【考察】「劇場版 名探偵コナン」の興行収入が右肩上がりをし続ける4つの理由


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「劇場版 名探偵コナン」の記事です。

2011年以降上がり続ける興行収入

「劇場版 名探偵コナン」の興行収入が昨年まで5年連続で上がり続けているのはご存知でしょうか。

本数タイトル興行収入
第15作名探偵コナン 沈黙の15分31.5億円
第16作名探偵コナン 11人目のストライカー32.9億円
第17作名探偵コナン 絶海の探偵36.3億円
第18作名探偵コナン 異次元の狙撃手41.1億円
第19作名探偵コナン 業火の向日葵44.8億円
第20作名探偵コナン 純黒の悪夢63.3億円

15作から監督が静野監督に変わったこと。
「ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE」が42.6億円の大ヒットを記録したこと。
色々な理由が考えられますが、僕が思う理由を4点上げてみます。

(1)「卒業しない」

劇場版「異次元の狙撃手」の時に発表されたデータから。

客層は男女比36対64。
20代が31.2%、16~19歳が22.8%、40~59歳が16.2%、13~15歳が11.4%、6~12歳が9.6%。
10代後半から20代の女性が中心客層といえる(配給元の東宝発表)

注目すべきは、20代が一番多いというデータ。
続いてハイティーン層が入ってきます。
子供の頃から見てた世代が、そのまま大人になっても見続けているということなのでしょう。
性別では女性の方が多く、デートムービーとして定着しているというのも、データを見ると頷けます。
このデータは、毎作発表されていて、今作でも近似のデータが出ていましたが、見つけられなかったので割愛w

「コナン」というのは、「子供騙し」で作られていません。
「子供騙しで作っても、子供は騙せない。大人の視聴に耐え得るものを作って、初めて子供を騙せる」という考え方で作られているので、大人が見ても楽しめる作りになっています。
故に、他の子供向けアニメ映画と比べても、卒業していく割合が低いのではないでしょうか。

年を重ねるごとに卒業しないファンが足を運んでいる。
これが大きな要因でしょうね。

(2)タイトル後の説明

毎回、タイトルロゴが出た後、新一とコナンが物語の説明をしてくれます。
「俺は高校生探偵の工藤新一。背後から~」どうのこうの。
最近では博士の作ってくれたメカの説明は省かれるようになってますが、物語の導入「新一は何故コナンになったのか」が説明されます。

更には、作品毎に必要な情報も教えてくれます。
最新作「から紅の恋歌」では、平次のことと和葉のことがちゃんと説明があり、全く知らなくても入っていける素地を作ってくれるんです。

知ってる人からすれば、必要のない情報でも、初心者にとっては有り難い導入の説明シーン。
これが「劇場版コナン」を見る人のハードルをグッと低くしている一因になっているのでしょう。

(3)主役になりえるキャラクターが豊富

物語の主人公であるコナンは勿論、コナンに人気・実力(推理力)共に比肩するキャラクターが豊富にいるのも強みです。

先ずは西の高校生探偵・服部平次。
6作目と21作目でメインを張っている彼は、コナンの正体を知る数少ないキャラの1人。
人気も高く、彼自身ラブコメの主人公もミステリの探偵役も熟せる万能選手です。

近年人気が高まっているのが、赤井秀一と降谷零(安室透)。
共に鋭い観察力と明晰な頭脳を併せ持ち、かつ、イケメン。
前作がいきなり60億もの大台に乗せたのは、黒の組織の話だったことを除けば、ライバル関係にある2人が大活躍したのが大きいのでしょう。
2018年公開の第22弾では、降谷零(安室透)がメインになることが予告されています。

推理力に於いて完全にコナンの上を行く為、登場自体が少ないものの、忘れてはならないのが工藤優作。
第6作「ベイカー街の亡霊」ではメインを張りました。
ジョーカーなので、使いどころが難しいのでしょうね。
もう1度優作がメインで出てくる映画を見たいものです。

そして、天下の大泥棒・怪盗キッド。
コナンのライバルである彼は、時に対立し、時に協力しつつ、場を盛り上げてくれます。
元々「まじっく快斗」の主人公である為、一部のファンからは嫌われているのが偶に瑕です。

推理力という点では劣ってますが、メインを張れるという意味では、毛利小五郎、毛利蘭など人気キャラクターがごろごろいて、毎回メインキャラを変えられるのは大きなことです。
単純に毎回コナンをメインにするよりかは、飽きないんですよね。
美味しい所はコナンが持って行くけれど、それ以外の部分では他のキャラクターに活躍の場を与える事で、バラエティ豊かな物語構成を作れるのが魅力の1つです。

(4)青山先生完全監修

テーマ決めから、シナリオ・絵コンテの監修・修正、物語のアイディア出し、原画マンとしての参加。
総合プロデューサーと言っても差支えないレベルでの参加を1作目からしてる青山先生。

だから、キャラクターにブレが無いんです。
誰が脚本を書いてもぶれない。
18作目までの14本を古内一成さんが脚本を書かれていました。
一番「コナン」のことを理解されていた脚本家だったと思います。
その古内さんが2016年7月18日にお亡くなりになられました。

古内さんが病気療養に入って以降、櫻井武晴さん、大倉崇裕さんと参加されていますが、キャラクターにブレがありません。

例えば、「絶海の探偵」でコナンが泣いたような描写があり、ファンの間で物議を醸しました。
アニメ化する際青山先生がスタッフに出した要望の中で「コナンを泣かさない事」があったことが周知の事実だったからです。
ですが、青山先生が監修されているんです。
あれは泣いたのではないと結論付けるべきなのでしょう。
小さなことでブレのようなシーンもありますが(「ベイカー街」でコナンが諦めかけるなど)、基本的には原作のキャラクターがそのまんまという印象が強いです。

シナリオレベルで青山先生が監修なさっている賜物なのでしょう。
古内さんがお亡くなりになった以上、この先も色々な脚本家が担当される事が予想されます。
しかし、誰が書いても、コナンはコナンだし、蘭は蘭である。
その辺の信頼があります。

(シナリオを静野監督が現場レベルで変えて、キャラ崩壊っぽいこともあったとかなんとか。)

もう1つ青山先生が監修している事で大きな利点は「原作の先を描ける」こと。
アニメオリジナルになると、原作に無いシーンは作れないのが原則です。
しかし、青山先生自身がアイディア出しから監修までされているので、「原作の先」が描かれる事が往々にしてあります。

「14番目の標的」でのコナンと蘭のキスシーン(人工呼吸)。
「瞳の中の暗殺者」のコナンの蘭への告白。
「天国へのカウントダウン」での、成長した少年探偵団の姿。
「純黒の悪夢」で安室と松田陣平が友人関係だったこと。
そして、「異次元の狙撃手」の沖矢昴の正体を明かした事。
青山先生の発案だというこのネタバラシ。
声というアニメならではの演出によるネタバラシは非常に驚くものがありました。
アニメで先行してやってこその大ネタでした。
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なんだかんだ静野監督がフィットしたんでしょう

担当者などへのインタビューでは、プロデューサーが5年先を考えて、企画している事が大きいと触れていました。
これは静野監督も応えてます。
www.4gamer.net

「劇場版コナン」の場合、プロデューサーの間で5年~10年後までのプランが設計されているという。
そこから逆算して、「じゃあ、来年はこういうことをしよう」というラフ案が決まるというわけだ。
実際、静野監督が初めて劇場版コナンの監督を引き受けた際、石山桂一プロデューサーから「5年後に20周年を迎えたときに、こうしたい」と伝えられたという。

そして、そのラフ案に対し、原作者である青山剛昌先生がアイデア出しを行う。
静野監督曰く「青山先生は非常にアイデアが豊富で、また原作とのコラボなどについても次々とアイデアが出てくる」そうで、具体的なシナリオを固めていくにあたっても非常に助かっているという。

シナリオの方向性を出され、それに沿ったシナリオを固めていくのが監督の作業みたいです。

シナリオの方向性そのもの(「ミステリ色が強め」「ラブストーリーにする」など)は、プロデューサーから示されるので問題はない。
2017年4月公開予定の「名探偵コナン から紅の恋歌」では、シナリオを担当する大倉崇裕氏が「とても素晴らしい脚本を作ってくれた」という。

しかしながら、「から紅の恋歌」の場合、書き上がったシナリオが量的に膨大だった(過去最大の長さだったそうだ)。
そのため、いかにしてこの物語を映画の尺に収めるのか、という問題が発生する。
これに加えて、アニメだから得意な表現もあれば、アニメでは難しい表現もあるので、シナリオの良さを最大限に活かすにあたっての取捨選択はとても困難だったという。

「から紅の恋歌」の場合、青山先生がその取捨選択をされたと別の記事では書かれていました。

この作業に於いて、「から紅の恋歌」は成功と見て良いと思うのです。
ミステリとしてもラブコメとしてもアクションも見応えのある素晴らしすぎる映画に仕上がっていましたので。
ただ過去には、シナリオと実際の映画で大きく改変されたこともあるようです。
「業火の向日葵」がそれですね。

シナリオでは、殺人事件がメインにあり、トリックも練られたものが用意されていたそうですが、実際の映画ではバッサリ。
取って付けた様な殺人劇が1つあっただけでした。

これも、「長すぎるシナリオをカットする工程」で、「何を見せる映画なのか」を念頭に置いた時に静野監督は「キッドの物語」を選択されたのでしょう。
(青山先生が入院中の為、あまり関われなかったという噂もありますが、真実は不明です。)
「まじっく快斗」の物語として見れば、僕は面白い映画であったと今でも思っています。
けれど、これが脚本を担当された櫻井さん自ら裏話として公開されたことも手伝って、ファンの評価は芳しくありません。

アクションばかり派手な監督というレッテル貼りもあり、評価自体は様々ですが、それでも、近年の興行収入増加は静野監督の功績と見るのが一番自然な気がします。

終わりに

さて、「から紅の恋歌」。
前作を上回る初動記録を叩き出し、5月1日時点で昨年比100.8%という高水位を続けています。
(諏訪プロデューサーの日記より)

このまま行けば6年連続の記録更新も夢ではなくなってきました。

5月6日追記
5月6日時点で推測50億超えですね。
このGWで去年対比でかなり上回れたので、よっぽどのことがない限り、記録更新確定ですかね。

正直、今年は下がるだろうと思っておりました。
昨年が63.3億円ですからね。
どう頑張っても、これは超えないだろうと。

だから、初動記録が前作を越えた時は本当に驚きました。
何故という気持ちと、凄いという心からの感嘆とが同時に出ました。

純粋に中身を見れば納得なんですけれどね。
例年にない、シリーズ随一と言いたいくらいの面白さでしたから。
でも、初動って「中身」の評価が下る前に出ちゃうからさ。

前作の勢いをそのまんま引き継いだのでしょうね。

ここまで来たら前作を越えて、夢の70億まで突き進んでくれませんかね。
僕は既に3回行きましたが、3回目でも心から楽しめたので、行って欲しいな。

そそ。
映画とは関係ないですが、今月の「サンデーS」から面白そうな漫画が連載されますね。

かんばまゆこの新連載「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」が、5月25日発売のサンデーS7月号(小学館)で開幕する。

真犯人さんが主人公ってだけで笑えるんですがwww
目の付け所がヤバいw

これは、注目していきたいスピンオフ漫画です。

「から紅」興行推移(随時更新)

タイトル1週2週3週4週5週6週7週8週9週10週最終
から紅の恋歌12.927.637.953.958.261.363.565.266.367.0 
純黒の悪夢12.125.337.050.654.356.958.960.261.061.663.3
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