この記事は
「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」の感想です。
ネタバレあります。
はじめに
映画第1弾は、全く期待してませんでした。
見てみたら掌返し。
傑出したクオリティに舌を巻きました。
しっかりしたドラマ、見ごたえのあるバトル、圧倒的な迫力。
満足感の高すぎる1作だったのです。
だから、今回は逆に期待値マックスで鑑賞に臨んだんですよ。
あの1本を作り出したスタッフなのだから、今回も絶対に面白いだろうという期待感。
だけれど、そういった期待感は往々にして間違った判断をしてしまう原因になり得ます。
フラットな視座で鑑賞した時には十分に期待感に応える出来であったと感じるモノを、事前の勝手な期待感の高さが災いして大したことが無かったという間違った評価を下してしまうなんてこともあったりします。
ハードルを高く設定するのは個人の勝手ですが、作品を楽しみを阻害する一因にも時にはなるのかなと思うのです。
前置きが長くなりましたが、では、今回の第2弾はどうだったのか。
僕の勝手な期待感を軽々と超えていく大傑作だったじゃないですか。
もう本当に凄い。
鑑賞中に凄い凄い物凄いという言葉で脳内を埋め尽くしながら、夢中になってしまいました。
何故にこうも最高な作品が作られたのか。
それは一言で纏めれば、「ヒロアカ」を愛してやまないスタッフが全力で作っているからなんだと思ったのです。
僕が今作を最高傑作と称える理由を3つ挙げてみます。
理由その1:ブレない作品の芯
これは、僕が最高のヒーローになるまでの物語だ。
原作第1話で登場したこのフレーズは、テレビシリーズでも毎回オープニングナレーションとなっている「ヒロアカ」を代表するものであり、今作を一言で言い表したものです。
映画でも勿論デクのナレーションで堂々と宣言されています。
それなのに、どういう訳かうっかり忘れがちなのが「最高のヒーローになるまでの物語」であるという点。
そうなんですよ。
この物語は、なんの力も持たなかった出久少年がナンバーワンヒーローから力を継承し、学園内の仲間たちと切磋琢磨しながらも直向きに努力を重ね、最高のヒーローに成長するまでを描いたものなのです。
次第に強くなっていく未熟なヒーローの卵の成長譚なんですよね。
だからね、バトル漫画のテンプレに則る必要性は全く無いのです。
普通だったら主人公が立ちはだかる強敵に単身挑み、ボロボロになりながらも勝利を掴みます。
けれど、「ヒロアカ」ではこれをやってしまうと「ヒロアカ」で無くなるんですよ。
デクが1人で立ち上がって、1人でスーパーヴィランを倒したら、それはもう紛い物でしかありません。
少なくとも彼が雄英高校生である現状では、そうなのです。
極論デクがヴィランを倒さなくたっていい。
彼が成長してるんだと分かれば、それで作品としては成立しちゃうのです。
この視点で、では、劇場版を振り返ってみると、第1弾から彼の成長の跡がしっかりと見て取れるのです。
第1弾は、TVシリーズ第2期と第3期の間の物語でした。
デクはワン・フォー・オール フルカウルをなんとかものにした状態。
スーパーヴィランを1人で倒すことなんてまだまだできません。
そこで、シリーズ初となる師弟タッグが結成されました。
オールマイトという最強のヒーローの力があったからこそ、敵を撃破出来たのです。
つまり、オールマイトというプロヒーローがいないとデクはヴィラン退治もままならなかったのです。
第2弾となる今回の時系列は、恐らくB組との合同戦闘訓練前後。
エンデヴァーがNo,1になっていることや焦凍への態度の変化。
ホークスの登場もそうだし、死柄木(敵連合)がドクターと接触してる件など。
作中の人物の関係から見て、TVシリーズ第4期以降のお話です。
デクはシュートスタイルを身につけており、この点だけをとっても第1弾の時より成長しています。
この間、デクは多くのヴィランを交戦を繰り返してきました。
技を身に着け、仮免とはいえヒーローとしての経験値も多く身に付けました。
それは、彼のクラスメイト達も同様ですね。
ヴィランは前回のウォルフラムよりも今回のナインの方が強かったと思われる為、ナインを倒すことで成長を示せるという構図。
前回よりも強大なヴィランに、ヒーローの応援が期待できない中で、自分たちの力だけで戦わないとならない。
非常に分かりやすい状況が用意され、そうして彼らだけの力で勝利を掴んだ。
多くの仲間たちがいたからこその勝利。
それでも、デク達だけでスーパーヴィランを退治できるだけの力をつけたという事実。
2本の映画だけでもしっかりとデクの成長を描き、それでいて「デクだけで倒さない・倒せない」といういっそ矛盾しそうな状況を作り出すことに成功している。
作品の本質をしっかりと捉えた上での作劇。
だからこそ最高なのです。
理由その2:クラスメイトの秀逸な描き方
登場人物が多すぎると、画面がわちゃわちゃするし、なによりも「ただ出て来ただけ」のキャラを生み出してしまう恐れがあります。
その点前回はメンバーを厳選して、上手く活躍の場を与えていました。
今回はなんと20人が全員フル参加。
大丈夫なんだろうか、捌き切れるんだろうかという失礼な心配をしていました。
もうね、杞憂もいいとこでしたよね。
むしろ20人全員いたからこその勝利という状況を生み出していた、凄い!!
そこで活用されたのが、ナインの弱点です。
ナインは個性を使い続けると、己の細胞が死滅するという副作用を持っているという設定。
ドクターの改造を経て、9つの個性を使い分けることが出来るようになると、その副作用も強く出てしまうという弱点を持っていました。
(この弱点が活真を狙う理由になっているところも巧いよね~)
緒戦でその弱点に気づいたデクは、個性を使わせまくって副作用を引き出そうという作戦を立てます。
そうでもしないと自分たちでは勝てないという冷静な判断力とそれならば勝てるという信頼の上で成り立った計算なのかなと。
地形を利用しつつ、敵戦力を分断。
各個撃破しつつも、親玉であるナインはじわじわと消耗させるというこの作戦は、20人いたからこそでした。
戦闘力の高い主力組は、対ヴィランでの活躍の場を作りやすいけれど、所謂サポートメンバー組(個性が戦闘向きでないメンバー)は活かしづらい。
その問題も、島民を非難させたり、守ったりするメンバーの必要性を高く掲げ(活真の個性や相澤先生の「敵と戦うだけがヒーローではない」)ることで解消。
更に「ダメージを与えるのではなく、個性を使わせること」だけに意味を見出したVSナインの状況設定を作り上げることで、見事に活躍の場を与えてました。
クラスメイトをしっかりとスーパーヴィランとのバトルに参加させることで、「デクだけで倒してはならない」という作品のルールをもクリアさせることに成功しています。
故に最高なのです。
理由その3:「ヒロアカ」を愛してる最高のスタッフ
今作が最高であるのは堀越先生が完全監修してるからというのも勿論間違いないのでしょう。
けれど、作品を愛するスタッフが、しっかりと「ヒロアカ」を映像化してるからこそだと思うの。
監督の長崎さんは、第1期から現場を指揮してきたアニメ「ヒロアカ」には無くてはならない存在。
脚本の黒田さんも第1期からシリーズ構成・全話脚本を担当。「ヒロアカ」を堀越先生の次に知り尽くしてるのではないでしょうか。
この最高のタッグが、堀越先生原案のストーリーを忠実かつ最高に映像化。
そこへ馬越さんの筆が生み出す原作再現度の高いキャラクター達が、活き活きと動き出す。
作画スタッフのとんでもない熱量と躍動感あるアクションが、大スクリーン映えする迫力を生み出している。
僕にしっかりとした知識があれば、具体的にどこがどう凄いのかの解説が出来るのでしょうけれど、すみません。
そういった知識も見識も無いので、説得力に欠けるかもですが、本当に本当に凄まじい映像です。
やっぱり映像が凄いと自然と感情も煽られるわけで、最高のシナリオがより至高へと高められていくんですよ。
愛だよね、最後はね、やっぱり。
作品への愛が溢れてるからこそ、最高なのです。
終わりに
「ヒロアカ」映画にハズレ無しですね。
前回も最高だったけど、個人的には今回の方が良かった。
作品のクオリティ自体が「さらに向こうへ プルスウルトラ」してて、もう最高だった。
「最高何回言うとんねん」「語彙なさ過ぎやろ」と自分でも思うけど、本当だから仕方ない。
お腹いっぱいの満足感。
面白かったです!!