はじめに
「逆転裁判5」をようやっとクリア。
色々な事があり、ちょっと別記事でも愚痴ってみたりもしましたw
(「ソーシャルゲームの強みを考えると「ポケモン」の凄さが良く分かる」の冒頭部分で)
いやはや時間が掛かりましたが、ちょっとだけ感想を書いてみます。
尚、ネタバレありまくりなので、プレイ中の方は回れ右。
また、攻略情報を書いている訳でもありませんので、そういうのを求めている方もこの先は読まんで下さい。
「4」を考えて「5」の良さを浮き彫りにしたい
この記事のメインは「4」からの繋がりでしょうか。
ここを考える事で、「5」の感想にしたいと思います。
「4」は何と言いますか、「う〜〜ん」と首を捻りたくなるようなゲームでした。
ナルホド君のポジション。
レギュラーキャラの不在。
敵になってない検事。
それらに目が行きすぎてしまって、なんか影が薄くなってしまった主人公のオドロキ君。
何が悪いとかでは無くて、これらの食い合わせが少しだけ悪かった。
このシリーズ、「3」で一先ずの決着が着いて、そこで描かれた一種のテーマが「裁判の在り方を問う事」だったと踏んでおります。
検事が被告を徹底的に疑い、弁護士が依頼人である被告を信じ抜く。
お互いがそれぞれの立場から事件を巡る推論を立ててぶつからせ、やがてその果てに「真実」を浮かび上がらせる。
どちらが勝っただの負けただのという話ではなくて、これぞ裁判の本質。
「5」でも謳われていたこのゲームが言いたい事の一つなのかなと。
これを「1」から少しずつ段階を重ねて「3」で答えを出していた。
でも、「4」ではこの根底が覆ってしまった状態でのスタートでした。
ゼロどころかマイナスからのスタートであって、「法の暗黒時代」が舞台。
これは、一度ゴールに辿り着いてしまった手前、テーマ的にも初期化しないと話が作れないという事情もあったんだと思います。
主人公も「新人」の初心者に変えることが必然的な形となり、しかし、それ故に、正直新人弁護士では荷が勝ちすぎる状況ともなっちゃったのかなと。
いくら「逆転」がウリの本作であっても、作り出された偽の証拠をバンバン出してくるような”時代に合った”検事が相手では、勝たせるのも中々に難しい面があったんではないでしょうか。
ゲームでも最低限の「説得力」は必要でしょうし、新人弁護士にその説得力を持たせるのは難儀な事に思えます。
ガリューが最初から「3」で描いていた「理想の検事」だったのもその為なのかもしれないと思ったんです。
ゲームの醍醐味である「逆転」。
これを演出する為に不可欠な手強い検事。
主人公の推理を悉く否定してくる検事がいてこその「逆転」。
でも、以上のような理由からその手の検事を出せなくなってしまった。
結果、手強い事には変わりないけれど、何が何でも被告を有罪にするんだという気概を持たないガリュー検事が生まれ、ゲームとしての面白味が少々薄れてしまったのかなと。
「3」までの検事は皆、手強い故に「勝利至上主義」的な面が出まくってましたしね。
(「3」は…ちょい違うけれど)
「裁判の在り方を問う」というテーマがあったのならば、この着眼点からシリーズ全体を見返すと、「4」で僕が気になった点は全て納得出来るんです。
一度完結したシリーズを続けるには、リセットが必要である事。
リセットの対象は、テーマの一つである「裁判の在り方」にしないといけない事。
当然として主人公も”初心者”に戻さないといけなくて、主人公の交代が必然となり…。
上から「ナルホド君も出せ」と勅命が下った末に、「ナルホド君が主人公では無い理由」が必要ともなって、「法の暗黒時代」が設定されて。*1
そうしたら、新人弁護士に説得力を持たせて勝たすには、ある意味彼をサポートする検事が必要になって…。
あくまで僕の勝手の憶測ですけれど、このような感じで出来上がっていったのだとすれば納得しちゃう。
だから、”1本のゲームとしての”「4」の評価が低くなってしまったのは致し方なかったのかなと思っています。
あくまでも「低い評価」というのは、僕個人の評価ですけれども。
さて、ここから繋がる「5」ですね。
「4」では、マイナスから始まった物語は、しかして、「4」ラストでゼロ地点に戻されていました。
後は登って行くだけですね。
「5」は「3」の立ち位置に近い感じ。
再び作品のテーマを描き出す事を目標に物語が作られていたように感じました。
故に物語としては前作より面白く感じました。
オドロキ君がしっかりと存在感を増していたのも個人的に良かった点ですし、ナルホド君の復活も最高でした。
二転三転する「逆転」がきちんとシナリオの中に組み込まれていて、犯人の理論を論破した時の爽快感も健在。
キャラクター達のコミカルな動きも面白おかしくて、実に良かったです。
1話が終わった段階では
「4」を黒歴史のままにしなかったのは凄いな
と思っていたのですが、今ではこれは間違いだったと思っています。
「4」は黒歴史だったのではなく、あれがあったから、この「5」は出来上ったと。
テーマ的に「4」が無かったら、単純な「3」の焼き直しになっていたでしょうから。
一度テーマをリセットした「4」あってこその、「5」。
当然そう見えるように作られたのかもしれませんけれど、そう感じさせてくれるには十分な説得力と面白さを兼ねていた1本でありました。
タクシューが居なかった点
いや、でも、前情報を仕入れてなかったので、スタッフクレジットで知ったのですが…。
今作はタクシューが絡んでないんですね。
なんか色々と納得してしまいました。
伏線の張り方、ヒントの出し方が「逆転検事」に近いものがありましたし、何より難易度が易しめだった気がします。
もう少し難し目で有って欲しかったかな…。
「逆転検事」は、そこんとこが物足りなかったので。
あと決定的に足りなかったのは遊びの要素。
これは容量的な問題なのかもしれませんが、探偵パートで調査出来る箇所が圧倒的に少なかったです。
僕はこのシリーズ、キャラ同士の会話を読む事が大好きなんですよ。
台詞の運び方、言葉の選び方、ボケとツッコミのセンス。
ゲームを進行する上では本当に微塵も関係ない個所を調べた時の会話。
ツッコム必要が無いと分かっていながらも、敢えてツッコんで、どんな漫談が聴けるのかとワクワクする。
そういう「無駄」な部分が凄い好きで、ここにタクシューのセンスがぎっちぎちに詰め込まれていたと思ってるんですね。
また、これが難易度にも繋がっています。
アドベンチャーゲームの難しい点(面倒な点ともいう)は、クリアに必要な証言や証拠集めですね。
画面を隅々までクリックして、情報を集めて、関係者から会話を聞きまくって、地道に捜査をする。
「逆転裁判」は、この手のジャンルに欠かせないルーチンワークを「会話によって楽しく」させて苦にならない様にしてくれていたんです。
ここをバッサリとカットしていたのが今作。
調査出来る箇所を必要最低限+α程度に抑える事で、探偵パートの苦を減らすような作りになっていましたが、「会話の楽しさ」が失われ、また、難易度も低めになる一因となっていたかなと。
繰り返しますが、容量の関係という事もある気もします。
アニメーションが豊富に収録されていましたし、シナリオ自体のボリュームも中々な物でしたしね。
しかし、シリーズのこの点が気に入っている僕には、唯一物足りなかった点。
もし次作があるのでしたら、タクシューには、是非に復帰してもらいたいものです。
まとめ
会話の楽しさは欠けてましたし、物語全体の構成も「3」には劣っていた…。
とは思うんです、正直なところ。
ただ、キャラクターの動き・真犯人の変身(笑)とかシリーズの良さを踏襲し、ここで笑い面はカバー。
物語的には、何より「4」からの繋がりが抜群でした。
「4」を活かしきったシナリオには、心から絶賛したい部分ですね。
タクシューの熱狂的なファンには「ちょっと違う」感があるかもしれません。
けれど、シリーズが好きならばやって損は無い1作ではないかな。
*1:「4」の初期段階では、ナルホド君は出す予定がなかったとタクシューが語ってた気がします。間違ってたらゴメンナサイ。