この記事は
ラブコメ・恋愛漫画に於けるヒロインについての考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
はじめに
「バトル漫画なら敵やライバル、ラブコメならヒロイン増やせばテコ入れ出来るでしょう」
タイトル忘れてしまったのですが、最近読んだ漫画にこのような主旨の台詞があった気がします。
バトル漫画に於けるライバルキャラとラブコメ・恋愛漫画に於けるヒロインキャラを同列視してるような感じに思えて、いやいや違うでしょと感じてしまったのです。
持論ですが、ヒロインは無暗に増やすものではないと思ってます。
そのキャラの立ち位置が持つ「出てくる必要性」を満足出来ないケースが多いからです。
追加ヒロインは難しい
キャラを増やせばテコ入れとなるのは、その通りですよね。
場合によってはカンフル剤となりうる事もあるかと。
実際の所は不明ですが、「銀魂」にとっての真選組がそうだって言われてますよね。
当時人気が芳しくなかったものの、第五訓で土方・沖田ら真選組を登場させてから安定し始めて〜とか聞いたことがあります。
作品の人気を左右する大きな存在にもなり得る新キャラ投入は、漫画に限らずどんな物語にも大事な要素なのは確かなんです。
が、ことラブコメ・恋愛漫画のヒロインは少しばかり事情が異なります。
ヒロインが作品にとってテコ入れとなる事、それ自体は否定しません。
けれど、容易に量産すべき立ち位置のキャラでも無いんです。
主目的である主人公との恋愛を達する事が困難であるから。
バトル漫画のライバルキャラは、極端な話一度でも主人公と一戦交えれば役割を全うしたと言えます。
事実主人公と戦う事無く退場したライバルキャラは存在しない筈です。
それに引き替え、追加ヒロインはどうか。
勿論、主人公と恋愛する可能性を示唆したヒロインとそれ以外のヒロインを分ける必要はあります。
恋愛シュミレーション的に言えば、攻略対象か否かですね。
個人的には、前者である攻略対象ヒロインは無暗に増やすのは良くないなと考えています。
攻略対象ヒロインとしながらも、一方的な片思いがせいぜいで、両想いに発展するケースは少ない。
殆どの場合、物語の最初から登場しているヒロインとくっついて終わってしまいます。
攻略非対称であるサブヒロインと大して変わらないままになっちゃう事が多いんですよね。
恋愛という作品のテーマの主役に立てない。立ちにくい。
最初の1人目、2人目位はそれでも主人公とくっつくかもしれない可能性を見出せるんですが、3人目あたりから「どうせ何もないんでしょ」と思えて来て、「もう(追加ヒロインは出さなくても)いいんじゃないかな」となりやすい。
少女漫画だと「追加ヒーロー」が大勢出てくる作品って少ない気がします。
そもそも男性目線の恋愛作品と「恋愛の描き方」が違うからなんでしょうけれど、基本は最初に提示されたヒーローと主人公が恋愛していく様を描いていく。
途中出てくるのは、2人の恋愛の障害になりそうなキャラ。
追加ヒロイン(主人公にとってのライバル)であったり、追加ヒーローであったりと様々ですが、せいぜい1,2人位という印象。
だからかな。
追加ヒロイン(ヒーロー)の問題は、少年漫画のラブコメ・恋愛漫画に顕著な傾向に思えます。
でもね。
「無暗な」としました。
意味も無く、ただ単にテコ入れと言う名目で増やすのだけが反対であって、そうじゃなければ納得出来るんです。
読者に「追加ヒロインでも主人公とのエンドがあるのかも」と思わせる工夫があると面白いなと。
僅か3作品ですが、そういう工夫が施された「週刊少年ジャンプ」の歴代3作品を例に取ってみます。
そこでヒロインの定義をしておきます。
当初から登場(若しくは登場を想定できた)ヒロインを便宜上「メインヒロイン」とします。
物語がある程度進んだ後に出て来たヒロインを「追加メインヒロイン」。
主人公との恋愛をしない(主人公に片思いすらしない)ヒロインを「サブヒロイン」。
以降、この記事ではこういう風に分けていきます。
「I”s」
桂正和先生の代表作であり、1997年19号から2000年24号まで連載された「WJ」の恋愛漫画を代表すると言っても過言ではないです。
今作のヒロインを纏めてみます。
先ずメインヒロインですね。
葦月伊織と秋葉いつき。
主人公の一貴は伊織に恋する少年で、幼馴染のいつきとの間で揺れる恋心を中心に話が進みます。
追加メインヒロインは磯崎泉。
今でいうゆるふわ系ヘアーをしてるのに肉食系という女の子。
好きでしたw
サブヒロインはなんとゼロ!!
と言いたいところなのですが、微妙なのが麻生藍子でしょうか。
公式設定がどうなっているのか分かりませんが、彼女を追加メインヒロインとするかサブヒロインとするかは微妙な線です。
一貴を好きになりかけた彼女は、それだけで追加メインと呼んでも差支えない。
けれど、今作に於けるヒロインの定義からするとちょっと違うかなとも思える。
一貴を含め全ての主要キャラは「I」で始まる名前を持っています。
一貴 Ichitaka
伊織 Iori
いつき Itsuki
泉 Izumi
タイトルの「I”s」はここから来ていて、これが追加ヒロインが出て来ても納得出来ちゃう点。
流石に5人も6人も追加ヒロインが出てきたら、いくらなんでも多過ぎでしょと感じちゃってたでしょうから程度の問題はありますが。
さてさて、藍子ですね。
wikipediaなどでは彼女も「I”s」の一員として定義されてますが、個人的には違う気もして。
だって、彼女のスペルは「Aiko」なんですから。
音が「あい」だからというのはちと強引な解釈な気がするのです。
ただ、桂先生が「I”s」に含めていたのでしたら、僕の勝手な間違った解釈になるんですけれどね。
藍子が一貴と伊織がカップルになった後に出て来た点。
藍子が一貴を好きになりかけたところで、自ら身を引いて居なくなった点。
名前の頭文字が「I」で始まっていない点。
泉と違って(泉初登場時のサブタイトルが「4人目のI」でした。微妙に間違ってるかもですが)、サブタイトルで「I”s」の1人と定義されなかった点。
これらを鑑みて、敢えてここでは藍子をサブヒロイン扱いとさせて頂きます。
何はともあれ、全てのヒロインに頭文字「I」という共通点を持たせている。
それ故に一貴と結ばれる可能性が示唆されていて、読者に「若しかして」と最後まで思わせる要因になっていたのかもしれません。
「いちご100%」
2002年12号から始まった河下水希先生のラブコメ漫画。
あしかけ3年ちょい、2005年35号まで全167話掲載されました。
あと2回で「ニセコイ」が並びますが、現時点では「週刊少年ジャンプ」のラブコメ漫画史上最長連載作ですね。
今作の仕掛けは、やはり名前にありました。
主人公・真中淳平を中心…真ん中として、4人のメインヒロインには方角を充てていました。
メインヒロインの東城綾と西野つかさの2人で、東と西。
追加メインヒロインの北大路さつきと南戸唯で、北と南。
コミックスでの河下先生の解説から察すると、後付の可能性が高い仕掛けではあります。
当初は東城と西野の2人しか想定してなかったと発言されていらっしゃったので。(記憶違いでしたらごめんなさい)
また、メインヒロインであっても恋愛感情なのか最後まで不明だったのが唯。
「好き」だと発言してましたが、それがラブなのかライクだったのか…。
最終回にメインヒロインで唯一出番が無かったりと、かなり不遇の扱いでありました。
唯はメインなのに恋愛に絡まなかったので、この記事で言う「メインヒロイン」とは少々外れ気味なのですが…。
ともあれ、公式ではこの東西南北4ヒロインをメインヒロインと一括りにしています。
4人のうち誰が真中を射止めるのか。
そういう工夫があったかと。
連載が長期に及んだことによって、サブヒロインの多さも今作の特徴と言えますね。
外村美鈴、端本ちなみ、向井こずえの3人。
真中との恋愛関係にならないのが分かりきっていたので、サブヒロインが多く出て来ても問題を感じませんでした。
美鈴とちなみの2人に至っては、外伝で初恋話が作られたり、本編で真中の友人である小宮山と付き合ったりと、メインの外での恋愛が描かれていました。
そんな2人とは違って、これまたメインヒロインに含めても問題無いのが向井こずえ。
登場がぶっちぎりに遅く、メインと言うよりもサブとして扱っている媒体が多いのですが、真中を好きになったヒロインとしてこの記事ではメインヒロインの1人として扱うべきキャラなのかもしれません。
立ち位置が「I”s」の藍子と似てるんですよね。
物語終盤に出てくる主人公に恋するヒロインは、それだけで新たに枠を作って差別する必要性があるのかもです。
主人公としても読者としても、藍子やこずえのエンドは無いと判断出来てしまっていて。
けれどメインヒロインの条件は満たしている。
サブヒロインであっても、こういう毛色の異なる立ち位置の子は、アクセントとなって良い影響を与えるのかもです。
「ニセコイ」
古味直志先生が現在連載中のラブコメ漫画。
連載が長期化しており、それ故か工夫があっても少々ヒロイン多過ぎ感が漂ってきてるんですが…。
それでもメインヒロインにはやはり共通点があるのは事実ですね。
メインヒロインは桐崎千棘と小野寺小咲。
ジャンプのラブコメ・恋愛漫画は基本的に2人のメインヒロインを登場させるところからスタートする事が多いですね。
主人公がどっちを選ぶかが焦点になっていて、序盤はそれで話を転がしているのかなと。
ちょっと脇道に逸れました。
追加メインヒロインは、橘万里花と奏倉羽。
この4人は主人公・一条楽と幼き日にとあるヤクソクを交わした可能性を持つという共通点があります。
楽が首から下げるペンダントの鍵と思しきものを持っているんですよね。
ちゃんとメインヒロインには共通点があるんですが、「ヒロイン多過ぎ感」の要因になってしまったのが僕的には羽(ゆい)姉の登場。
彼女は14巻第118話で初登場。
あまりにも遅すぎる登場に、これは際限なくメインヒロインが登場するんじゃないかという危惧を抱いたほどです。
4人目のメインヒロインの登場があるかもという伏線が出て来たのも遅かった。
11巻第90話。
物語のキーとなる絵本が初めて大々的に取り上げられ、その絵本の表紙も描かれていました。
表紙には男の子と鍵を持った4人の女の子の姿が。
当時はこれが4人目の伏線に成り得るとは考えもしてなかったのですが、結果的にはそうだったのでしょうね。
もっと早い段階で4人目の存在を臭わせ、実際に羽姉が登場していたら、もっともっと良かったですね。
もう1つ「多過ぎ感」を齎せているのはサブヒロイン勢の立ち位置ですね。
鶫誠士郎も小野寺春も楽が好き。
メインヒロインとの境目を曖昧にしていて、メインとしても数えられるような位置にいる。
春が超絶に可愛いので何の問題も無いのですが、連載長期化の弊害として捉える人も居るかもですね。
多少「無暗なヒロインの増加」傾向にある今作ですが、メインヒロイン4人には1つの共通点を持たせて「誰が楽と一緒になるのか」を分からなくしているのは確かでしょうか。
終わりに
無暗に増えたヒロイン達を最終的に全員メインヒロインにしちゃおうとされているのが「To LOVEる-とらぶる-ダークネス」。
何度か書いてますが、ハーレム計画ってラブコメ漫画としても画期的と言うか面白い試みであるなと。
こうされるとヒロインが何人追加で登場してきても、何の問題も無くなっちゃいますからねw
ヒロインは「主人公と恋愛をする為」登場してくると考えます。
物語の途中から出てくるヒロインは、その存在意義を満たせない事が多く、故に、多く登場して欲しくない。
しかし、結果的に主人公と結ばれなくとも、結ばれる可能性を最後まで持てるような工夫があると、その登場に異を唱える事は出来ません。
ここで挙げた3つの作品は、そういう工夫がちゃんとあり、故に面白く読めたのかなと感じました。