はじめに
「タワマン編」いっきにクライマックスへ!!
ネタバレありで感想を少しだけ書きます。
「タワマン編」の感想
「歌島リゾート殺人事件」はミステリ的には、シリーズ史上でも下から数えた方が早い位のレベルだったと思うと2巻の感想で書きました。
そこで、「タワマン編」に期待~とも書きました。
結論から言えば、やはりまだまだ物足りなさがあります。
ただ、今回は倒叙物だったからというのが多分にあるんですよね。
倒叙ミステリの醍醐味は、個人的には「探偵役が犯人特定に至った根拠」にあると思っております。
読者にとっては犯人が分かった上で、犯行のプロセスをほぼ明かされた状態で物語が進行します。
必然犯人視点で語られることが多く、興味関心は「何故犯行がばれてしまったのか」に向くんです。
勿論トリックも謎の1つではあるんですが、多くの場合、そこまで重きを置かれていないというか。
「タワマン編」はまさにそんな感じに見受けました。
ただ、そのトリックも前章に比べたら、練り込まれていた気がします。
今回のメイントリックは、ハジメお得意の「困難の分割」でした。
行きは、3Dマスクを使って。(これは事前に明かされていたので、トリックの範疇外とも言えますが)
帰りは、先ずトランクケースに身を隠し、続いて、複数の段ボールを繋げた中に隠れる。
3Dマスクは兎も角、帰り方は古典的なトリックですよね。
小さな段ボール箱に人が隠れられる訳は無いという盲点を突いたトリックは。
同じ「金田一少年」シリーズでも、例えばアニメオリジナルの「嘆きの鬼伝説殺人事件」で使われていた気がします。
(「名探偵コナン」のオリジナルエピソードでも去年末同じのがありましたね。)
その他、探せばいくらでも出てくる手垢の付きまくったトリックの1つには違いありません。
ですが、トランクと段ボールという2段階に分けて成立させている点にアレンジがあるし、何よりも、これを「事件のメインの謎」として無いので、そんなに気にならないんですよ。
このトリックが「この事件の最大の謎です!!皆さん分かりますか?」と提示されてたら、ガッカリしてたはずです。
けれど、そうじゃ無くてメインディッシュは別にあったので、なかなか面白いな~という感想に着地しました。
で、話戻しまして、「探偵役が犯人特定に至った根拠」ですけれど、僕は面白いなと素直に感心しちゃったんです。
物凄く単純な事で、犯人の一人が独白してたように「なんで気付かなかったんだろう」って類の凡ミス。
それをハジメが指摘するまで疑問にすら思ってなかったので、「してやられた~」ですよ。
単純であればあるほど、気づかなかった時の衝撃が大きいけれど、まさに今回のがそれ。
ミステリとしては、まだまだ物足りないのは本当なんですけれど、一定以上の満足感は得られました。
3巻の僕の感想はこんなところで。
以下、ちょっと妄想。
この「物足りなさ」。
もしや計算尽くなのではと考えるようになりました。
リハビリテーション
20年間も謎解きから遠ざかっていたハジメ。
推理力は錆びついていないことを実証していますが、本当でしょうか。
流石に高校時代よりも頭の巡りが遅くなってるんじゃないかな。
実際そういうシーンが1巻にありましたよね。
だから、ミステリとして物足りないのは、ハジメのリハビリだからなんじゃないかなと。
やっぱりおかしいんですよね。
高遠が、あんな今までにない「人形」をけしかけたのは。
完璧を志す高遠ならば、「人形」の人選はもっと慎重にやっていて然るべきだと思うのです。
ならば、「第4のファントム」は、高遠にとっては捨て駒だったんじゃないでしょうかね。
敢えて穴のある計画を授け、錆びついた因縁のライバルを起こしたかった。
20年前の状態に戻した上で、叩き潰すために。
彼の犯罪者としてのプライドが、ハジメのリハビリの為だけに仕掛けた事件だったんじゃないか。
「タワマン編」は高遠が噛んでないとしたら、偶然ですね。
「今の不完全なハジメ」でも解ける程度の謎だったのは偶然とも言えるし、逆を言えば、高校時代が異常だったとも言える。
綿密なトリックを考えて、実行する犯人達ばかり相手にしてたのは、日本全体の犯罪件数から見れば異常ですよね。
殆どがトリックなんて使わない(使えない)犯罪者なのだから、稚拙な犯人に当たる確率の方が高いはずです。
今回のマダム達は、稚拙な犯人。
寧ろ自然と言えるのかもしれません。
ただ、今後はどうなんでしょう。
徐々に謎の難度が上がっていくんじゃないかなと。
少なくとも高遠絡みだと、より難解な事件になる…と良いなw
うん。
妄想おつってやつですね。
期待したい4巻
京都編は原点回帰らしいですよ。
旧家を舞台としたおどろおどろしい殺人事件。
わくわくすっぞ。(不謹慎)