「鬼滅の刃」の総括。「面白くない」という第一印象を覆してくれた印象的な作品

この記事は

「鬼滅の刃」の感想です。
ネタバレあります。

第一印象は悪かった

「鬼滅の刃」が最終回を迎えました。
最終回はセンターカラー。
子孫が繁栄していたり、生まれ変わっていたり。
現代ではあの死闘が「作り話」と言われているほどに幸せな日常を描写しての締め。
続きなど作れないほど綺麗な終わり方でした。

個人的に一番グッと来たのが、産屋敷輝利哉(恐らく)が「日本最高齢記録」を更新したという点。
無惨を斃したことで呪いが解けるのかがイマイチ定かでは無かったのですが、無事に呪い(短命の病)は克服出来たようで。
ある種一番の被害者と感じていた彼の一族が無惨から解放されたことが分かったのが、とっても嬉しかったです。

そんな訳で、今では毎週連載を楽しみにするくらいには好きになった本作。
ですが、第1話時点での感想は悪いものでした。
一番最初に本作の感想を書いたのは、以下の記事になります。

私的ジャンプ・ニューオーダー・キャンペーン

同じことを繰り返しますが、あまりのモノローグの多さに違和感を覚えたのです。
漫画の描き方系のハウツー本には、一般的に漫画は絵で説明するように書かれています。
セリフに依存することなく、絵で状況を理解させるべきだと。
これに倣うと、第1話はモノローグに依存してるなと感じたのです。
今読むと全くそうは感じないのが不思議なのですが、当時は何もかも文字で説明しちゃってるなと思ってしまったんですよね。
漫画というよりも紙芝居を読んでいる感覚に近かったのです。

作風も暗く、この点も僕の好みとは違っていました。
勝手に短期で打ち切られるだろうと判断していました。

僕の印象を覆した3つの出来事

そんな僕の印象を最初に変えたのが、善逸でした。
本格的に登場したのが「WJ」2016年30号掲載の第19話から。
騒々しく、恐怖心を微塵も隠さない正直者。
画面がいっきにうるさくなりましたよね。

こいつ面白いキャラしてると思ったのですよ。
善逸のお陰でコミカルさがいっきに増して、グッと読みやすくなりました。
20話からの「鼓屋敷編」で伊之助も登場。
普通じゃない面々に手を焼かされる真面目な炭治郎という図式が確立し、コミカルさは本作を語る上で外せない要素になりました。

話は進み、「蝶屋敷編」に入り女の子要素が禰豆子だけだった本作にいっきに彩りが増しました。
カナヲの本格登場ですね。炭治郎とくっつくとはこの時は想像だにせず。
僕が特殊なのかもですが、男だけのむさ苦しい漫画って苦手なのです。
どうしても「可愛い女の子が出てくること」という点で評価をしちゃいます。
長らく不在だったこの点が、埋まった瞬間でしたね。

段々と本作の面白さにのめり込んでいった僕。
決定的に評価が変わったのが、続く54話からの「無限列車編」でした。
煉獄杏寿郎の圧倒的な格好良さに胸を撃たれました。

猗窩座から鬼の誘いを受けた時の彼の言葉。
鬼とは、人間とは。
両者の違いをしっかりと把握したうえで、「鬼よりも儚い生命を慈しみ、鬼が見向きもしない心の強さを尊ぶ」。
圧倒的強者を前にして、自分の信念を語る煉獄さん、マジでかっけぇです。
本作に惚れこんだ瞬間でしたね。

死を辛いと感じる事の意味

いつ、誰が死ぬか全く分からない。
煉獄さんの死は、そういった予測不可能な緊張感をも生み出しました。
最終決戦になると、次々と殉死する仲間達。
童磨にしのぶが吸収された時は、暫く状況を受け入れられませんでした。
「実は生きてるんでしょ」って本気で考えてました。
ショックだった、本当に。

玄弥や無一郎も、死ぬなんて1ミリも考えてなかった。
玄弥は同期だし、半ば炭治郎の大切な仲間は死なないとどこかで信じていたから。
無一郎に関しては、若くて天才だったからさ、生き残るものだと思い込んでたんですよね。

キャラクターの死にショックを受けるのは、作品に没入していたなによりの証。
哀しい事実を前にして、作品を好きになっているんだなと痛感してました。

まとめ

最初にも書きましたが、非常に綺麗な終わり方でした。
近年は長期引き伸ばしをされず、すっぱりと人気作でも終わらせている「ジャンプ」。
本作も例に漏れず、最終回を迎えられたことは喜ばしい限りです。

90年代までのジャンプ作家は「人気があるうちに終わらせる」ことを美学としていたと、かつて本誌に書いてありましたが、その考えが戻ってきたのかもしれませんね。
「まだまだ続きを読んでいたかった」と言われてる間に終われるのが、一番だと僕も思います。
連載は、続けようと思えばまだまだ出来たはずです。
例えば、愈史郎から悪い鬼が生み出されて…とか。
炭治郎達が満身創痍の中、どう戦っていくのか等々課題こそ山積ですが、全て物語の面白さに変換できそうなものなので、問題は無かったでしょう。
コミックスの爆発的な売上という「大義名分」が出来たわけですから、編集部が吾峠先生を説得することも可能だったはずです。
もしかしたら、その手の交渉はあったのかもですが、結果的には完結という選択肢が採用されたことが全てですね。

最初こそ悪かった印象ですが、最終的には掌返し。
面白い漫画でした。
長い連載、ありがとうございました。

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