この記事は
「妹さえいればいい。」第9巻の感想記事です。
ネタバレあります。
はじめに
1~2巻の頃は単純なコメディだったのに、最近はめっきりキャラクターの重いドラマを描くようになってきたなという印象です。
ということで、第9巻の感想です。
青葉のころ・新人作家とお兄ちゃん先輩
ネットを通じて感想を発信する事の重さを改めて痛感しました。
否定的な感想というのは、こうやって作者の心を挫く可能性があるってことですね。
1人の読者としては、感想は根拠があってナンボという考えを持っています。
単純に「面白い」だったり「つまらない」だったりという感想は、僕は信用していません。
所詮は主観なのだから、発信者の好みや考え方が分からない限り、なんの参考にもならないからです。
しっかりとした背景。
何故面白いと感じたのか。
どうしてつまらないと思ったのか。
その理由に納得いかないと参考には出来ません。
だから、「つまらない」というだけの感想は、無視出来るんですよね。
自分が好きな作品を貶められていても意に介さない。
でも作者は違う。
そういった感想にだって傷つく。
最悪筆を折ってしまう。
うん。
ネット上の言葉に傷つくことは僕だって何度も経験してるので、青葉の気持ちは痛いほど理解出来ますね。
自分の作品に自信を持っていればいるほどその傷の深さは比例して大きくなるんじゃないかな。
青葉に痛いほど感情移入出来たので、余計に山県きららのやり方は賛成できませんね。
編集者としては、愚作の極みじゃないかな。
結果が分かっていて、青葉が傷つく道を選択したのだから。
中でも、おいおいと思ったのがフォローが無かった事。
劇中外でしっかりとしたフォローがあったのかもしれない。
けれど描かれて無い以上無かったとしか捉えられない。
もし青葉が千尋に出会っていなかったら。
もし伊月が青葉に激励の言葉を掛けていなかったら。
青葉は挫けて、二度と小説を書けないようになっていたかもしれない。
彼女が筆を折っていたら、きららは編集者としては失格に思えます。
そうなったらそれまでと断を下すのも編集者なのかもですので、僕の考えは甘っちょろいかもしれない。
実際、厳しい一面も「見えてきた道」で描かれていました。
「会社として、利益の見込める作家はルールを破ってでも守るが、そうでない者には慈悲を見せない」。
納得したくない考えですが、社会人として世の中を少しでも知った今では理解出来ちゃう。
ああ。そういうものだよなと。
きららもそんな「厳しさ」を示したのかもですが…。
理解したくないなぁ。
「社会の汚さ」を山県きららを通して描いていたのかもしれない。
そう感じたのです。
編集者の貌の1つとして…ね。
それとは別に伊月の精神的な強さは凄いですね。
ちっとのことで心を挫いてる僕には、彼の強さは真似できません。
これくらいの精神力・強い想いがないと作家はやっていけないんでしょうね。
凄いわ。
アニメ関連のヤバいトラブル
経験談なのだろうか…。
恐ろしい。
制作進行の大変さは「SHIROBAKO」を見て少しは理解してるつもりです。
勿論「SHIROBAKO」で描かれている以上の過酷な仕事なのでしょうから、逃げちゃう事もままあるんでしょうね。
それは誰にも責められない。
人生逃げることだって大事です。
ただ、それで進行が破綻しちゃう現在のアニメ界がヤバいんでしょうね。
どうしようもないことなんでしょうけれど。
特に作者にはどうしようもないこと。
…原作者ってこうしてみると、権力を持てない弱い立場なんだなと実感しちゃいますね。
で、おちん〇ん騒動。
あ。分かる(笑
正直に言おう。
僕だって期待してたんだ。
アニメで金元寿子さんとか加隈亜衣さんが「おち〇ちん」言うのを。
ああ。最低さ。
最低だって理解してる。
でも期待してたんだ。
男の子だもん。
それなのにアニメでは伏せられていた。
確かピー音だった。(違ったかも)
辛い。
理解出来なかった。
半年前には「エロマンガ先生」で同じテレビ局で木戸衣吹ちゃんが「〇ちんちん」言ってたからです。
放送時間が早いからなのかと当時は解釈してたのですが。
「テレビというメディアは、本やゲームといった他のメディアに比べ て、見るためのハードルが非常に低いぶん、どうしようもない馬鹿の目に触れる可能性も非常に高いのです。
たまたまテレビをつけたら目に飛び込んできた刺激的な映像に対して、前後の文脈など考えもせ ず、そこに差別や反社会的な意図があるかどうかなど関係 なく、脊髄反射で非難しクレームを入れる馬鹿は大勢います。
そしてテレビ番組は、主にスポンサー企業からの資金で成り立っている以上、視聴者からのクレームに非常に弱い。
…… たまたまチャンネルを合わせた暇人が、退屈しのぎで正義を振りかざす……テレビ業界は常にそんな馬鹿げた理不尽に晒されているのです。
テレビ局にいる友人からの受け売りですが……テレビとはメディアの王様であると同時に、暇人の奴隷なのですよ。
当たり前ですがテレビ局の人間だって、積極的に表現を規制したいと考えているわけではないのです。
誰が好き好んで、自分たちが放送する番組の質をあえて下げようなどと思うのですか」平坂読. 妹さえいればいい。 9【Kindle限定 電子特典付】 (ガガガ文庫) (Kindle の位置No.1746-1753). 株式会社小学館. Kindle 版.
こういった事情があったんですね。
勉強になるな~。
僕はクレーム入れるほど暇人じゃないけれど、馬鹿の1人には違いないから耳が痛いものです。
色々な視点を持たないとダメですね。
京の物語
千尋と同じ位今作で僕が好きなのが京。
可愛いし、共感出来るし。
良いじゃないですか。彼女。
なんだかんだ自分を否定してますけれど、僕は京の考え方って好きなんですよね。
周りと比較して落ち込む気持ちも分かるし、「自分には何も無い」って挫けるのも分かる。
でも、京って強いと思うの。
春斗が千尋に言ってましたけれど、「将来像を描けないまま、なんとなくで大学に通う」ことは決して悪いことではないと僕は考えます。
大学に通うメリットもありますし、なにより人生寄り道しちゃいけない訳ではない。
こういう余裕って絶対大事。
自分で自分を追い込んで、雁字搦めになって、逃げ道・遊びを無くすと人間崩れます。
僕がそう。
追い込んで、追い込んで、追いつめたら、心が壊れてうつ病になっちゃいました。
人生に逃げ道は必要なんですよ。
だから、今決められないから大学に通って結論を先延ばしにするのだって悪く無い。
4年間の間に答えを見つければ良いんだから。
まぁ、答えが見つからないと僕みたいなダメな人生を送ることにもなるんだけれど…。
自分が許せるなら、それもまた人生…みたいな。
なんか話が逸れちゃいましたが、京は強いです。
上司である神戸に自分の気持ちをぶつける勇気だって、なかなか出来ることじゃないし。
他人である春斗や蒼真の為に涙を流せる純真さだって美しい。
なにより、「コネではなく、自分の力で勝ち取りたい」という心意気が良いじゃないですか。
よわっちい僕だったら、コネだろうとなんだろうと職を持てるなら縋りついちゃいますね。
嘱望してる仕事なら尚更。
それをせずに自分自身の力で…とか良いじゃないですか。
そして、彼女が目指す編集者像が素晴らしい。
「作家さんと一緒に泣くことができる編集者」。
これは、先の山県きららのやり方と正反対です。
「作家1人1人の悲しみに寄り添い、我がことのように背負う」。
もし、山県がこのような考えを持っていたら、決して青葉が悲しむ事になる手段は選ばなかったでしょう。
所詮山県にとって青葉は、担当してる作家の1人に過ぎない。
青葉が悲しもうと、山県には関係が無いという考え・やり方。
京の理想像は、それを否定している。
山県のやり方に納得できない僕には、京の考えは好きになるしかありません。
どうやら彼女の決意は報われそうです。
ホッとする展開ですね。
千尋の物語
この作品の「爆弾」の中でも、個人的に一番気になってるのが、千尋の性別バレですね。
千尋は最初から伊月大好きでした。
妹だと打ち明けて、本当の家族になりたいと願っている。
けれどそれをすると、伊月の小説家としての道を邪魔してしまう。
土岐も同じ考えなんですよね。
伊月に本物の妹が出来ると、彼の創作意欲を削ぐと考えている。
だから、土岐も千尋が女性であると察しながらも、あえて黙っているのでしょう。
今回改めて、その考えが間違いでないとスポットが当たっていました。
それでいいのか伊月とも思うものの、彼の妹への執念をずっと読んできたので仕方ないのかなとも思う。
これ以外にも千尋を追いつめることが多々起こりました。
青葉も撫子もそうだし、両親に新たな子供が宿ったのもそう。
やけに今回、千尋を追い込むなと読んでいて感じたのですが…。
ついに来たか!!と。
いや~でも読めなかった。
ここでクロニカクロニクルを使ってくるとは。
アニメ版でも取り上げられていて、いやいやアニメでは必要ないでしょとか考えていたのですが、作品としては重要な位置にあったのですね。
「千尋が唯一本当の自分でいられる場所」か。
言われてみれば確かに。
伊月の前でクロニカクロニクルの「千」を演じている時だけ本来の自分でいられたんですね。
気付きませんでした。
にしても、伊月はどう反応するんでしょ。
「お兄ちゃん」と呼んでくれるなら誰でもいいとか、もう末期以外の何物でもない発言まで飛び出してましたけれど(汗
アニメが一応の成功を見て、レベルアップして、作家としても成長したと思いたい。
妹が出来たからと云って、創作意欲を無くす事なんて無いんじゃないかと思いたい。
どうなるんだろ。
誤魔化す可能性もあるから、まだなんとも言えないですが。
出来れば、誤魔化さずに真実を打ち明けて欲しいな。
タイミング的にはここしかないでしょうし。
千尋の精神的にもその方が良いでしょうしね。
次巻が待ち遠しいですね。
終わりに
長くなりましたが以上です。
最後までありがとうございました。