この記事は
「僕らはみんな河合荘」の感想です。
ネタバレあります。
遂に完結!!
大いに笑わせて頂いた「僕らはみんな河合荘」の最終第11巻を読みました。
感動の!!って訳では無く、最後まで「らしい」残念さを振りまきましたね。
まさかキスシーンすらなく覗かれて終わるとは(笑
あまりにも残念過ぎるw
今回は完結記念として、作品全体を総括した風感想を書きます。
この漫画にテーマなんて深いこと存在したの?
この漫画を「テーマは何だろう」と沈思黙考しながら読んでいた剛の者はどれくらいいただろうか?
僕なんかアホだから、残念な変人達が織りなす日常としか捉えておらず、ゲラゲラと腹を抱えていた記憶しかありません。
テーマなんて考えもしてこなかった。
だって、大事なクライマックスまでもが、あれですよ?
折角良い雰囲気でお互いの本音を言い合って、夕焼けをバックお互いの肩を抱きつつ、顔を寄せていたのに。
遂にキスシーンがドキドキしてたのに。
まさかの全員に覗かれているエンド。
これにはズッコケました。
しかも、ただオチを着ける為に唐突に住民に覗かせていた訳じゃない。
宇佐が頑張って独白を続けるバックで蠢く人影が。
具体的には64ページ3コマ目から既に”連中”が覗きに来てるんですよねw
その2ページ後の1コマ目の「橋の欄干の間から宇佐達を見下ろす視点のコマ」は「”連中”が見てますよ」ってアピールする意図があるんですね(多分)。
初読では、謎視点の俯瞰コマだな~くらいにしか考えてませんでしたが、しっかりと意味があったとは。
周到に伏線(笑)を張った上でのオチなので、今作がどれだけ「残念なラブコメ」に比重が置かれていたのかが見て取れます。
このようにちょっと変わった住民同士が残念な日々を送る「笑える漫画」としての側面しか捉えて来なかったのです。
そんな中、最終回で宇佐が見開きでこう言ってます。
「いろいろ変わってくけど ずっと変わらない2人になりたいって思うんだ」
これって、作品のテーマですよね。
唐突に真面目な雰囲気でテーマ性が描かれてきたので、正直戸惑いました。
「え?そんな漫画だったの?」みたいな。
けど、この台詞を吟味してみると、「あ~そういうことなのかな?」みたいな解釈が出来ました。
変わっていくこと。
これは簡単です。
互いの関係性ですよね。
シロさんと麻弓の関係性も変わったし、宇佐と律の2人も変わった。
少しずつ少しずつ変わっていったものです。
では、変わらないことって何だったのか?
変わらない2人とはどういう意味?
この答えにアプローチする為に、住子さんの言葉を考えました。
住子さんの贅沢な人生
ほんの少しでも、他人の人生の1ページに加わったのならば、それは凄いことです。
人の記憶なんて儚いもの。
よほど印象に刻まれない限り、会わなくなると名前すら思い出せなくなります。
「ふとした瞬間」にすら出て来ない人は誰しもいっぱい居ますよね。
だから、「沢山の人生の欠片にちょっとだけ登場する」のってとても贅沢。
光栄な人生とも言えるかもしれませんね。
んじゃあ、住子さん自身が強烈なインパクトを住民に刻み付けるようなキャラかというとそうじゃないですよね。
本作では数少ない常識人で通っている住子さん。
河合荘住民に限定すれば、唯一の普通人。
決して彼女の個性が理由で、「沢山の人生の欠片にちょっとだけ登場する」訳ではありません。
実際、住子さんがしてることは、あまりにも日常風景。
「美味しいご飯を作って、いってらっしゃいとおかえりを言うだけ」。
「迷ったり立ち止まってる」人を”前に歩かせる”には、積極的に背中を押す事だけが全てじゃないです。
住子さんのように、何も言わずにそっと静かに支えてあげるだけというのも、1つの方法ですよね。
説教とかアドバイスとか求めていない。温かいご飯と何気ない挨拶だけで、心が軽くなる事ってあります。
結局は、自分自身で「前に進もう」と思わなきゃ、誰が何言っても意味ないんですよね。
後押しは出来ても、無理矢理に引っ張ることは出来ません。
例え出来たとしても、またすぐに歩みを止めちゃう事でしょう。
では、どうしたらいいのか。
その1つのやり方が、住子さんが、河合荘がしてきたことなのでしょうね。
愛美の物語が分かりやすい。
番外編は3本とも1つの共通項がありました。
彩花と犯罪者彩花父は、彩花の本音が少しだけ2人の関係を変えました。
高橋は、取り繕うばかりで微妙になっていた恋人との関係を本音をぶつけることでやり直した。
そして、愛美。
彼女が人生に迷った原因は、降格した事でも、仕事でミスした事でも、火事にあったことでもないですよね。
何かあった時に、本音をぶちまけられる場所と相手がいなかったこと。
だから、住子さんは河合荘という場所を提供しました。
「迷いを抜け出すやり方」に自分で気付いて欲しいから、何も言いません。
ただ、温かいご飯と温かなあいさつで、リラックスさせて環境を整えてあげます。
住子さんの仕事はこれだけで、ここからは河合荘の出番です。
河合荘にのさばる変人どもが勝手に本音を引き出してくれます。
リラックス出来る場で心が裸の時に、ひたすらに本音をぶつけられたら本音で返したくなりますよね。
言いたい事言ってスッキリ、デトックス。
心が軽くなって、自分で再び歩き出したら、「じゃあ、またね」と優しく送り出す。
3本の番外編に共通してるのは「本音をぶつけること」。
愛美の物語はとっても分かり易くて、綺麗に住子さんがしてきたことを浮かび上がらせていました。
変わらないこと
ようやく最初の疑問に回帰します。
「変わらないこと」は「本音を言い合えること」と解釈しました。
確かに本音を曝け出しまくってますからね、河合荘の連中はw
宇佐とか「実はドMなの?だからシロと気が合うの?」ってくらい、麻弓とか彩花に向かって普通だったら言えないような本音を言いまくって来ましたからね。
言う度に手痛い報復にあってきてるのに、めげずに心に刺さる言葉の矢を放ち続けてきた。
最終回での宇佐の律への本音もまさにそう。
「エロイこともしたいです」とかぶっちゃける必要のない事まで本音で語っています。
本音を言い合っても続いていく関係って貴重だし、記憶にも刻まれますよね。
そういう関係の人って、きっと忘れない。絶対に覚えちゃう。
そんな人間ばかりが集まる場所が河合荘。
そりゃ「沢山の人生の欠片にちょっとだけ登場する」のは道理ですよね。
まとめ
最後の最後まで笑い転げた漫画。
何故笑えるのかって考えたら、やっぱり「本音を言い合ってるから」にぶつかるんですよね。
結局どう捉えたところで、「本音」というキーワードに辿り着いて、全体を貫くテーマにも直結していたのかなと思いました。
なんにせよ、最後まで全力で楽しめました。
この漫画は、間違いなく僕のこの先の人生にもひょっこりと顔を出す存在ですね。
永久保存決定です。
余談。
酒に酔って、本音で駄々捏ねたり、のろける律がくっそ可愛かったです。