「SLAM DUNK」が到達できなかった頂に挑む「ハイキュー!! 終章」が面白い

この記事は

「ハイキュー!! 終章」の感想。
ネタバレあります。

はじめに

「ハイキュー!!」の終章が盛り上がってきました。
お互いがプロとなったライバル同士の熱戦。
日向vs影山

とても面白いです。
大変に盛り上がっている終章を「ジャンプ」連載で追いかけつつ、アニメ4期も見てました。
物語は、全国直前の強化合宿とか伊達高との練習試合とかその辺が中心。
改めてアニメで見て、気づきがあったんです。
連載当時は考えても無かったのですが、現在の終章を見据えた構成になっていたんですね。

いい機会でしたので、「ハイキュー!!」を振り返ってみました。
そうして思い出したのです。
同時に気づきました。

「ハイキュー!! 終章」は「SLAM DUNK」唯一のやり残しなんだ

と。

本気で戦えなかった花道と流川

「SLAM DUNK」で唯一やり残したことがあるとすれば、やはり花道と流川の対決でしょう。
後に「終生のライバル」とまで言われる2人ですが、出会ったのも高校に入ってから。
花道の意地で一度徹底的に1on1で試合をやってましたが、あくまでも非公式。
この時の2人の関係はライバルとは呼べず、花道は流川を嫌悪し、流川は花道を歯牙にもかけてなかった頃。
お互いを認め合うというライバル関係でも最も大事な点が欠片も無かった時でした。

31巻に及ぶ物語は、お互いを認め合うまでの物語なんです。

花道が流川を「バスケットボールプレーヤー」として始めて意識したのは、IH緒戦の豊玉戦でした。
綾南との激闘を終え、流川との対決で完膚なきまでに敗れ、2万本シュート合宿を経ての豊玉戦。
マッチング相手の岸本の度重なる挑発に冷静さを欠いた花道は、本来の力を出せずに早々にベンチに下げられてしまいます。
そうしてベンチから試合を観戦していて、ここで漸く流川のプレイを真剣に見るんですよね。

流川のジャンプシュートは、花道の理想とするフォームだった。

2万本の練習をしたからこそ、バスケ選手としての確かな成長をしたからこそ、気づいた流川の凄さ。
これ以降、花道は意識的に流川のプレイを目で追うようになり、それが更に彼の成長を加速度的に速めるとありました。
但し、それは「もうちょっと先の話」だとも。

対して流川が花道を意識したのは、続く2回戦・山王工業戦。
この試合で「バスケットマン」となった花道の覚悟をしかと受け取ったのでしょう。
試合終盤、初めて流川は彼にパスを出しました。
ただのパスじゃありません。
勝つか負けるか。
生きるか死ぬかのラストプレイです。
ブザー直前、ここでシュートを決めなければ負けるという状況の中、流川が選んだ選択肢が「花道へのパス」だったんです。
奇しくも、ジャンプシュートのコツを呟く花道へ向けてのラストパス。

苦し紛れ程度の選択だったならば、ブロックを掻い潜ってでも自分で突貫していたんじゃないでしょうか。
ここでパスをしたのは、花道ならば決めてくれるという確信を持ったからでしょう。
勝つための最善の選択。
それはつまり、流川が花道を認めた何よりの証左となります。

最終回では、リハビリ中の花道に向けて、全日本のユニホームを見せびらかす流川。
IH前だったら、絶対にこんなことしてませんよね。

もしも、「SLAM DUNK」の続きがあるのだとすれば、それはやはり高校を卒業した後の物語になるのでしょう。
ケガから復帰した花道が、流川のプレイから技術を吸収して飛躍的に成長を遂げるのが、湘南バスケ部での残り2年間だとすれば、大学編かその後か。
流川が渡米した後かもしれないし、2人がプロになってからかもしれない。
「いつ」かは分かりませんけれど、成長した2人が真剣勝負を繰り広げる物語が「あるべき続編」の姿なのかもしれないです。

然しながら残念なことに、「SLAM DUNK」は終生のライバルの対決を描くことなく終わってしまいました。
唯一のやり残し。
連載終了から14年。
作品を超えて、このテーマに今「ハイキュー!!」が挑んでいます。

合宿編の布石

中学生時代の公式戦で、2人は邂逅しました。
1年生3人と助っ人2人を伴って、初めての公式戦に出場した日向は、試合直前トイレの前で影山と出会いました。

初対面からぶつかり合った2人の出会いは最悪。
試合中も相手を意識する2人。
日向から見た影山は「嫌な奴だけれど、バレーは滅茶苦茶上手い」。
影山から日向は「基礎の出来てない未熟者だけれど、目を見張る才能を持っている」。
この試合ぼろ負けを喫した日向は、影山へのリベンジを誓い、これまで以上にバレーに打ち込みます。

それから1年。
烏野高校に入った日向は、打倒影山を誓って体育館に向かうと、そこには「いる筈の無い」影山がいて…。

第1話で描かれたのは、2人のライバル関係。
そして、果たされなかった再戦でした。

影山がバレー強豪校(白鳥沢)の入試に落ちた事、澤村の逆鱗に触れてしまった事。
まぁ、チームメイトになったからということでお互いを意識しつつも同じ目標を持って戦ってきた2人。
僕自身いつの間にか「日向の最初の目標=打倒影山」を忘れていました(汗
然しながら、作品としてはしっかりと「そこ」へ向けて準備されていたのですね。

真の王様へ!!影山の成長

中学時代から本気で・全力でバレーに取り組んでいた影山は、王様と揶揄されチームからやや浮いた存在でした。
この頃は、悪い意味でバレーに全力でしたからね。
仲間を見ずに、己の速さだけに固執していたというか。
ちょうど監督(?顧問の先生)にズバリ注意を受けてます。

この顔、分かってません。

烏野に入ってからも、日向の運動神経の良さが災いしてたんですよね。
影山の速さにきっちりと追いつける日向のジャンプ力。
速さと高さを兼ね備えた日向のジャンプは、影山の王様プレイをある意味助長してしまってました。

それでも影山自身王様と言われることを嫌っていた為、少しずつ少しずつ変わっていきました。
勿論、その過程において、日向の「自立」が大きかったのは言うまでもありませんよね。
影山に合わせてもらっていたトスを、自分自身のタイミングで捉えられるようになる等、影山のスピードに食らいつく姿勢を魅せてきて。
日向だけではなく他のチームメイトも影山と同じかそれ以上の真剣さで、彼に付いていった。

しかし、まだまだ真の王様になれてなかった影山のプレイを見て、合宿で宮侑が一言で形容します。

後に宮自身が振り返ってますが、「スパイカーのご機嫌を伺うようなプレイスタイル」だったとのこと。
この言葉が気がかりだった影山は、伊達高との練習試合で一気に開花します。
日向の疑問から始まって、烏養コーチの言葉で吹っ切れた影山。
スパイカーに合わせないで、常に最高のトスを上げることを宣言。
月島をも引っ張られて、その後もチーム全体が影山のプレイに付き合うようになります。

389話で「脅迫」と書いて「しんらい」と読ませるところが、まさに影山らしいですよね。
「最高のトスを上げるんだから、しっかり打ってくださいよ」って強気な感じが出てます。
応えてくれる仲間のお陰で、影山は真の王様になって日向の前に立ちふさがりました。

オールラウンダーへ!!日向の挑戦

「一歩一歩着実に進んでいきましょう」という意味のことわざ。
武田先生は、日向に「君にはまだ代表合宿は早い。一つ一つステップを踏みなさい」と言ってるわけです。
日向理解出来ずに、字面から「急がば回れ」という意味に取ったのかもなと(笑
この説教の直後に田中から「焦んなよ」と言われたことも混ざってしまったのかもしれません。

影山のようにすぐにプロという道(その道が用意されていたかどうかはまた別として)を踏まずに、準備に1年・修行で2年の計3年間遠回りすることを選んだ。

合宿での伏線はあと2つですね。
どちらも終章入ってすぐに描かれていたことですが、1つは「全部出来るようにならなきゃ」という決意。
第218話、合宿5日目。
五色&月島vs国見&百沢を観戦した日向。
得意なことも当然として、苦手なことも卒なくしっかりとこなさないとならない2on2。
出来ることの少ない日向にとっては、画期的な練習法に映ったのかもですね。
自分もなんでも出来るようになりたいと強く想ったことが描かれてました。

2つ目は、人脈。
ここで鷲匠先生に出会ってなかったらブラジル行きは叶わなかったかもですからね。
星海擁する鴎台高校との試合で、鷲匠先生を本気で惚れさせることすら難しかった気がします。
根性を見せた成果が後に繋がってますよね。

春高でまさに上位互換である星海と相対し、敗れた事もまた、オールラウンダーを強く強く意識させることになったのかなと。

正直、かなりのレベルアップをしないと影山には立ち向かえませんよね。
それにはそれなりの時間が必要ですし、合宿編の伏線を用いて巧みにその時間を捻出していた。

いつから終章の構想があったかは定かではありませんが、少なくとも強化合宿編で2人の対決は確定事項だったのかもなと。
そう思った次第。

終わりに

そういえば合宿で日向は、観察することを意識し始めました。
1つ1つの仕草や癖、目線などなど。
小さなことから情報を読み取って、次のプレイに活かす。
上手い選手の動作を目で見て盗む。
これもまた日向のレベルアップに大きく与してました。

ここら辺もまた花道がやろうとしていて、実際に描けなかった部分と言えるのかもです。

原点に帰ってのライバル対決。
共に成長し、最高の形での対決にワクワクしながら読めています。

いつか。
いつか、「SLAM DUNK」でも見てみたいですね。

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