1冊ごとの読み応え・充足感が半端無い!!「惑星のさみだれ」を読もう!!!

はじめに

ここまで面白い漫画に出会ったのは、いつ以来であろうか?

「惑星のさみだれ」を読んで本気で僕が感じた感想です。
面白い漫画には多く出会って来たという自負(笑)が、僕にはあります。
特に最近は昔に比べて「面白いと思える感度」が良くなったのか、大抵の作品は面白いと感じれるようになりましたし、「面白い作品」に出会う度に「これは滅茶苦茶面白い!!」と思っても居たりしますが。

この漫画はそれらの比では無いというか。
色々な「面白い漫画」達と比べる事は失礼ですけれど、どうしても比べてしまう。
それ程面白いと感じた理由は何か?

こういった曖昧な形の無い問答に対して、僕は答えに窮する事が殆どなのですが、今回は珍しく簡単に答えが出ました。

「コミックスの構成をとことんまで意識した作り」だったからです。
今回は「惑星のさみだれ」の記事です。

惑星のさみだれ 1 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 1 (ヤングキングコミックス)

コミックスを意識した構成を行っている漫画達(1)

コミックスを意識した漫画という事で、「惑星のさみだれ」の話に入る前にいくつか僕の知る限りの事を書いてみます。

先ずは「ONE PIECE」。
これは少し意味合いが異なるのかもですけれど…。
お話の構成段階というよりかは、コミックス制作段階での事な気がしますけれども、一応書きます。

この漫画、巻によっては11話や12話収録だったりと普通よりも話数が多めに収録される事があります。
あぁ因みに、1話19ページの漫画の場合、「普通」は9話で1巻分ですね。

この事をSBSで質問している読者がいました。
43巻ですね。(すんげぇ探してしまったwこんな前だったとは…)
折角なので尾田先生の言葉を抜粋します。

「コミックスというのは、一冊184ページ以上という規定があって、それは9話あればクリアできるんですが、僕の場合、どうしてもこの話まで入れたいんじゃあ!という強い気持ちで(わがままで)10話とか11話分押し込むのです。
つまり、まあ、読者にとってはサービス。
僕にとっては、ストーリーへのこだわりですね。」

という訳で、どの時点での拘りなのかはこれだけでは不明ですけれど、兎に角コミックスを意識してストーリーを構成していると言えなくもないのかなと。
ちなみにこの話、続きがあります(笑)

53巻ですね。
同じくSBSより尾田先生のコメント。

「この前SBSで11話入れる時があるという話をしたけど、ついこの間からそれができなくなったと報告しておきます。
前巻くらいかな?ジャンプコミックス全体の値段が少し上がりましたねえ。
それと同時に、この先11話分入れたコミックスは、値段を20円UPすると言われちゃったんですよー。
20円もUPしちゃったらコレ、サービスではなくなっちゃうからねー。
だからこれからは最高でも10話しか入れないと思います。よろしく!」

ジャンプコミックスだけではありませんが、2009年に確かにコミックスの値段が上がりました。
これを受けての事ですね。

でも、これ僅か4巻後に破られています(笑
57巻で11話収録。その後59巻まで3巻連続で11話収録という事をやっております。
でも、値段は据え置き。

ちょうど57巻で初版300万部という記録を作っていました。
裏で相当の駆け引きがあったのかもしれません。
「値段据え置きで、11話収録させろ!」という尾田先生側と「20円値上げすんぞ!」と譲らない編集部側w
結局この300万部という偉業を讃えるという意味合いかどうかは分かりませんが、編集部が折れたのかもしれません。

ちなみに、顛末という程でも無いのですが、更に続きが63巻のSBSにてちらっとだけ報じられています。

「この63巻、またしても僕のわがままにより、なんと「12話」掲載の特別コミックスとなっております。
でも値段は上げてませんからね。」

相当頑張っているのだと推測できますw

余談が長くなりました。
本筋に戻します。

さて、もう一つ特殊ケースを上げますと「名探偵コナン」があります。
ただこちらは本当に特殊というか…。
10巻、20巻等節目の巻に、それに相応しいエピソードを載せようとされていたようです。
新一復活(20巻)とか名探偵集合(30巻)とかですね。

ただ、これ「失敗」する事もあるらしく。
20巻の青山先生コメ

「コナンもついに20巻到達!
それを記念してまたまたあの男が復活……といきたいところだったけど
彼も奴と同じく神出鬼没、いつどこで登場するかは内緒だよ(笑)
(ただの計算違いだったりして…)」

続いて21巻。

「どーも青山です。
…というわけで(笑)
ファンの皆様お待たせしました。ついに計算違いのあの男が再登場!(以下略)」

うん。「コナン」の件も余談ですね。
本気で本筋に戻ります。

コミックスを意識した構成を行っている漫画達(2)

先ず思いつくのが「金田一少年の事件簿」でしょうか。
連載初期は、コミックスを意識した作りというのはされていなかったと思います。
寧ろそれどころでは無かったそうですし。

確か「異人館村」か「雪夜叉伝説」の時だったと思いますが…。
次の話のトリックがどうしても思い浮かばず、予定に無かった1話を付け足して1週先延ばしにしていたなんてエピソードもあったようですし、この頃は「コミックスの構成」まで考えている余裕は無かったと推測します。

「コミックス単位の構成」を意識され出したのは、コミックス1巻(若しくは2巻)で1事件完結というスタイルに変わってからですね。
(具体的にはCASEシリーズ。「魔犬の森の殺人」から)
以降、1つの事件が8話程で完結する中編か13話以上の大長編に限定され、これは天樹先生も苦労されているという話を見かけたことがあります。

僕がこれから書こうと思っている事と事情こそ違いますが、これも「コミックスを意識した構成を行っている作品」と見做せそうです。

あと2つ書きます。
一つは、「惑星のさみだれ」同様「ヤングキングアワーズ」で連載中の「それでも町は廻っている」。
ストーリー漫画ではありませんので、これもちと意味合いを異とするものの、立派にコミックスを意識して作られていると言えると思うのです。
毎巻かどうかは分かりませんけれど、巻毎にテーマを設定して、それに則ったお話を作られている。
だから、1冊を最初から最後まで読むと言い知れぬ充足感を得られる。
1個のテーマについて、様々な角度から掘り下げた話を約8本も読むのです。
お腹いっぱいになりますよね。

さて、もう一つ。
「大長編ドラえもん」ですね。
まぁ、ぶっちゃけ当たり前のお話なのですけれどもw

1巻完結前提で描かれていて、ストーリーに横の繋がりが一切ない。
共通するのは、メインの登場人物とそれに関する世界観や設定だけでしょうか。
細かい点(過去の冒険の話が別の作品で出たり)を見れば、繋がりがあるとも言えなくもないですけれど、基本的には1冊で1つの物語。

この「大長編ドラえもん」の1冊あたりの満足感もそりゃ凄いってものです。
始まりから終わりまで。文字通りの「大冒険」を堪能出来て、その壮大な物語の終わりまでを一冊で楽しめてしまう。
ページ数以上の充足感を得られるんですよね。
これって滅茶苦茶凄い事だと思っていて。
「コミックス単位でストーリーを構成」して1冊に話の重要な起承転結全てを入れ込む。
これが出来ると凄い面白い!という事が分かるのが「大長編ドラえもん」だったりすると思うのです。

この事を踏まえて。
「惑星のさみだれ」に入ります。

サブタイトル

僕がこの作品から「コミックスを意識したストーリー構成を意識している」事に気付いたのは、2巻を読み終わった時点でした。
聡い人であれば1巻で気付けるのかもしれませんが、僕には「おや?」と思えた程度でしたw

話の内容に抵触したくないので、ざっくりと書きますが…。
この漫画。
1冊の中で1つの大きなエピソードの始まりから終わりまでが描かれている。
1つのエピソードが終わる度に、つまり1巻ごとに、作品全体の物語も大きく前進する。
それが10冊折り重なって出来上がっているのです。

だから。
1冊読んだ後の充足感。読みごたえが半端ないのです。
これは「大長編ドラえもん」を読んだ時と同様の感情。

なんていうのでしょうか。
「面白い映画1本見た後の感情」に似ているんですよね。
まさしく「大長編ドラ」は、映画の原作な訳ですから、この例えは間違ってはいないはず。

毎巻映画を見ているような満足感を得られるんです。
これは何も「物語構成」が映画の様で1冊ごとに起承転結が出来ているからという理由だけではありません。
中身も勿論素晴らしいからですね。
それだけエピソードの内容が濃くて、惹きつけられるというのもありますし、キャラも非常に個性豊か。
ただでさえクソ面白いのに、このコミックスを意識しまくった見事な構成がそれを更に更に強めている。

また、「大長編ドラ」には無い点がある事も大きい。
「1冊ごとに1つの物語が完結している」大長編ドラ。
これを持ちつつ、更に横の繋がり…大きなストーリーが存在しているのが「惑星のさみだれ」。

だから1巻ごとに話に区切りがついているにも関わらず、次の巻への飢餓感。
「早く読みたい」という気持ちも勿論湧く。
もうね、コミックス派にとって最強の漫画なんじゃないかなと思う。

そうそう。
「コミックスを意識した構成」というのは、実はサブタイトルに込められていたりします。
コミックス1冊毎にサブタイトルが付けられているんですよね。
これって相当珍しい事じゃないかな。

有名なのはジャンプコミックス等の集英社。
でもあれって殆どは、収録されているエピソードのサブタイトルなんですよね。
新たにサブタイトルが起こされる事はあまり無い。

だから、集英社のコミックスの場合、これを以て「コミックスを意識した」云々とは言い難い。
でもこの漫画は違います。
各話にきちんとサブタイトルがありますが、これとは別にコミックス全体を評したサブタイトルが付けられている。

1巻なら「トカゲの騎士」であり、これは主人公である(主人公…だと思う)雨宮夕日が「騎士」になるまでを描いた巻だという事が分かる。
サブタイトルという1点からも、この作品の拘り様が見え隠れしている気がします。

まとめ

未読の方は読もう!!!
以上(笑

いや。冗談抜きで読んで頂きたい名作です。
たった10巻。全10巻です。

こんな名作なのに扱っている書店が少ないのがネックなのですけれど、大きめの書店に行けば多分まだまだ売ってます。
是非揃えて読んで頂きたいですね。

「コミックス単位でストーリーを構成」して1冊に話の重要な起承転結全てを入れ込んでいる。
更には全体を貫く大きな物語があるので、いっきに読みたくなる。
「惑星(ほし)のさみだれ」。名作ですよ。

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