「るろうに剣心‐明治剣客浪漫譚・北海道編‐」第4巻感想 石動雷十太と凍座白也に関する一考

この記事は

「るろうに剣心‐明治剣客浪漫譚・北海道編‐」第4巻の感想です。
ネタバレあります。

書店が混んでたよ。

外出自粛中に何出歩いてるんだと怒られそうですが、13日に書店に行ってきました。
流石にSNSに上げられていたような光景程では無かったですが、レジ待ちはしっかり出来ていて、殆どの人が「鬼滅の刃」20巻を持っていました。
数字上では人気のほどが窺えてましたが、実際に売れてる瞬間を見ると実感具合が違いますね。

瞬間最大風速的には、恐らく出版史上最大になるんじゃないかな。
アニメ化前が「売れてなさ過ぎた」こともあって、信じられないほど部数を跳ね上げましたね。
凄いなぁ。

まぁ、スポーツ紙を賑わせている「鬼滅新刊を求めて開店前に並ぶ客」の何割かは転売ヤーぽいけど。
くれぐれも転売ヤーからは買わないでくださいね。
20巻の初版は280万部です。
累計が6000万部なので、単純計算で1巻あたり300万部。
転売ヤーさえいなければ、殆どのファンが普通に入手できる部数です。
集英社も重版はすぐにかけると対応策を発表しています。
もし手に入らなかった人は、読みたい気持ちを少しだけ堪えて、待ってみてください。

「定価より高くてもすぐに買って読みたい。お金の問題じゃない」という貴方の気持ちは尊重されても、「転売ヤーが儲かること」は世間的には尊重されません。

何の話してるんだ、僕は。
違うでしょ。
「るろ剣 北海道編」第4巻の感想を始めます。

石動雷十太と凍座白也

かつて石動雷十太という敵がいた。
殺人剣至上主義を掲げていたにも関わらず、殺人を犯したことが無い。
剣心に小さな傷1つを負わせた程度で大喜びし、片手だけであっさりと倒される。
往生際悪く弥彦を人質にするも、弥彦の気迫にビビってしまう。

斎藤には「愚物」と蔑まれ、今の弥彦には「あれ」呼ばわり、作者にすら「情けない小心者」と切って捨てられた男です。
こうして書くと哀れ過ぎる(笑
どんだけ和月先生に嫌われてるんだw

デザイン面を含めて反省されることの多い和月先生ですが、それにしても雷十太に関してはボロクソな評価を下してますね。
改変の多いアニメ版では、殆ど原形を留めないくらいキャラクター面・ストーリーを大幅に変えられてました。
和月先生は、東京編に関して「シナリオを詰め込み過ぎ」と苦言を呈されたこともありますが、これに関しては異論は無かったんじゃないかな…。

兎角、明確に「失敗」の烙印を押された雷十太。
凍座白也は、その雷十太のリボーンではないかと感じた次第。
雷十太を構成していた2大要件について、凍座はどうなのか見ていきます。

知的マッチョ

先ず、雷十太のキャラクターの根幹をなしていた「知的マッチョ」という要素。
雷十太では、残念ながら回を重ねるごとに失われていった要素ですね。
現状、凍座はこの要素を持ち合わせていると思うのです。

闘っている最中にのみ尋問に答える。

作中ではさらっと流されてますが、これはかなりの高等技術です。
相手が格下ならばいざ知らず、相手に剣心を名指し。
自分よりも格上であることを認めた上で、その闘いの中で尋問に答えるというのです。

闘いだって頭を使います。
自分よりも強ければ尚のこと、考えながらでは無いと闘えないでしょう。
戦闘で頭を使いつつ、質問にも答えるというのはマルチタスクが要求されるところなのです。

そんな中でも彼はしっかりと尋問に答えていました。
しかも、単純に聞かれたことを返すのではなく、手の内を必要以上に明かさぬようにしている点もポイント。
本拠地の場所を聞かれた際、詳しい場所を教えてしまうといくらなんでも不利になるのは目に見えています。
阿呆ならば詳細を教えてしまう処、彼はしっかりと濁して回答しているんです。
質問の内容を一度咀嚼して、考えてからの発言だと分かります。
雷十太には到底出来ないことですね!!

行動理念

理念についてはどうか。
殺人剣を標榜しつつ、殺人を犯したことが無いという矛盾を抱えた雷十太。
雷十太が失敗とされる2大要因の1つですね。
対して凍座は、猛者になるには地獄を経験しなければならないと説いています。
そんな彼が、地獄を見たことが無いとなると、雷十太を笑えませんよね。
けれど、そうではないことが明確に描かれてました。

元々「惨めなくらい、死にたくなるくらい」弱かったという凍座。
自己評価が低いというのではなく、文字通りに取って構わないと思うの。
そこから何度も生死の狭間を彷徨って、強くのし上がってきたと。
これも事実なのでしょう。
死の淵から復活する度に強くなるというサイヤ人みたいな特性を持っていると証言がありましたし、一兵卒レベルから部隊将まで上り詰めたらしいですから。
剣心に敗れた後「そのまま死んでほしい」と身内から煙たがられていましたが、やがて組織では抱えられなくなるくらい強くなることを懸念してるんじゃないかな。
このように他の人間に証言させることで、凍座の半生が壮絶であったことが証明されてます。
僕ら凡人からしてみれば、地獄と言っても過言ではない程の人生ですよね。
それでも奢らず(?)「自分の見て来た光景(死に物狂いの武者修行の日々)は、地獄と呼ぶには温い」と言う凍座は、決して雷十太のような口先だけでは終わらないと想像できます。

総括

かように2大要件とも凍座は持ち合わせており、しかも現時点では雷十太のようなことにはなってないことが理解いただけると思います。
「剣心」最大の失敗作への再挑戦が凍座で行われているのかもしれません。

笑えた小樽編

いや~、今回はギャグがキレッキレでしたね。
剣路が眠っている剣心の顔に濡れた布を被せたところは、不謹慎ながら笑っちゃいました。
濡れてると顔にべっとりと張り付いて、冗談ではなく窒息するほど危険なことですので、良い子は真似しちゃダメだぞ。
この時のようにシリアスな中に笑いを含む手法は、小樽に入ってから本領を発揮していたかなと。

量産剣の出所を巡って聞き込みするシーンは、非常に楽しく読みました。
コマ割りもテンポが良くて、最終的に役人に行きつく所は爆笑。
結局ループして、出所不明になる点含めて笑いにしつつも、実質シリアスなのも巧いです。

剣心の見立て通り、出所を簡単に割り出させない策略なのだとしたら、雅桐なる人物は相当なキレモノ。
戌亥番神戦で恵から「一番の馬鹿」という勲章を授かった左之助とは相性が悪そうです。
ここは阿爛の出番かな。
ちょうどアの三馬鹿は、どう見ても重要な手がかりを得そうな別行動を取ってることですし(笑
港であれやこれやと深入りして、気づいたら雅桐の懐に潜り込んでいたという展開になりそう。

終わりに

面白いの一言ですね。
話の構成、コマ割りと色々な面で工夫が施されていて、面白さを加速させてくれる点が凄いわ。
特にコマ割り。
単純にならないよう、それでいて、読みやすいよう視線誘導が完璧に計算されているから、コマの形を見てるだけで楽しくなってくる。
門外漢ですので専門的なことは語れないのですが、ページを捲るたびに「このページのコマ割りスゲェ面白い」ってなりました。

話の構成もまた巧すぎです。
シリアス一辺倒だと読んでいて疲れちゃうので、要所要所でコメディを挟んで、読者の緊張を緩和させてくれる。
小樽に入ると、コメディ調で処理しつつも、裏で計算高い策略が巡らされていることを匂わせたりと剛柔織り交ぜて飽きないようになっている。

やっぱり「るろ剣」大好きだなと思わされました。
第5巻も楽しみです!!

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