この記事は
「いなり、こんこん、恋いろは」第3巻の感想記事となります。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
京都弁で綴られる変身ラブコメディ
今、この漫画がとても面白い。
昨日最新3巻を購入して、早速読了した訳ですが、やはり面白い!
内容は至って平凡と言えるものかと思います。
神様から神力を授かった主人公が、その力で色んな人に”変身”して、恋だったり友情だったりを育む真っ当なラブコメディなのですから。
でもでも、すんごく面白いのですよ。
やはり基本をしっかりと押さえて、その上で独自の味付けをしているからだと感じます。
という事で、今回はこの作品のレビューです。
主に3つの恋愛が描かれていきそうな気配なので、今回はそこに着目して書いてみます。
純情という表現に方言はピッタリ!
この作品、基本線は主人公・伏見いなりちゃんと彼女が片想いしている丹波橋紅司君の初々しい恋愛模様(あくまでまだいなりの片想いの関係)を描いたものなのですが…。
ここに京都弁が凄く嵌る。
東京弁に無い柔らかさというか、人の良さが滲み出ている。
「優しく明るい元気な子」という設定が、一層引き立っちゃうくらい、京都弁がマッチしているんです。
だから、ほんの些細な事で顔を赤らめたり、もじもじしたりするいろはの一挙手一投足が必要以上に微笑ましく感じられるんですよね。
それと、いなりが決して「美人」じゃないのも良い。
お子ちゃま体型で、顔もきっと平均。そんな子だからこそ、より可愛く思えるというか。
相手の丹波橋君もこれまた良い子なんですよ。
爽やかで好青年だけれど、女子と話すのが苦手だったりと純朴という言葉がピッタリ嵌っていて、いなりが惚れるのも無理からぬと男の僕でも思える子なんです。
そんな彼がいなりと接するうちに少しずつ少しずつ気持ちが揺れ動いていって…。
でもその気持ちの根本には気づかないで、それが2人の間に見えない齟齬を作っていって…と。
あ〜、もう。やきもきせずにはいられないのですが、そこが本当に良い!
こんな2人の微笑ましい物語に、惹きこまれないのがウソってものです。
うか様の恋?
もう一つの恋が、こちらかなと勝手に思っています。
うか様とは、いなりに力を授けた女性の神様です。ナイスバディです。
この神様が、本当に人間臭いんですよね。
ゲームが大好きで、人間が大好きで、そして男神(男性神)が大嫌いで。
そんな、うか様が人間の男…しかも、いなりの(割とイタイ)兄貴に恋しちゃったかもという展開が新しいなぁって。
人間味溢れる神様の描写こそ少なくないですけれど、そんな神様視点の恋模様ってあまり無いんじゃないかなって。
単純に僕が知らない・失念しているだけかもしれませんが、そんなところが新鮮に見えて、この漫画の面白さに奥行を与えてくれているんですよね。
しかもこの恋路(?)が先行き不安なのです。
いなりに力を与えた影響で色々とうか様は危うくて、この先どうなっちゃうのか分からないという不安感を煽る描写も多々ある中で、絶対に叶わない神と人の恋愛模様まで入れて来てる気配まで漂わせていて。
人間の寿命に対して、神様の寿命はずっとずっと長い。
でも、うか様は力を失いつつあって、存在そのものが消えてしまうかもという事も考えられて。
いなりの恋は、まだまだ明るく前向きなのに対して、うか様の恋は非常に切なくて苦しい。
これを暗くなり過ぎずに、しかし丁寧に描いていて、非常に先が気になります。
友情?愛情?
三つ目がこの3巻で判明しました。
いなりの友達の墨染朱美ちゃん。
いなりとは対照的に美人でスタイル抜群の子。
所謂美少女で、そんな子がいなりの幼馴染に恋をしちゃったというのがこれです。
って書くと普通ですよね。
その幼馴染の子が女の子で無ければ。
そうです。百合ですよ。所謂。
こういうの好きな諸兄は少なくないですよね。美少女と美少女の恋。
僕も嫌いではありません。
ただ、この漫画はそっち方面に特化している訳では無いですから、これも割と真面目に描かれていくのだと思っています。
真面目に真正面から描くとなると、やっぱりちと重たいテーマ。
それをどう料理していってくれるのかという期待感で一杯なんです。
それというのも、やっぱりこの朱美が良い子なんですよ。
美人なんだけれど気取って無くて、相手の事を想えて、自分に無い部分を持つ人に普通に憧れるようなどこにでもいそうな普通の少女で。
恋愛ものを読んで、楽しめるかどうかは本当にそのキャラに感情移入できるかにかかっていると思っていて、その点どのキャラも好感情しか抱けないキャラばかりなんですよね。
だから面白く感じて、先が気になる。
この朱美ちゃんの恋もだから応援したくなるのです。
3つの恋愛劇がこの作品の本質を表している。
この作品のアピールポイントって一杯あるのです。
ですが、それを全て集約したのが、以上3つの恋愛模様に現れているんですよね。
先ずは変身ラブコメという長所。
これは当然いなりの恋の部分で重点的に描かれています。
彼女の優しさが変身能力を人助けに駆り立て、それが丹波橋君にばれかけたりなんやりしてという。
コメディになったり、2人の間を取り持ったり…。
微笑ましい笑いやハラハラとしたハプニングなどコメディ的な要素を織り交ぜつつ、純な恋愛描写も担当しているのが、このカップルなのではないかなと。
明るいだけでは無いシリアスな面は、主にうか様の恋路に表現されていて、恋愛感情そのものが彼女を苦しめているという描写。
彼女の今後やいなりとの関係等々、作品とってとっても大切な部分が、この恋路の結末に関係してくる気がします。
彼女の恋に対する決断が、全ての結末を左右する気がするのですね。
そして友情の要素は、朱美の恋で描かれるのでしょう。
いなりら女同士の友情もこの漫画の魅力だと思っていて、最終的にその関係にどう変化が生じるのかは、コレ次第。
だって、同性への恋ですからね。しかも、友達と来たもんだ。
下手すると友情関係も瓦解しかねない。
とはいえ、そんな結末は絶対に訪れないでしょうから、この危機をどういなりが、朱美が乗り切るのか。
この恋路の行く末の着目点はそこになる気がしますね。
てな事で、3つの恋愛でこの漫画の魅力を語れるのですが、とはいえ、各々の恋は独立している訳ではありません。
当然のようにそれぞれが互いに影響を及ぼし合っている訳で、作品全体でほんわかとした優しく微笑ましい作風に仕上がっていると感じます。
兎にも角にも今、絶対にオススメなラブコメディ漫画の一つであることは揺るぎないです!
4巻も楽しみにしたいと思います。
いなり、こんこん、恋いろは。 (3) (角川コミックス・エース 326-3)
- 作者: よしだもろへ
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/02/03
- メディア: コミック
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