって…怒ってなんかいませんよー!!」
あかんべーをする蘭
新「あれー?蘭の父さん、まだ探偵やってたのか?」
新「でも仕事が来ないのは、オレのせいじゃなくて、あの人の腕のせい…」
蘭「ホホホ…」
電柱を鉄拳で破壊しつつ
蘭「だから、怒ってないっていってるでしょー!!」
高校生名探偵として世間に持て囃され、高笑いをしてる新一に対して軽くイラッとしてるというのもありそうですが、小五郎を小馬鹿にされてムッとしてるのもありそうです。
というか、そうとしか見えない。
蘭が父親を大事に想っているというのが窺えるシーン。
とはいえ、蘭は小五郎を優秀と思っていた訳では無いんですよね。
酒ばかり飲んでグダグダしてるから、仕事が来ないし、英理にも逃げられたという発言があります。
初めてコナンが眠りの小五郎で事件を解決した際には、「父さんの事見直しちゃった」とも。
「仕事もせずに酒ばかり飲み、お母さんを出ていかせたダメ親父」。
恐らく蘭の小五郎への心象はこれに似たり寄ったりだったと思われるのですが、コナンが眠りの小五郎を演じ始めてから一転。
事件関係者に積極的に「わたしの父は名探偵なんですから」と言うまでになっています。
父としての愛情や信頼は変わらないものの、仕事をする人間としても一種の尊敬に近いものを持つ事になったと推測出来ます。
そもそも蘭がコナンの正体を疑った理由の1つに「小五郎への助言」がありました。
どの事件も振り返ってみれば、コナンの一言で事件が解決していったという気づき。
最後に疑った際も
そう……さすがね新一……
ちょっと賢い小学生ぶり…見事だわ…
(中略)
的確なヒント(パス)を出し解決(ゴール)に導く…
名探偵(ファンタジスタ)…
とコナンが小五郎に助言して、事件を解決していると見抜いております。
だけど、蘭の推理はココ止まりなんです。
2回目に疑った際に「マスク型変声期によるトリック」に気づけなかったのも、そもそも変声期の存在に考え付いてないからなんですよね。
博士がそういう発明をしたと考えてない。
その為、「眠りの小五郎の秘密」にはちっとも疑問を持っていません。
小五郎を眠らせて、変声機でコナン=新一が推理ショーを行っているという考えは微塵も持っていないと。
あくまでも、眠りの小五郎は、小五郎自身の意志で行っていて、それ以外の時にコナンが小五郎に助言を出して影ながら事件を解決してるという考え。
当然園子のことも「推理クイーン」であるという点に疑いすら持っていない筈です。
蘭自身、コナンが影ながら事件を解決していると疑った事はあっても、「眠りの小五郎が嘘だった」とは疑った事は無い。
もしもこの嘘を蘭が知ってしまったら…。
これまでの名声がコナン=新一によって作られた仮初のものだと知ったら…。
蘭としては面白いはずもありません。
そこにどんな事情があろうと、やっぱり傷つくでしょうし、新一に対して裏切られたという気持ちを強く抱いても不思議ではありません。
もしも告白の前にこの嘘が蘭にバレると、蘭からの告白は2人が付き合い始める為の単なる通過儀礼ではなくなるんじゃないでしょうか。
大きな山場を越えた先のドラマに発展するのかなと。
小五郎自身が過去幾度となく、コナンへの不信感を抱いているのも気になります。
ここから嘘がバレて大きな修羅場になるのかもしれませんし、若しかしたら既に気付いている小五郎が蘭を説得するという超展開に発展するかもですし。
なんにせよ、大きな大きなラブコメ的修羅場が待ち受けている気がしてなりません。
やはり黒幕は博士だった
嘘や秘密は何れ必ずバレます。
阿笠博士が「小五郎を名探偵にするんだ」とコナンを強く説得したことも何れ蘭にバレるでしょう。
全ての黒幕(笑)である博士が蘭にボコボコにされる結末もあるのかもしれませんねw