「るろうに剣心 最終章 The Final」感想

この記事は

「るろうに剣心 最終章 THE FINAL」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

1年の延期を経て無事に公開と相成ったわけですが、東京・大阪の大都市圏を含む1都4県で緊急事態宣言が発令。
宣言対象地域では、映画館が休館してしまった為、興行的に割を食ってしまうことになりそうです。
この憤りはどこにぶつければよいものか…。

もしかしたら、6月4日に控える「The Biginning」は延期になるかも……。

はぁ。

感想です。

公開順、逆の方が良かったのでは⁉

最終章として2部作の公開となった「るろ剣」。
それぞれのサブタイトルから変だなぁと思いつつも、てっきり「人誅編」を2回に分けてくるのだと予想していたのですけれど違ったか。

今回が「人誅編」で、「The Biginning」が「追憶編」なのですね。
なるほどなと。
綺麗な分け方だと思いました。

ただ、それならば「The Biginning」を先にした方が良かったのでは?

どうしたって薫達に巴との過去について話すシーンは必要です。
実際この映画でもそこはカットされること無く存在しました。
本当に必要最低限のことのみ切り出してダイジェスト感覚で纏められていましたが、それでも全容を把握するには十分な分量でした。
観客が「あれ、これThe Biginning見る必要無くね?」と思わないのかな。
少なくとも僕は思っちゃいましたけどね。
原作既読なので余計に。

ド派手な「人誅編」。

エンタメに振り切ってきたなぁというのが総括でしょうか。
もうこの言葉だけで感想の全てとしてもいいくらい。

そもそも「人誅編」って、どちらかと言えば地味なんですよね。
派手さの対極にいるし、「剣心」の根幹に根差したストーリーなのでどこまでも重たくてシリアス。
薫の死からの剣心ダウンは、作者の和月先生をもって「(剣心が落ち込み過ぎて)少年漫画の主人公としてどうなんだ」的な事を言うほど。
剣心が落ち込んでる期間が長すぎて、シリーズの半分以上落ち込んでるんじゃないかと錯覚するほど(それは無い)

これまでの実写映画の色とも当然異なってるし、暗く淀んだ空気の映画になるのだろうかと思っていたら…ド派手だった(笑

とはいえ、原作を大きく脚色していたわけでも無い。
勿論構成等はいじくっていましたが、概ね原作の描写通り。
では何故派手だという印象を持ったのか。
理由は中盤にあった「東京大空襲」です。

縁ら一派が闇夜に紛れて黒い気球で登場するのは、原作通り。
けれど、そこから「人誅」の紙をばらまき、空から町を焼き払うなんて展開は原作にはありません。
恐らく錯乱した鯨波が暴れまわって弥彦・剣心と戦うエピソードをアレンジしたのでしょうけれど、これどうなんだと思いました。

「人誅編」のテーマは、剣心への復讐です。
終盤で縁が「お前が作り上げた町も復讐対象だ」的な事を言っていたので、作中ではしっかりと道理が説明されていたのですが、本来の主旨から言えば「町壊す理由無くね?」となります。

絵的な派手さを求めた上の演出に見えてしまって、テーマを蔑ろにしてる気がしてしまったのですね。

もう1つ、エンタメに振り切ったと感じたのがキャスト。
活躍するキャラがおかしすぎる(笑

メインキャラである左之は、縁にボコられただけ。
3代目の弥彦は、まぁ仕方ないとして、蒼紫は何しに出てきたのん??
東京には大麻をやりに来たのでしょうか()
原作由来の格好いいセリフを放ったものの、雑魚を蹴散らしただけでバトルの見せ場は終了。
爆破に巻き込まれた住人をかばって負傷退場。
原作のような薫の死体トリックを破ったり、外印や朱雀を倒すなんてことも無い。
何のための登場だったのか謎。

で、代わりに大活躍したのが何故か操というね。
「京都編」の頃から比べると、土屋太鳳さんは女優としていっきに躍進した感がありますからね。
大活躍させたかったのかなとw

それと宗次郎。
登場した瞬間「は???????」ってなったよ。
分かる分かるよ。
神木さん演じる宗次郎は、原作ファンからも好意的に受け入れられてましたから。
僕もナイスキャスティングと今でも思ってますよ。
でもさ、必要?
「人誅編」に宗次郎。
なにか出てくる必然性とか重大な役回りが与えられていれば別ですが、呉黒星の部下を薙ぎ払う役とか要らんでしょ。

人気キャラ、人気の役者さんを全面に押し出したキャスティングは、商業主義的だなぁと鼻についてしまいました。

シンプルな方向でアレンジをすべきだったのでは

大衆向け娯楽エンタメ大作という方向性の下で製作されたのでしょうから、この手のアレンジは必然とも言えます。
1本の映画として、単純に派手であるし、原作のテーマを捻じ曲げたという訳でも無いので原作ファンとしても一定の満足感は確かにありました。
けれど、根本から企画を見つめなおして、シンプルな方向性のアレンジで臨んで欲しかったという気持ちもあります。

今回の映画では、原作以上に縁以外の一派は不要に思えました。
京都編との繋がりだって、バッサリと削っても良かったでしょう。
外印は、実写映画版では1作目で何故か観柳に雇われていたため、今回出演できなくなってしまってましたしw

縁から上海マフィアのボスと言う肩書を削いで、画面の派手さの為に用意されただけの一派も全員首。
復讐鬼・縁がたった1人で剣心一派と戦うというシンプルな構成で良かったのではないか。

これは、和月先生が後に考案されていたリファイン案であり、OVA「星霜編」の構成とも一緒。
縁が、ボロボロになりながらも左之を屠り、蒼紫を倒し、斎藤を退ける。
最後に剣心と戦うという流れなら、それぞれのキャラに見せ場を作れますし、演出次第で相応の派手さも生み出せる。
なにより縁の復讐と言う動機が克明に打ち出せるので、良かった気がするのです。

あとは、原作通り剣心の心を折って廃人化することを目的とするのか、はたまた、OVAのように剣心を殺すのが目的なのか。
映画では正直どっちなのかブレブレだった。
廃人化したいと言いつつ、薫を誘拐しただけだし、東京を焼き討ちしたら流石の剣心だって死んでても可笑しくない訳で。

尺のことを鑑みれば、採りうる選択肢は1つしか無い訳ですよ。
シンプルに殺しにかかる以外に時間内に収められないからね。
やはりシンプルな方向に舵を切るべきだったのではないか。

アクション超大作という前提を捨て去ることが出来なかったが故に、歪な面が目立った1本でした。

終わりに

批判ばかり書いてしまいましたが、とはいえ、決して悪い映画だったとは言えないんですよね。
これでもまだこのシリーズは「漫画の実写化」としては成功の部類だと思ってますし。

取り合えずは、縁役の新田さんの熱演は必見の価値ありです。
佐藤剣心との最終決戦は、迫力もクオリティも尺的にも満足いく出来でした。

 

それにしても、張はなんで出てきたの?
縁に殺されるためだけに出てきたのだろうか…。不憫な奴。

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