「チェンソーマン」・「neO:lation」・「獄丁ヒグマ」の第1話感想

この記事は

「週刊少年ジャンプ」の新連載の感想。
ネタバレ含みます。

2018年も終わるね

ここ数年毎年のようにこの時期になると「1年早い」って言ってる気がする。
芸が無いというか、何というか。
ボキャブラリーが乏しいと、本当に駄目ね。

そんなことは置いといて、久しぶりに「ジャンプ」の新連載についての感想を書いていきます。

「チェンソーマン」

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©藤本タツキ

編集部は今はダークファンタジーに嵌ってんだろうか…。
これまではダークファンタジーの皮を被った王道ファンタジーばかりでしたが、この漫画は正真正銘のダークファンタジーですね。
ダークファンタジーの定義って何さってツッコまれると、閉口しちゃうんですが…。

こうなんていうのかな。
救いが無いというか。
シリアスでグロテスクな描写が主体になってるから?
そんな感じ。

個人的な所感では、乗り切れなかったです。
悪魔のいる世界で、悪魔狩りを生業とするというのは手垢の付いた設定ですけれど、チェンソーマンの設定はユニーク。
ファンタジーとはかけ離れた近世の器械を武器として戦うことで、グロテスクな戦闘を意味ある描写にしてるのかなと。
「グロやりたかったから、ただ単にグロ描写描きました」という本音を「チェンソーを武器にしてるから、必然グロ描写になるよね」という建前で隠してるように見えて、ギリギリ「少年漫画」に落とし込んでいる様に感じました。
外見のデザイン含めて非常に特徴的で、嵌る人は大いに嵌るんじゃないかな。
逆を言えば、嵌らない人は全く嵌らなくて、僕がその口。

今後は、間口を広げる目的を主人公に持たせる事が出来るかが鍵になりそう。
より少年漫画らしい、多くの人が興味を引く目的を作れると、ユニークな設定と相まって人気が爆発しそうです。

第3話で期待値がぐっと上がった作品。
良いキャラ出て来たわ。
マキマさんを巡って本気の喧嘩を繰り広げて行って欲しい。

「neO:lation」

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©平尾友秀/依田瑞稀

結構好き。
真っ先に打ち切られそうではあるけど ^_^;

クラッカーをちゃんと犯罪者と定義して、主人公に正義を主張させない所が良いじゃないですか。
人の頭を簡単に踏んづけたりとやってる行為も外道入っていて、ヒーロー的な行為をしてる割にはそうは見えない所も良い。
しっかりと割り切って「悪人」を描いている所が好感持てます。

会話も面白い。
ネオとヤクザの初対面時のやりとりは、若しかしたら有り触れたウィットなのかもですが、僕にとっては新鮮でしたので非常に楽しめちゃいました。

欠点があるとすれば、読切っぽい所。
あまり先が気にならない。
綺麗に纏まりすぎていて、第1話だけで満足しちゃってる部分があります。
唯一どうなるのか気になってるのが、「今後クラック行為でどう悪を懲らしめて行くのか」です。
同じ手法は2度はなかなか使えないだろうし、かといって、豊富なバリエーションがあるようには思えない。
ここに広がりを見せて、色々なパターンで話を作れるんだよということが見えてくると、連載漫画として面白くなっていきそうです。

今回の主旨とは外れますが、第2話良かったです。
1話より良かった。
ネタ的にはネオ自身同じと認めてはいましたが、結末までの持って行き方で工夫があって、より面白く読めました。

「獄丁ヒグマ」

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©帆上夏希

デザインが物凄くダサいので、期待感を持てなかったのですが、読んでいて一番ワクワクできたのが今作。
ちょっとワクワク感では頭1つ抜けてた。

ストーリーも設定も既視感いっぱいの王道ものなんですよね。
新鮮味では「チェンソーマン」に圧倒的に劣るし、会話の面白さも「neO:lation」に及ばない。
でも、キャラクターがそれらを補って余りあるほど非常に良く練られていて本当に凄い。

主人公のヒグマとヒロインのアヤハ。
今後この2人を軸として進んでいくのでしょうけれど、漫画の顔としてこれ以上無いほど1話でしっかりと描かれていたし、なにより設定・内容にリンクしていました。

アヤハは正義感の強い女性です。
曲がった事を許せないというのを信念としてる。
酔っ払いサラリーマンには、当事者じゃなくったってイライラしますよね。
でも、仲裁に入る人はなかなかいません。
傍観者効果という集団心理の1つですけれど、単純に「巻き込まれたくない」っていうのがあります。
その中でも、初動が遅れたとはいえ、行動に移せたのは、彼女自身の信念によるところが大きいのでしょう。
動き出しが遅れたことを素直に詫びたり、どこまでも曲がったことや理不尽を許せないというのが表現されています。
(すぐに動かなかった理由は説明がありませんでしたが、「他人に近寄って、モノを盗むことを嫌った」と解釈)

彼女の怒りは、そんな信念に関する事でした。
信念である「曲がった事をしない」。
それを疑われても、怒ってないんですよね。
信じてくれない事に対して無闇矢鱈に怒る訳では無く、冷静に信じて貰うように努めてきた。
病院、カウンセリング、そしてヒグマの下を訪ねたこと。
これらの行動が、裏付けてるように見えました。
普通ならムカつきません?
絶対にしないと誓ってる事を疑われて、信じて貰えないんですから。
外見しか見ない人間に対して「ふざけんな」ってなってもおかしくはないのに、彼女はそうはしなかったんだろうことが窺えます。
自分に対する理不尽には、拳を振り上げないのでしょう。

けど、他人の信念が曲げられたら、ムカつくんですよ。
家族想いの兄の姿で、家族に手を挙げる。
それがどうしたって許せなかった。
だって彼女は正義感の強い女性だから。

自分がされたら耐えれるけれど、他人の信念が曲げられてるのを見たら許せない。
心からの怒りが表現されてました。

アヤハを表現する怒り。
これを最大限引き出しているのが、ヒグマのキャラクター。

先ず、「怒らないヒグマ」の説明が上手いです。
自分に向けられた怒りはさらっと流せるというのが、彼の性格を語る上で絶対に説明しなければならない点です。
バス内でサラリーマンに絡まれるヒグマ。
あまりにも理不尽だし、普通ならムカつきますよね。
(待て。これは僕が小物なだけか?さっきからムカつきますよねばかり言ってる。カルシウム足りてないな)
その場で言い返せるかどうかは別として、間違いなく腹に据えかねる行為を受けたのです。
アヤハの前で「むきーっ」となってもおかしくないのに、へらっと笑える。
もうこれだけで充分ですよね。
やせ我慢だとか、人の感情に疎いというのでは無くて、「自分への怒り」は些事なんだと分かります。

そんな彼は、アヤハから2つの叫びを聞きます。
1つは「他人の物を盗んだりしない」。
曲がった事をしないという信念を貶められているのです。
でも、ヒグマは怒りません。
亡者がアヤハの信念を貶めているのは事実なのだけれど、彼女自身がそれを心の底からは憂いてないからなのかな。
もっと辛いことが彼女を苛んでいるからなのかなと。

続いて、「これ以上兄貴の手を汚させてたまるか」です。
今度は激怒します。
へらっと笑っていた彼はどこに行ったんだろうってくらい全力で怒るんです。

ヒグマは、他人の信念が貶められると怒るとなってますが、「自分のことでは怒らない」を説明出来ていて、始めて納得出来ることです。
それを説明した上なので納得ですし、なによりも、ヒグマが怒った事で、アヤハの怒りが本物であることも理解出来るんです。
アヤハが他人のことで本気で怒れる人なんだと。
最初の件でヒグマが怒らなかったことで、アヤハにとっては、
自分が貶められること < 兄貴が貶められること
という方程式が成り立っているんだという事が証明されています。

アヤハがヒグマのキャラクターを立てていて、ヒグマがアヤハのキャラクターを立てている。
相互に干渉しており、それが第1話のドラマ性と魅力を形作っている。
キャラクターの力で話を作っているところがとっても魅力的に映ったのです。

アヤマが獄卒人に(本人の同意も無く)されたのも、ヒグマと同じ性質=他人の為に動けるからなのでしょう。

キャラクターの魅力は、少年漫画では特に大事になって来ます。
魅力的なキャラを作り、そのキャラを活かした物語を組めたところで、既に大成功なんですよね。
少なくとも僕にとっては。

是非頑張って欲しい漫画です。

終わりに

第1話だけでは「獄丁ヒグマ」が抜きん出てますが、他2作品もどんどん期待値高まって来てます。
ここまで新連載全てが「当たり」なのは、一体いつ振りだろうか…。
若しかしたら初めてかもしれません。

この3本が毎週の「ジャンプ」の楽しみを上げてくれることを願って、終わりとさせて頂きます。

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