この記事は
「はなにあらし」1巻の感想記事です。
ネタバレあります。
はじめに
「週刊少年サンデー」・「ゲッサン」・「サンデーGX」が共同で更新している漫画アプリ「サンデーうぇぶり」。
同アプリで昨年11月から連載が始まったのが今作です。
恥ずかしながら僕は今作を最近知りました。
「週刊少年サンデー」19号に1話前後編が掲載されていて、表紙の「百合漫画」の文言だけ見て、そっ閉じ。
コミックスを買ってじっくり楽しもうと心に誓いました。
発売日に購入し、ようやく先日読めましたので、ここに感想を残します。
新人離れした安定した画力
作者の古鉢るか先生。
存じ上げなかったので、調べてみました。
そしたらこんなページが引っかかりました。
blog.t-kougei.ac.jp
東京工芸大学のブログのようです。
6年前に卒業されているようなので、読切等描かれてる可能性はありますが、連載は初めてみたいですね。
新人の定義が曖昧なので、なんとも言えないのですが、初連載で連載間もない時期までを新人と呼べば該当するのかなと。
新人と呼んで差支えないのかなと考えます。
とすると、非常に画力が高いです。
なによりも安定しています。
ご自身の絵柄が確立されていて、線も綺麗なので、とっても読み易い!!
コマによって顔が違ったり、角度によって崩れることもないのです。
絵柄が安定しているから、すっと物語に入っていけます。
漫画を気持ちよく読む際には、大事なポイントですね。
「サンデー」とは思えない作品
最初に今作は「サンデーうぇぶり」で連載していると書きました。
3誌共同のこのアプリですが、作品毎に担当している雑誌が分かるようになっています。
どの作品が、どの雑誌の担当なのか?
一番分かり易いのが、各公式サイトのコミックス発売ページを見ることです。
上が「サンデーGX」、下が「週刊少年サンデー」の公式サイトのスクショです。
コミックスのレーベルが各々違うので、そこから判明するって感じですね。
今作「はなにあらし」は画像にもあるように、「週刊少年サンデー」帰属の作品です。
とすると、とても珍しいです。
確かに伝統的にラブコメ漫画に強い「サンデー」ですが、同性愛を描いた作品は他に記憶がありません。
女性同士の恋愛である百合を題材にした今作の連載は、非常にチャレンジ精神に溢れたものに見えます。
全く新しい企画に挑戦するのです。
生半可なものは投下しないでしょう。
より自信を持って打ち出してきているのではないかと推測できます。
はたして今作は、そんな「編集部の自信」のほどがしっかりと見受けられる作品でした。
友達と親友と恋人の違い
高校生の千鳥(左)となのは(右)は親友。
友達と親友っていうのは、やっぱり違うと思うのです。
どこまでが友達で、どこからが親友なのか。
人によってその境界線は異なるでしょう。
例えば僕は、「人生のステージにかかわらず、付き合っていけるか」どうかを1つの基準に持っています。
小学校で出会った友達。
クラスが離れても、進学しても、友達関係を続けられますか?
ただの友達だと、ちょっとした環境が変わるだけで、自然と遊ばなくなってしまうものです。
しかしこれが親友になると異なります。
別々の環境に身を置いても、定期的に連絡を取り合い、時は会って遊ぶ。
顔を合わせる機会は減るかもしれませんが、それでも、関係は絶えない。
そういうのが親友であって、友達とは一線を画す点なのかなと。
友達と親友の違いっていうと、結構堅苦しく考えがちです。
少なくとも僕はそうなんです。
親友と呼ぶ事に恥ずかしさみたいなものを覚えるというか。
でも実際は、わりと簡単なことなんじゃないのかなとも最近は思えるようになりました。
小さい頃に「生涯の友達を作りなさい」って親に言われてましたが、そういうこと。
離れ離れになっても関係が続く友達の事を親友と呼び、親友っていうのは、家族のように気を許せる相手なのかなと。
ではでは、千鳥となのはにとっての親友とはなんでしょうか。
それは1つに、相手のさり気ない表情の機微に敏感になれるということ。
いつもとなにか違う。
その「なにか」は友達には気づけないほど些細な違和感。
なのはは千鳥の「なにか」に気づきます。
あっさりと元気がないことを指摘します。
他の3人の「友達」は気づけなかった違和感。
それを僅かな時間で見抜けるのが「親友」です。
千鳥にとって「なのはだけが親友」。
1話でそれをこのような形で表現しています。
さて、次に親友と恋人の違いってなんでしょうか。
これは簡単ですね。
2人の間に恋愛感情があるか否かでしょう。
たったこれだけの違い。
なんでも話せる。
気が許せる。
いつまでも付き合っていける。
親友と恋人の関係はとても近い。
近いけれど、決定的に異なります。
相手を思いやる気持ちがLIKEなのかLOVEなのかの違い。
千鳥となのはは親友です。
友達以上恋人未満の関係。
それだけだったのですが、ある日ちょっとした気づきをします。
なのはに起こった変化は、2人の関係も変えました。
友達以上親友以上の関係に発展しました。
ことさら2人の関係性に親友を強調する今作ですが、それは友達と親友の違いを明確にしたいからと解釈しました。
友達よりもずっとずっとお互いの距離間が近いんですよね。
それをさらっとした表現でしっかりと描いています。
その上で、2人は恋人同士だと謳う。
2人の間には恋愛感情があるのだと提示します。
この2ステップによる関係の描き方によって、2人の恋愛が真面目だという印象を持ちました。
決して軽い気持ちで付き合ってる訳では無い。
決してごっこ遊びでは無い。
例えクラスが離れても、学校が変わっても、変わらない繋がり。
親友のように強い関係で結ばれている恋人関係。
100の言葉よりも簡単に1つの「親友」という間柄を示す事で、明瞭に簡潔に、そして説得力のある描写で1話は演出されています。
すごーく丁寧な導入なので、2人の世界にすんなりと入っていけます。
ピュアな反応が可愛い
付き合って日が浅いので、2人の関係はとっても新鮮さに溢れています。
友達関係・親友関係だった時は出来ていた何気ないこと。
それは、抱き着いたり、2人きりになったり、「はい、あ~~ん」ってしたり。
特別意識してないから、自然と出来ていた事が、意識し始めたことで・秘密にしてるからこそ出来なくなってしまって。
1つは、食べさせること。
はしを口元に持って行って、「はい、あ~~ん」。
それは恋人同士が愛情を確かめ合う行為。
または、気のおける間柄での何気ない行い。
女子同士だからこそ友人関係でも出来ることなのかな。多分。
(男同士だと絶対やらない)
なのはが千鳥に自慢の肉団子を食べさせてあげようとします。
が、千鳥は周囲の目を気にしてしまい拒否。
そこでなのはは一計を案じて、友達3人組に1人ずつ食べさせていき、千鳥に「なんでもないこと」と暗に伝えるのですが…。
いざ千鳥の番になった時に、肝心の肉団子が無い事に気づきます。
ショックな2人。
そこで立場逆転ですね。
おかずを無くしたなのはに、今度は千鳥が「はい、あ~~~ん」をします。
顔を朱に染めながら。
顔を真っ赤にしながら。
「恋人」という意識がなければ、自然と出来ていた事だけど、恋人だからこそ出来なくなってしまう。
「恋人」という意識があるからこそ、自然と出来ていた事に特別な意味を与えてしまう。
恋人でも慣れちゃったりすると、自然に出来るんでしょうけれど、そうじゃないから動揺が顔に出まくるんです。
新鮮な反応です。
そう。
今作の楽しみポイントは、2人のピュアな関係性です。
付き合いたてだから、なにげないことでも顔が真っ赤になっちゃいます。
ピュアなリアクションでとても尊いです。
付き合ってる事を周りにナイショにしてるから、過剰気味に意識して赤面しちゃう事も。
ともかく2人の反応がいちいち可愛らしい。
照れてデレて嫉妬して、2人の「好き」が溢れすぎ、読めばニヤニヤ100%必至。
まさにこの通りの感情に浸れる漫画。
赤面してる女の子大好きです!!
終わりに
基本1話完結なので、軽い気持ちで触れてみて下さい。
www.sunday-webry.com
3話とか超良いです。
2人の関係が変わったからこその感情の変化が楽しめます。
古鉢先生のツイッター曰く、初版の部数が少ないらしく入荷の無い本屋さんもあるかもとのこと。
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