この記事は
「週刊少年ジャンプ」の記事です。
ネタバレを含みます。
過渡期の「ジャンプ」
昨年までで中・長期連載作品が次々と終わり、遂には終わらないと思えてさえいた「こち亀」という”トレードマーク”まで失ったジャンプ。
間違いなく過渡期に入っています。
新しい芽を迎え入れる時期に来ているのです。
そんな2017年の上半期を振り返ってみます。
新芽の存在
今年に入って8本の連載が始まり、5本の連載が終わりました。
その中でも横田卓馬先生の「背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~」と沼駿先生の「左門くんはサモナー」の中期連載作品が終了しました。
この2作品が、円満なのか打ち切られたのかは不明ですが、個人的に衝撃的だったのは「左門くんはサモナー」の終了。
2016年10月に「ジャンプニューオーダーキャンペーン」として、編集部に推されていた4本の中の1本だったからです。
それから僅か半年経たずの終了をどう捉えれば良いのか。
打ち切りなのだとしたら、編集部推しであろうとアンケートを優先した結果と言えるし、そうでないのだとしたら、編集部の方針転換とも取れる。
最近の集英社の常務のインタビューでは、推しタイトルの中に「左門くん」が入ってなかったことからも、色々と想像出来るのですが、想像の域を出ないのでこれ以上は止めておきます。
「ジャンプニューオーダーキャンペーン」。
ミウラタダヒロ先生「ゆらぎ荘の幽奈さん」、「鬼滅の刃」、「ブラック・クローバー」、「左門くんはサモナー」が推されていた。鈴木常務の話では、「ブラック・クローバー」、「約束のネバーランド」と「鬼滅の刃」の3本を推していた。
さて、新連載の中でも一番の収穫となりそうなのが、Boichi(作画)×稲垣理一郎(原作)両先生による「Dr.STONE」ですね。
最近の掲載順を見ても、頭1つ抜きん出ている印象があります。
突如石化した人類というSF要素たっぷりの世界感を現実の科学知識で乗り越えようとするさまは、非常に新鮮です。
1話では不明だった人類石化についての謎解きが、本格的に行われる布石が張られており、ただのSFの域を出た作品になりそうで、ワクワクしています。
個人的にもう1本、筒井大志先生の「ぼくたちは勉強ができない」が残ったのも嬉しい限り。
キャラクターの個性がしっかりしてる上に、物語にキャラクター性が絡み合っているので、安定した面白さがあります。
丁寧な作劇が評価されているのは、非常に喜ばしいです。
一方で、田村隆平先生の「腹ペコのマリー」が苦戦しているように見受けられます。
読んでいても1話の勢いが感じられず、停滞感があります。
今期は打ち切りを免れたようですが、下期最初の打ち切りシーズンではやばいかもしれません。
覚醒した若い作品
2016年連載作品に目を転じてみます。
非常に面白くなってきてるのが吾峠呼世晴先生の「鬼滅の刃」と出水ぽすか(作画)×白井カイウ(原作)両先生による「約束のネバーランド」。
どちらも展開が早く、読んでいて非常に楽しい。
前者は、以前も書いたように1話読んだ時点では打ち切られるのではと考えていました。
なので、今の面白さは本当に予想外なのですが、もう完全に掌返しですね。
自分の見る目の無さを恥じ入るばかりです。
最近の話となりますが、煉獄杏寿郎vs猗窩座。
両陣営の高位の者同士の戦いは、物語全体の、ひいては鬼の居る世界の恐怖がしっかりと描かれていました。
その上で、それに屈しない人類の杏寿郎の格好良さが際立っていたかなと。
「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ。
老いるからこそ、死ぬからこそ堪らなく愛おしく尊いのだ。
強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない。
この少年は弱くない侮辱するな。
何度でも言おう。
君と俺とでは価値基準が違う。
俺は如何なる理由があろうとも鬼にならない」
猗窩座に放ったこの台詞が熱い。
杏寿郎をいっきに好きになった台詞ですね。
少ない出番で見事にキャラ立ちをさせ、見事に死なせた。
死を嫌う僕ですが、杏寿郎の殉死は天晴というほかありませんでした。
「約束のネバーランド」は、コミックスを買う程気に入っている作品。
やはりこちらも展開が早くて、楽しいです。
GFからの脱出の鮮やかさと思ってもみなかった鬼の襲来。
どう転ぶのか分からない展開の連続にハラハラとします。
若い作品では、この2本に加えて田畠裕基先生の「ブラック・クローバー」が牽引していくのかなと。
「ブラクロ」はアニメが控えていますしね。
個人的には、最近の温泉回が笑えて楽しかったです。
大黒柱「ONE PIECE」が停滞してるのが気がかり
1つ気がかりなのが、「ONE PIECE」。
いくら四皇を相手取ってるとはいえ、もう少しサクサクと展開させて欲しい。
腑に落ちないのが、ビッグ・マムの過去回想篇。
ただでさえ物語を止めてしまう回想を、仲間になろうはずもないビッグ・マムで865話終わりから868話冒頭まで2話ちょいも使ってまでやった理由が分からないのです。
今後描かれるであろうエルバフ編の伏線になるのか、なんなのか。
マザー・カルメルに裏の顔を持たせたこともそうですが、今のところ何の意味がある回想だったのか分からないんですよね。
ビッグ・マムに「食べられてしまった」マザー・カルメル。
この先の物語に絡んでくるのかだろうか?
若い作品が、展開を早めているから余計に停滞してる感じを受けるのかもしれません。
下半期でいっきにビッグ・マム撃破というのを期待したいところですが、流石にそこまでの進捗を期待するのは酷でしょうか。
「やらなければいけない話」がまだまだ山積してるのが分かっている為、戦争編の頃のアップテンポを望んでおります…。
円満に向かってそうな長期連載作品
「食戟のソーマ」と「火ノ丸相撲」がそれぞれ最終章を臭わせる展開です。
このまま終わるかどうかは実際は不明であり、あくまでも僕の感想の範疇を出ないのですが、どうなんでしょう。
上期では、「食戟のソーマ」はちょうど今の連隊食戟のシリーズに入ったばかりの話から始まり、1回戦を終了。
続く2回戦へと物語は進むところまで来ました。
この先に待ち受けているのが、退学か敵を破るかの二択なので、いずれにせよ否応なく物語は加速度的に進む事が予想されます。
「火ノ丸相撲」は最大最強の好敵手である久世草介との決戦の火ぶたが切って落とされました。
火ノ丸のこれに勝つと、角界への道が開けるかもしれないという一世一代の勝負。
個人的にも一度負けた相手との再戦となり、負けられない戦いになります。
「食戟のソーマ」も「火ノ丸相撲」も、どこを着地点とするかで終わるか否かも見えてくるのですが、その辺不明瞭です。
前者は十傑に入る事が目的では無いし、後者は角界に入るまでの漫画という訳でも無い。
続けようと思えば、この先もプロとして続けられる可能性を秘めています。
ただどちらも「学生篇」の1つの区切りが近づいている事は確か。
その先に進むのか否か。
下期で答えが見える気が致します。
こちらは正真正銘クライマックスなのが「銀魂」。
とはいえ、もうちょっと終わるには掛かりそうな展開ですね。
畳みかけている様で、広げている感じで。
地球がいよいよもってピンチな局面なので、ここを切り抜けつつ、銀時と虚の最終決戦という形でしょうか。
今年中に終わるということは無さそうです。
帰って来た作品と帰ってこない作品
「HUNTER×HUNTER」がいよいよ帰って来ます。
長期休載を挟みつつ連載を続けている作品は他にもありますが、コミックスの高い売上部数を保ったまま…つまり、人気を維持したまま続いているのは、この作品くらいなんじゃないでしょうか。
どんなに時間がかかっても、最後まで追っていくという濃ゆいファンが付いているのでしょうね。
編集者も驚愕したという物語が展開されるという噂だけに、僕も待ちわびています。
「ワールドトリガー」はどうしちゃったんでしょうか。
続報も無く、休載が続いています。
そんなに体調が芳しくないのか…。
僕も体調不良が続いており、他人事では無いというか…。心配です。
下期で戻って来て欲しい作品ではありますね。
主軸が面白い
「ハイキュー!!」、「僕らのヒーローアカデミア」は鉄板の内容でした。
前者は全国大会二回戦にコマを進め、良いテンポで試合を描写しています。
日向たちを進級させないのであれば、漫画にとっても最後の大会になりますが、今のところ終わる気配はありませんね。
もし、進級させるのであれば、この二回戦がキーになるのかもしれません。
ここで負けて(負けるには「相応しい」強敵ですし)、雪辱も兼ねて2年目に入るという展開もありっちゃありですよね。
スポーツ漫画はどうしても「1年間」を濃密に描き過ぎて、巻数を重ねてしまう嫌いがあります。
その為、多くの有名漫画「SLAM DUNK」も「黒子のバスケ」も進級せずに物語を畳む傾向が多いです。
あだち充先生の「H2」のように3年間を30巻台で終わらせるという離れ業をやってのける作品もありますが、もし「ハイキュー!!」が2年生編に入るのであるなら、良いタイミングではあるのかなと。
ちょっとその辺注目しつつ、二回戦を愉しみたいですね。
「ヒロアカ」は、巨悪との対決が迫っています。
プロヒーローとデク達学生、警察の混合チームは、少女を救い出せるのか…?
ワン・フォー・オールを後継者候補だったミリオとの間で何かあるのか。
サー・ナイトアイに認められることが出来るのか…。
見所の多いシリーズとなっており、緊迫感もあります。
読んでいて単純に面白い。
「ワンピ」、「HUNTER」に次ぐこれら2本がどっしりとしているから、そんなに「過渡期」って気がしないんですよね。
「シューダン!」最高です
最後に横田卓馬先生について書いてみます。
先ず、鈴木常務のインタビューの一部を抜粋します。
「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」少年コミックの変容(『創』5・6月号) (創) – Yahoo!ニュース
このところ『ハイキュー!!』にしろ『僕のヒーローアカデミア』にしろ、その作家にとって2本目3本目の作品で大ヒットするケースが目立つ。
藤巻さんもデビュー作の『黒子のバスケ』が大ヒットしたわけですが、今回の2作目も期待できる。
1作目を終えた作家が次をめざしてコンペを行い、2作目3作目でさらにヒットを出すという成長スタイルはこれから増えていくような気がします
「背すじをピン!と」はコミックスの売上が不調でした。
オリコンの推定売上部数では、4巻の約3.3万部をピークにし平均約2万部。
アンケについては不明ですが、こういう部分から編集部的にも「2本目、3本目ブーム」もあり…
連載中から「次に挑戦してみよう!!」ということになったのかもしれませんよね。
表紙から最高かよ。
男子の部屋に入っても、自然とベットに座るとことか、良すぎの回でした。
これはもう練りに練った第2話でしたね。
男心をくすぐるヒロインの仕草を研究しまくった成果がこれでもかと出ていました(断言)
連載終了から4か月での帰還は、「ジャンプ」の長い歴史でも殆ど無いとかなんとか。
その「シューダン!」ですが、2話目で「こう来たか!!!!!」と。
終わりに
ということで、「ジャンプ」の上半期を振り返ってみました。