この記事は
「FAIRY TAIL」の考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
はじめに
やっぱり面白い「FT」。
この巻には、前代未聞の2号連続3話掲載をやっていた時のお話も収録されているんですね。
40巻の3分の2をたったの2週で埋めたのですから、本当に真島先生は化物ですね。
相当前から準備されていたと、何かのインタビューで読みましたけれど、それにしても休載無し(多分)で通常連載を熟しつつなので、筆の速さが尋常じゃ無い事が読み取れます。
本作に対するモチベーションの高さの証左とも言えそうですし、故に40巻も続いていても熱が冷めずに、ワクワクドキドキする熱い物語を提供して下さっているのでしょうね。
- 作者: 真島ヒロ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/10/17
- メディア: コミック
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そんな40巻に考察し甲斐のある1話が収録されていました。
第337話「黄金の草原」。
これについて、あとがきで真島先生はこう触れておられます。
一部省略して引用します。
337話「黄金の草原」。
(この話は意図して)わかりづらいのです。
時が正常になり、未来ルーシィがたどりついた場所はどこなのか?
答えはあるんだけど、あえて言わずにおこうと思います。
皆さんが感じたままが正解でいいのです。
という事で、あくまでも一見解としまして、僕が感じたままを書いてみます。
分かる範囲で分析してみる
第339話「星霜の雫」でジェラールがこう言ってます。
箇条書きで纏めます。
- ケガは”時”でも治せない
- ローグやドラゴンは元の時代に戻った
- この時代で命を落としたルーシィはわからん
また、記憶、壊れた町も同様に「無かった事」になっておらず、ウルティアの魔法による1分間も
「元々時を歪めてしまっている人たち(未来ローグやドラゴン)には効果が無かった」
と巻末コーナーでミラが解説していました。
この事と1、3番を合わせると、時の改竄はちょっと複雑になります。
2つの改竄が行われたので、分けて考えてみます。
先ずはラストエイジスによってウルティアが生み出した1分間。
この魔法は、現代の時間を1分戻すというものでした。
影響範囲は、先程も示した事からも「本来、この時代に存在する全てのモノ」となります。
巻き戻った1分間に起こった出来事は、全て無かった事となり、現代を生きる全ての人にその間の記憶が残滓として残る訳です。
自分でも何を書いているのかちんぷんかんぷんなのですけれどw
つまりは、えと。
キズや町の損傷は無かった事になるんですよね。記憶だけは残ったままで。
ただし、未来ローグやドラゴンは、その記憶すら持ちえないというだけのお話。
(未来ローグたちが1分間に受けたキズについては無かった事になっている筈)
2つ目は、エクリプスによるもの。
ここでは、エクリプスもまた「魔法」として解釈します。
ウルティアの時と違うのは、時間を巻き戻した訳では無いという事ですね。
だから、全ての人の記憶も残れば、キズもそのままだし、町も壊れたまま。
起こってしまった出来事は、そのまま事実として残る。
唯一戻るのは、”エクリプスによって歪められた時”だけです。
何のことかと言えば、未来人やドラゴンですね。
彼らはエクリプスによって時を超越し、現代に現れた。
エクリプスを術者とした召喚術みたいなものなのかなと。
だから、エクリプスという術者が破られると、魔法が解ける。
現代に召喚されている状態の彼らは元の時代に強制的に戻された。
更に詳しく考えてみます。
元の時代に戻ったとされる未来ローグやドラゴンは、本当に彼らが住んでいた元の時代に戻れたのでしょうか?
上記2を疑ってみます。
これはあくまでもジェラールの推測なので、事実では無いんですよね。
確かにドラゴンは、元の時代に帰ったのでしょう。
過去に於いてアクノロギアに殺され、現代で幽霊としてウェンディ達が遭遇したジルコニスは自身の事を「翡翠の竜」と呼称していました。
337話でヒスイ姫が命名(とはちょっと違いますが)し、本人がいたく気に入った呼称をそのまま用いていた事実を考慮すると、ジルコニスが現代に来たという事実は無かった事になってなかったと言えます。
この事から、竜達が元の時代に戻っていったというのは、事実と思われるんです。
ドラゴンが棲む時代とナツ達が居る時代は繋がっている。
エクリプスが有ろうと無かろうと、この事実は動かしがたい事実です。
しかし、未来ローグはどうなのか?
未来ローグは、「アクノロギアに蹂躙されたX798年の未来から、エクリプスを使って現在(X791年)に来た」事になってます。
未来ルーシィも同じく、エクリプスを使い、ドラゴン達に滅ぼされかけた「X791年7月7日の未来」から来た訳です。
この2人は、共に同じ時間軸上から来たことになります。
シュタゲ風に言うなれば、「同一世界線から来た」って感じです。
エクリプスが存在し、2度もドラゴンに侵略された世界。
それが2人が生きた未来です。
しかし、そんな未来は”改竄”されました。
全ての元凶と思しきエクリプスの破壊によって。
未来からエクリプスを使って来れなくなってしまったので、未来ローグの居た時代と現在のナツ達の時代が断絶された訳ですね。
ここで、SFのお話になります。
未来ローグが元々いた世界は、無くなってしまったのでしょうか?
別の世界線として存在していると考えるのが「STEINS;GATE」的未来感。
存在自体が抹消したと考えるのもまた別の未来感。
こんな事証明しようも無い事なので、多分100年経っても200年経っても、この手の話題はSFとして残り続けるんでしょうね。
「FT」ではどっちを採用しているのかは分かりません。
これ以外の考えを採用しているのかもしれないですし、こればっかりは考えようもないことです。
1つ確かな事は、本来居た未来に未来ローグが帰れた保証はどこにも無いという事ですね。
彼が消えた意味とドラゴンが消えた意味はイコールとは限らないので。
ドラゴンは、元の時代に戻されるという意味で現在から消えました。
魔法の効力が失効した為の措置。
未来ローグは、2つの意味のどちらなのかが分からないんです。
意味Aは、ドラゴン同様、魔法の効力切れで本来の時代に戻ったケース。
意味Bは、未来ローグが元々居た未来が無くなったので、未来ローグの存在自体が消えたというケース。
どっちを採用しているのか決め手がありませんし、だからこそ解釈を読み手に委ねられている点ですね。
この未来ローグと同じ事は未来ルーシィにも言えます。
個人的な見解
実際の描写はどうだったか、振り返ってみます。
ナツがエクリプスを壊した事で、
「計算では未来において扉が使えなくなります」
「つまりローグはこの時代に来れない」
とユキノとリリーが解説しています。
実際、ドラゴン、未来ローグと過去や未来からエクリプスを使って現代に現れた者は光に包まれて、次々と消失していきました。
ドラゴンが、現代に繋がる過去に戻った事は先程書いたように納得できます。
しかし、未来ローグがどこに消えたのかは定かではありません。
未来ルーシィも同様で、未来ルーシィが元々居た”未来”と現代との繋がりが絶たれたわけで、彼女がどこに”戻った”のかは分からないんです。
こればかりは確定要素が何も無い。
ここまでが上に書いてきたまとめですね。
さて、僕の結論はというと、先ず、未来ルーシィの死も取り消されたという事ですね。
未来から来れなくなったのですから、”未来から来たという事実そのもの”が取り消されました。
ただし、現代のナツ達には、未来ルーシィの記憶が残っているので、完全に無かった事になった訳ではありませんが。
もう1つ、未来ルーシィの元々の世界でのドラゴンの強襲も同様に無くなっている筈です。
現代に於いてエクリプスが壊されたのですから。
故に未来ルーシィは、「ドラゴンが強襲してこなかった場合の彼女が元から生きていた時代」に戻ったのでしょうね。
先程の考えに照らせば意味Bに近くなります。
ドラゴンによって右腕を失った未来ルーシィは、ドラゴンが来なくなった事で存在出来なくなったのですから。
ただし、存在そのものが消えたというより、改変されたという感じでしょうか。
魂は同じで、体験してきた歴史が異なる。
未来ローグも、ドラゴンによって出来た身体的な傷が”無かった状態”で、彼の元居た時代に戻ったのかもしれません。
わざわざ無くなったはずの右腕が元に戻っている事を強調するようなカットが挿入されているんです。
死後の世界で体が再生されたと見るよりかは、生きている状態で右腕の消失という事実が無くなったと考えてみたいし、考えるべきだと思うんです。
ドラゴン襲来で発生した右腕の消失。
現代へのタイムワープ。
現代での死。
これらの出来事が”無かった”場合の未来。
彼女はそこに戻って行ったと言うのが僕の結論。
ただ、もう1つ考えがあって、次はそれについて、もう少しだけ書かせてもらいます。
何故「黄金の草原」なのか?
ところで気になったのが、このサブタイトル。
未来ルーシィが降り立ったのは、何故に黄金の草原なのでしょうね。
これ一種のオマージュじゃないでしょうか。
真島先生でググると、影響を受けた作家として宮崎駿監督を挙げられている事が分かります。
ソース元が英文なので、信憑性は疑わしいのですけれど、これがマジならば、間違いなく「風の谷のナウシカ」のオマージュなんだろうなと。
映画「ナウシカ」のクライマックス。
王蟲(「おうむ」で変換したら、普通に変換出来て驚いた。辞書登録もしてないですよ。最近のIME凄いw)達が幾千もの黄金色の触手で以て、傷ついたナウシカを癒すシーン。
ここと未来ルーシィがナツ達と再会したシーンが重なるんです。
その者蒼き衣を纏いて金色の野に降りたつべし。
失われし大地との絆を結び、ついに人々を清浄の地に導かん
「ナウシカ」の作中で出て来る予言ですが、これはナウシカの事を示しています。
上記ラストシーンで、王蟲の体液によって赤から青に服の色が変わります。
未来ルーシィも同じなんですよね。
彼女が死んでしまった時に纏っていた服が何色なのかは、コミックス派の自分には分からず。
若しかしたら既刊を紐解けば、カラーイラストがあるかもですが…。
ただ、彼女が光に包まれて、一瞬裸になった後に着ていた服の色は分かります。
現代のルーシィも着ている服で、基本色は青です。
アニメ絵なのが申し訳ないですが、真ん中に大きく描かれたルーシィと同じ格好。
ここもやはり符合する。
とすれば、あの風景も同じくオマージュなのかもですね。
流石に「実は未来ルーシィの足元は草原では無くて王蟲の触手でした」という訳では無いでしょうけれども。
ドラゴンによって失った”失われし大地”=”仲間”との絆を結び、”人々”=”フェアリーテイル”ギルドのメンバーを”清浄の地”=”平和な世界”に導いた”救世主”=”未来ルーシィ”
当然「ナウシカ」での解釈通りでは無いですけれど、未来ルーシィが居なければエクリプスの破壊は無かったかもしれません。
偶然にナツが戦いのどさくさで壊したのですが、未来ルーシィの手記があったから、エクリプスの破壊による解決案は採用されていた。
未来ルーシィは、彼女の未来を救った救世主とも言えそうですし、それを「ナウシカ」の名シーンに絡めて見せていたのかもしれませんね。
未来ルーシィが帰った場所が何処かは問題では無く、戻った場所が「何故黄金の草原なのか」が重要であり、「黄金の草原にした理由そのもの」が真島先生がこの回に込めたメッセージだったのかもしれないなと思いました。
終わりに
40巻を発売日に買って、それからすぐに着手して早半年。
書き上げるまでに時間が掛かってしまいましたw
やっぱり僕はSF…中でもタイムワープ物は苦手です。
考えれば考えるほど、頭がこんがらがってくるので。
なので、SF的な答えよりかは、「ナウシカ」のオマージュとしての方が正解であって欲しいなという心情ですw
ま、本当の答えはいつかどこかで真島先生が語ってくれるかもしれませんので、それを楽しみに待ちたいです。