コナンを泣かせた物語の凄み。「劇場版 名探偵コナン 絶海の探偵」 感想!

この記事は

「劇場版 名探偵コナン 絶海の探偵」の感想記事です。
犯人名など核心に触れるネタバレは無いですが、それでも内容に関する言及はありますのでご注意下さい。

はじめに

去年の失敗を踏まえて、今年はきちんと駐車サービス券の発行される映画館で鑑賞して参りました。
(↑「11人目のストライカー」の感想に書いてますが、どうでも良いので無視して下さい。)

先にネタバレ防止策を。
金曜に出回っていたネタバレ画像が本当だと判明しましたね。

本編上映後、いつもの如く来年の映画の特報があって(第18弾は、タワーが舞台?)、その直後にルパン三世の声が!!!
僕は事前に知っていたので、平然と見れましたけれど、流石に場内は知らない方も居たのでしょう。
ざわつきが漏れ始め、『「ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE」 2013年12月公開』と出た瞬間におお〜っという声が聞こえてきました。

いや、でも、これはビックリですよね。
前回のTVスペシャルから時間も程良く空いてますし、前回の評判・話題性からも興行収入的には凄い数字を叩きだしそう。
正月映画ですしね。

いやはや。
12月まで頑張って生きなきゃw

以下、本編感想です。
クライマックスに関するネタバレがあります!!!!!!

書き忘れてたけれど、書く場所が見当たらなかったのでここに。
今回のゲストの柴咲コウさん。
紛うことなき「声優」でした。

シリーズ屈指の推理メイン映画

劇場版シリーズ屈指の推理メイン映画。
そう断言しちゃって問題無いかと思います。

今回残念ながらアクションは殆どありませんでした。
なので、毎年スカッとするアクションを求めて映画館に足を運んでいる方にとっては、今年はつまらないと映る可能性が高いんではないでしょうか。
全く無かった訳ではなんですけれどね。

静野監督がアクション好きというだけあり、非常に少ないながらも、しかし印象に残るアクションシーンがありました。
何といいますか。
ギュッと凝縮して、濃厚でいて、瞬間で魅せるとびっきりのアクションって感じでしょうかね。

蘭とスパイXの死闘。
コナンのキックアクション。

時間にすれば併せても5分強あった位だったと思うのですが、迫力は十分でした。
短時間過ぎて物足りなさを覚える方も当然居るかとは思うのですが、僕的には、こういう映画もたまにはアリかなと思ってしまいました。

さて。
メインはミステリですよ。
といっても、非常に地味なミステリです。
ここら辺脚本の櫻井武晴さんがドラマ畑の作家さんなので、展開もドラマ的。
公開中の「相棒 X DAY」(こちらも氏が脚本を担当)に似た雰囲気だったかなというのが第一印象です。

これまたシリーズで1・2を競う程、海上自衛隊の描写はリアリティがあったんじゃないかな?
いや、実際の所は分かりませんけれども、わざわざ全面協力しているので、この辺の描写は抜かりないはず。
演習時の台詞は、正直よく分かりませんでしたwww

何が言いたいのかといいますと、お話の作り自体も(いつもに比べ)かなり現実的。
確かに日本の国防の危機がきちんと描かれておりました。
アニメや漫画では、見た目からして「ああ、日本ピンチだな」と大変分かりやすい描写をしがちです。
要所が爆破されるとか。要人が暗殺されちゃったとか。

しかし、ドラマではもう少し現実的な危機を描きがちな印象です。
その辺が「相棒 X DAY」に似ていたかなと思ったのです。
ネタバレになる故詳しくは書きませんけれども、危機的状況に間違いないんだけれど水面下での出来事過ぎて地味に写っちゃうんですよね。
この辺は是非に見比べて頂きたいところかもしれません。

そんな訳で、今回トリックと呼べる非現実的要素は一切ありませんでした。
犯人の偽装工作はありましたけれど、あれをトリックとは…ちょっと言いたくないかな。
その分犯人特定に至るプロセスは、結構分かりやすいながらもしっかりとしていたと思います。
筋道立てて、提示された事実を紐解いていけば、自ずと犯人に辿り着けるようになっていました。

本格ミステリであることは間違いないですが、トリックも無く、地味に描かれている為、賛否分かれそうです。
個人的には、もう少し華を持たせてほしかったかなと感じました。
トリックを一つくらい盛り込んで‥ね。

現在放送中の「TAKE FIVE〜俺たちは愛を盗めるか〜」寄りのエンタメをもう少し持ってほしかったかな〜と。

でも。
でもですね。
こういうドラマ的な作りに徹底してくれたお陰で。
だからこそ、コナンの・新一の泣いた部分に感動的なまでのドラマ性が打ち出されていたと感じたのです。

コナンの涙

今回の特報でファンの間でやっぱり話題になりまくっていた「コナンの涙」。
僕も記事に書いてしまったほどの衝撃を受けたあの映像。

ここはネタバレ御免で書きますが、コナン今回本当に泣きました。

「絶対に泣かない」事を信条としていたコナンに遂に涙を流させたのです。
これは相当大事なシーンです。
相応の説得力が必要になってきます。

それがきちんとあったんですよ。
通常の「コナン」は、殺人事件を扱いつつも「殺人ラブコメ」なんて形容しちゃう位のある種の”軽さ”を持ち合わせております。
ミステリで暗くなりがちな作風なのに、正直明るいですよね。
それがウリでもある訳ですが、この映画は正直重たかったです。

ギャグが無かった訳では無いです。
ラブコメもきっちりとありました。というか、恋愛要素は滅茶苦茶色濃く出ていた。

でも、普段と違い重く感じたのは、櫻井さんのドラマ寄りの脚本の賜物だったのかもしれません。
この重さが、蘭遭難という一大事を殊更大きく見せていたと感じます。

蘭が命の危険に晒されたのは、今回が初めてという訳では無いのに、見ていて絶望感が今までの比じゃ無かったんですよね。
「死ぬわけはない」と分かってはいても、画面から滲み出る悲壮感が凄くて、物語に没頭させられてしまったというか。

電波時計と名刺という伏線は、シリーズを見続けている方には、直ぐにピンと来た部分ではないでしょうか。
これらがクライマックスに活きて来るんだなと直感が働き、実際そういう展開になるのですが…。
それでも見つからなかった時の絶望感ときたら。
コナンの悔しさが十二分に伝わってくる流れでしたね。

正確に書けば、あの涙はコナンの心象を映像化した物であり、実際には泣いてはいなかったと思います。
ただ、心の中では悔し涙を流しているというのが伝わってくる物語であって、やはり地味ながらも心にずしんと響くクライマックスでした。

正直、この辺は泣きそうになりましたw
(頑張って堪えましたが)

サブタイトルを研究する

今回のサブタイ「絶海の探偵(プライベート・アイ)」。
先ず、プライベート・アイについて触れます。

「コナン」ファンにはお馴染みと言っていいかなと思います。
作中の台詞にも度々登場しますし、原作ではサブタイトルにも使われていたり。
探偵の事だと直ぐに分かります。

で、この起源はというと、「ピンカートン探偵社」というアメリカに実在した私立探偵社に由来するそうです。

この探偵社が使っていたロゴマーク(上の画像)が
“THE EYE”=”探偵”
と呼ばれる切欠となり、
“Private Eye”=”私立探偵”
となったとかなんとか。

そんな訳で、全く以て誤用という訳では無くて、で、このPrivate Eye。
単語それぞれに分解して、意味を探していくとアメリカでは海兵隊(特に二等兵)の事をprivateと呼ぶそうです。
Eyeは「目」以外に「目的」とか「意図」とかって意味もあって、こう考えると「探偵」と「海兵の目的」のダブル・ミーニングになっているのかもしれません。
正確には海兵ではなくて、海上自衛隊員ですが。

もう一つ。
探偵とは、コナンとイージス艦(の高感度レーザー群)の事を指していたんですね。
これがまた2人(?)の探偵がそれぞれの失点を補う様に描かれていて面白かったです。

最初に虚を突かれたのはイージス艦でした。
漂流船に注視するあまり、内部で暗躍するスパイXの動向に気づけませんでした。
それをカバーしたのがコナンですね。
内側にいたもう一人の名探偵が、スパイXを見つけ、更にはその裏に隠された真実まで暴きだした。

でも、そんなコナンもミスを犯してしまいました。
必ず見つけ出すと約束した大事な人を探せずにいた。

そんなコナンを救って見せたのが、イージス艦。
コナン達の機転があればこそでしたが、そこは物なので言いっこなし。
イージス艦が、コナンに出来なかった蘭の捜索を完遂しました。

最後のシーン。
かつて何度もあったように「君は何者なの?」と聞かれたコナン。
普段通りなら「江戸川コナン。探偵さ」と決める筈の所、今回は「江戸川コナン。ただの小学生さ」(微妙に違うかもです)でした。
探偵であることを諦めた訳でも、自信を失った訳でも無いと思います。
ただここは大事な人を救ってくれたイージス艦という名探偵に敬意を表して「小学生」だと謙遜したのだと思いました。

まとめ

「コナン」映画らしい派手さは控えめながら、その分重厚な物語を堪能できる映画だったと思います。
故に、今まで以上に大人向けの内容と言ってもいいかもしれません。
勿論アニメ。フィクションです。
ガチな大人向けという訳では無いですけれど、そういう方面に寄った作りであったという印象を受けたのです。

濃厚なアクションと今までにない静かなのに盛り上がるクライマックスを堪能出来ただけで、僕にとっては「楽しく・面白い映画」でありました。

追記 櫻井さんのインタビューから振り返る

以下完全なるネタバレがあります。

櫻井さんのインタビューが面白い。非常に興味深い内容となっております。
OKStars インタビュー Vol.257 脚本家 櫻井武晴
一部抜粋させて頂きます。

インタビュアー:イージス艦を舞台にした国家レベルの危機をテーマにしましたが、この「イージス艦が舞台」というのは櫻井さんから出てきたものでしょうか。
それともそのような設定のもので、ということだったでしょうか。

櫻井氏:イージス艦を舞台にしたこのストーリーは私が提案したものですが、テーマは「国家レベルの危機」ではなく、「不安から逃げない心」です。
しかし、完成した映画を観た時、イージス艦が国防に与える影響や、コナンの「このままじゃ日本が危ない」(※予告編にもあります)など、私は書かなかった解釈や台詞が加えられており、なるほど「国家レベルの危機」が強調された映画になっていると思いました。

此処の部分は特に興味深い所でした。
今作、僕自身特に「スパイXに纏わる部分」はあっけないと思っておりました。
簡単に正体が判明する点もそうですし、Xが割とあっさりと捕まる事もそうですし。
「国家レベルの危機」にしても、情報が漏えい(民間のクラウドサービスに預けられてしまった事は大きい)してしまった件は確かに大事ではありますが、物語には深く関わって来ない点でしたので。
この映画に於いて、一種のスパイス。
核には成り得ていない部分に思えて、実際そういう描かれ方をしてる割りには、予告などで煽っているから不思議に感じていた点。

脚本段階では、映画を観た印象通りで良かったのですね。
強調したのは、監督達みたいで納得〜。
「分かりやすいウリ文句」が欲しくて、スタッフがこの「国家レベルの危機」を強調する事に決めたのかもしれませんね。

この「不安から逃げない心」というのも成程〜と得心行く部分ですね。
勇気君と真犯人の対比は考えていなかった為、非常に興味深い点です。
改めて2人を対比させて物語を思い起こしてみると、真犯人は、色々と理由を付けては逃げていますね。
その点、勇気君は逡巡しつつも、勇気を振り絞って逃げなかった。
どっちが正しい事なのかは、クライマックスのコナンが行動(実践)を以て示しているという構図。

このテーマで作品を振り返ると、また違った味わいを感じられますね。
これはもう一度見てみないとですね。
「不安から逃げない心」をテーマに再度鑑賞して、この物語に込められたメッセージを感じ取りたいものです。

最新情報をチェックしよう!