この記事は
アニメの演出に関する考察?記事です。
「超電磁砲」と「極上生徒会」の重大なネタバレがありますのでご注意下さいませ。
面白い動画からの発見
先日、↓のような動画を拝見しました。
この動画を紹介されていた記事はこちら⇒「アニメOPでよくある構図・演出をまとめた動画」と、それに対する海外の反応(「あにとら」さん)
(偶然にも僕が相互フォローして頂いているブロガーさんの旧ブログだという事に今気づいたw)
この記事によりますと、どうやら海外のアニメファンが作成した動画だそうですね。
で、動画見ていて「面白いなぁ」と。
こうやって編集されると、確かに同じようなカットがいっぱいあるんだと納得しますね。
普段こういう風に見ていないので、なんか新鮮でした。
いや、アニメの演出に気を配りながらアニメを楽しんでいる方にとっては、この動画を見るまでも無い事だと思うのですが、僕はそういう観点で普段視聴していませんでしたので非常に面白く感じたのです。
んで、この記事中の動画作成者のコメントを翻訳した部分に以下のような事が書かれていました。
これ作って分かったんだけど、キャラが走る時はいつも「左に向かって」なんだな、面白い。
言われてみれば確かに。
全部が全部そうではもちろんないですし、この動画で集めたアニメがたまたま「左に向かって走る」ものばかり集めていた可能性も拭えないものの…。
偶然とは思えない。
という事で、気になったので調べてみました。
この記事は、アニメ演出をな〜んも知らないド素人が演出について語るという無謀な事をしたものです。
過度な期待はしないでくださいませw
答えはあっさりと
最初は右利きだから…とか考えていました。
日本人は右利き多いですからね。
人の横顔を一度でも描いたことがある人は納得してくれると思うのですが、右利きの人間にとって右向きの顔って凄く描き辛いんですよね。
左向きに比べると、途轍もなく難しい。
だからかな…とかプロを舐めた考えしか浮かばなかった自分は何て愚かなのでしょうか。
ちょっとググるだけであっさり答えに辿り着きました。
アニメーション制作会社GAINAXの公式サイトです。
「新世紀エヴァンゲリオン」とか作られていた会社ですね。有名です。
このサイトのコンテンツとして「GAINAXアニメ講義」というものがあります。
その第1回としてアニメ監督・アニメーターである鶴巻和哉さんの記事がありました。
GAINAXアニメ講義第1回 「上手・下手、イマジナリーライン」|講師:鶴巻和哉
鶴巻和哉さんに関しては、wikipediaを参照してください。
現株式会社カラー取締役として、エヴァの新劇場版シリーズで活躍されているようですね。
この記事では、タイトルにもあるように「上手・下手、イマジナリーライン」について書かれています。
「イマジナリーライン」なるものに関しては、僕が触れて良いような領域で無いと判断したので、見なかった事にしますw
以下この記事を進めていくのに必要な部分だけを抜粋させて頂きます。
もともとは、演劇やステージのルールだったものだと思います。
観客席から見て、右側が上手。左側が下手。
演じる人が入ってくるのは上手側から、退場するときは下手側へ。
映像も一緒で、画面の右側が上手、左側が下手。
誰かがインしてくるときは上手からになります。アウトしていくときは下手へ。
上手から入ってくるという事は、キャラクターは左向きで芝居をするという事です。
キャラが能動的に動いて何かをしているときは、たいてい上手から下手に向かって行動しています。
(中略)
アクションの主体が誰なのか?
その主体のアクションは、上手から下手に向かうのが基本と考えていいと思います。
また、このルールに関しては、
最近では、こんなことを意識していない演劇もたくさんあるでしょうし、なにより、テレビや映画なのですから、このルールに縛られる必要はないのかもしれません。
とも書かれています。
必ずしもこのルールが適用されている訳では無いという事ですね。
とはいえ…今回はこのルールが適用されているという前提で、記事を続けていきます。
鶴巻さんの講義を読んで、正直ワクワクしました。
今まで僕の中に無かった考えでしたし、こういう観点でアニメを見ると、それはそれは楽しいものなのだろうと。
ブロガーさんの中には、演出に焦点を絞って視聴されている方もいますが、彼らの気持ちが少しだけ理解出来たような気がしました。
と、まぁ、最初に挙げた疑問はこれで解消されたわけです。
動画で取り上げられた作品はどれもこれもこの「上手・下手」のルールに則っていたからなのでしょうね。
これで記事を終わらせてしまうと、あまりにも中身が無いですので、もう一歩僕なりに踏み込んでみます。
メインキャラを窓際に配置する理由
以前僕はこのような記事を書きました。⇒メインキャラを窓際に配置する理由を考えてみた
正直見るも無残な記事なのですが、有益な事もあったのですね。
童半さん(元アニメ感想ブロガーさんです)から頂戴したコメントです。
これもコメントそのものを抜粋させて頂きます。
画作りの決まりごととして、『メインが上手(右側)で待ち、サブが下手(左側)からやってくる』という古くからの伝統が演出現場にあるそうです。
(現在では演出も多用になってきたので、必ずしもではないらしいですが)全方位が視点になるTVプログラムでは例外は起こり易いですが、記事中で触れられている教室の設計の特性から、窓際に主人公を配置することで、正面(教卓側)からのアングルで撮ると、(主人公の上手が通路ではない為)
『必ず脇役(or敵役)が、下手から主人公に話し掛ける』
という構図を自然に造りやすいという理由もあるのだそうです。
まさしく鶴巻さん言う所の「上手・下手」のルールなんですよね。
改めて童半さんの知識の豊富さには驚かされました。
このコメントで「記事中で触れられている教室の設計の特性」とありますが、これは日本の学校の構造上の特徴に関してですね。
日本人には右利きが多いとは先程書きましたし、これはまぁ常識だと思いますが、実はこれが深く関わっているらしく。
僕の記事の該当部分だけを引っ張ってきます。
昔っから不思議に思っていたのが、教室の向きに関してです。
自分の高校時代までを考えても、アニメの教室を思い出しても、全部↓こんな感じ。
常に左側に窓があって、右側に廊下がある。
何か理由があるのではと思って調べてみると、やはり理由がありました。
以下wikipediaより抜粋。※※※※※※ここから引用※※※※※※
一部の例外を除き、東側・南側の日光の入る窓は、原則として教室の前方(教壇のある側)に向かって左側になるように、教室の前後(教壇や黒板の配置)が決定される。
例えば建物が南に面している場合、教室の向き(教壇のある側)は西向きで設計される。
これは、右側に窓を配して右側から日光が差し込むと、大半を占める右利きの利用者が机上で書き物をする際に自分の右手の影で帳面が暗くなってしまうためである。
※※※※※※ここまで引用※※※※※※細かい事ではありますが、色々と配慮されているようですね。
という事ですね。
コメントでも触れられているように、教室を映す場合、大抵は教師目線…教室の前方から後方を映す向きで描かれる事が多いと思います。
そうなると窓側が上手となり、主人公を上手に配置する為に必然的に主人公の座席も窓際になる…という寸法なのでしょうね。
「とある科学の超電磁砲」OPに関して。
以前「あの夏で待ってる」の記事を書くために、監督である長井龍雪さん(いつ見ても名前がカッチョイイw)の演出手法について調べた事があります。
その時偶然見つけたのがこの記事です。
とある科学の超電磁砲 OPの演出の解説 一貫性のある正負の方向(「karimikarimi」さん)
前期OPのキャラクターの動きについて解説されている記事です。
右から左への移動…つまりは上手から下手への移動は、全て“善”“正”のイメージとして扱われていて、反対の動きは“悪”“負”のイメージとして扱われている…という内容です。
ざっくり要約させて頂きますと。
キャプチャを使って、丁寧に解説されていてとても分かりやすいです。
当時は、この記事を拝読しても特に感想とか持てなかったのですが、今となっては「凄いな〜」と。
よくこういう事に気付けるものだなと。
当時の僕が「上手と下手」を意識して視聴していても気付けなかったと思うw
さて。
この記事内にて、美琴側のキャラである佐天と初春が左から右に向かって走っているカットが一か所だけあることが指摘されており、これは
佐天さんの今後の行方が暗示されていると見るほうがよさそうだと思います。
と結んでありました。
この記事が公開されたのが(日付を見る限り恐らく)TOKYO MXの第8話放送翌日(当時MXが最速で放送されていた)。
佐天さんがレベルアッパーを使用してしまうのが第10話なので、原作コミックスを読んでなければ、この記事時点では「予測」しか出来なかった事ですが、今となっては既知の出来事で…。
実際に佐天は、「悪」と見做されていた木山春生の作ったレベルアッパーを使ってしまい、”悪事”に”加担”してしまいます。
karimikarimiさんのこの予測は実に正しく、実際にそういう意図の元OPが作られていたのではという確信が強まります。
「極上生徒会」に於ける「上手・下手」
と、ここまでは他人のふんどしだけで記事を書いてきましたw
なので、本論はここから…というかここだけというか(汗
コナミが作ったオリジナルアニメーション「極上生徒会」。
この作品から、「上手と下手」を意識して考察してみます。
とはいえ、結構なネタバレが必要なので、未視聴の方には先ずは作品を見て頂きたいところです。
こんなクソ記事のせいで折角の楽しみを失っちゃ悲しいですからね。
まぁ、ネタバレ気にしないという方や、見た事のある方はこの先に進んでください。
先ずは、登場人物の紹介から。
銀河久遠(ぎんが・くおん)。第三期生(高一)。
極大権限保有最上級生徒会(以下、極上生徒会と略す)副会長にて、諜報機関「隠密」のトップ。
※「隠密」とは極上生徒会内部の組織です。
矩継琴葉(くつぎ・ことは)。第四期生(中三)
極上生徒会隠密部所属。普段はメンバーの前に姿を現さず、久遠や聖奈(隠密部リーダー)の命で諜報活動をしている。
こんなところかな。
この2名だけ把握して頂ければ問題無いです。
琴葉の説明に出て来た聖奈さんは、隠密No.2であり、かつ(ある意味)作中最強キャラですw
ですが本稿では無関係なので、取り敢えず忘れて下さい。
今回注目するのが
・第15話 私が此処にいる理由
・第16話 あなたに此処にいて欲しい
です。
久遠と琴葉メインのエピソードなのですが、この回で上手・下手を意識した演出があったのではと思いました。
必要な事なので、この2話のストーリーで大事な部分をざっと書きますと…。
久遠はある団体から密命を受けて、極上生徒会に潜入していたスパイでした。
勿論その団体の方が「悪の組織」で、彼女は両親を半ば人質に取られており、無理矢理スパイをやらされていて…。
この事実を突き止めてしまった琴葉は、「裏切り者」としてかつての上司である久遠を糾弾。追いつめてしまう。
その時のキャプチャ(写メだけどw)が↓ですね。
このシーンでは、極上生徒会の方がメインなので、生徒会構成員である琴葉が上手(右側)に。
“裏切り者”である久遠が下手(左側)に描かれています。
このシーンの後、久遠は逃げ出します。
しかし、全てを知っていた会長や聖奈さんの活躍で、久遠は「スパイ」として極上生徒会に戻ってくる。
ここまでが第15話の内容です。
この時点で琴葉は久遠を「副会長兼隠密トップ」とは認めていません。
琴葉は琴葉の事情があって、生徒会に敵対する組織の一員である久遠を簡単には良しと出来ないからです。
この辺の詳しい事情は、本編を見て下さいませ。
ただ、重要なのは琴葉の中では、この時点に於いては久遠は「裏切り者」のままであるという一点。
第16話で2人がすれ違うカットがありますが、琴葉は常に左向きであり、久遠は右向きで描かれています。
この直後久遠は琴葉の方を向くのですが、琴葉はそのまま。
琴葉の許せない心境を描いているように解釈しました。
この後物語は進み、色々あって琴葉は久遠を上司と改めて認めることになります。
16話クライマックス。大浴場でのシーン。
ここで初めて久遠が上手側に、琴葉が下手側に配置されています。
琴葉って作品の初期からちょくちょく出てはいたのですが、正式に登場したのが実は15話からなんですよね。
だから、2人が一緒に描かれているシーンというのも15話が最初。
その15話から常に上手・琴葉、下手・久遠という風に描かれていて、16話のラストで漸く立場が逆になりました。
慣用句?として、「最も信用し、頼みにしている部下」の事を「右腕」と称するように、上司・部下の正しい配置というと、上のカットの状態だと思います。
(あくまでも印象のお話です)
そんな状態を初めて描くことで、琴葉が久遠を認めたという事が台詞でなく絵で示されている。
「上手・下手」のルールをもとに、そう僕は解釈してみました。
勿論この解釈が正しいのかどうかは分かりませんが。
まとめ
3つほど「上手・下手」に関する(であろう)事柄を取り上げてみました。
演出の事を何も知らなくても、この事を知っているだけで、アニメって今までとは違った面白さを感じれるんだなという事が分かったのは大きいですね。
個人的には。
今後こういう観点からも、アニメを見られたら良いなという事で。
最後までありがとうございました。
余談:
はてなダイアリーってリンク張るだけで相手の記事にTBが飛ぶの何とかならないんでしょうか(汗
大した記事で無いから、リンク先のブロガーさんに僕の記事の存在を知らせるのって恥ずかしくてたまらないのですがw
設定でどうにか出来るんかな?出来て欲しいな…。(←解決済みです 5/30追記)