この記事は
「恋するシロクマ」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
クマが好き
新宿に行ってきました。
あそこは、本当に何度行っても迷いますね。
渋谷とあの駅は、世界に誇れる迷宮駅だと思うの。本当に。
さておき、新宿の本屋で見かけて購入してきたのがコレです。
「恋するシロクマ」1巻。
WEBで話題沸騰と帯にありましたが、情弱を基本理念とする僕の眼はその情報を捕えた事が無く。
今回の店頭で初遭遇となりました。
シロクマが震えるアザラシを抱えている。
可愛い。
笑える。
あと、↓思い出して、ホッコリする。
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(関係ありませんが、この写真集もお勧めです。癒されます)
裏表紙みたら、なんか笑えそう。
ということで、ノリで購入。
先程読了しました。
序盤こそ一発ネタで終わる漫画なのかなと思ってしまったのですが、ところがどっこい。
それだけでは終わりそうもない物語性にグッと惹かれてしまいました。
一発屋芸人が消えるのは何故か。その持論
芸能界。
特に芸人の中には「一発屋」と呼ばれる人たちが多く居ます。
(歌手なんかにも使われることが多い表現ですが、ここでは敢えて芸人を取り上げます)
彼らの多くは、持ちネタが世間でウケ、それを察知したメディアが”一斉に”取り上げることでブレイク。
連日のようにTVをラジオを雑誌を賑わせ、お茶の間を席巻。
大体3か月から半年くらいは、この状態が続くことが多いでしょうか。
しかし、そんな勢いも長くは続かないのが流行り廃りの早い芸能界。
多くの芸人が早々に消えてしまいます。
そんな中でも消える事も無く、しっかりと芸能界に残っていくのは一握りでしょうか。
では、何故こうも消える芸人が多いのか?
消えちゃう方々は、「本当に面白い芸人では無いから」だと思うのです。
作り込んだネタが面白いのはある意味では当然です。
一発芸、リズムネタがウケるのは、偶然に因るところが大きいと考えます。
消えちゃう芸人さんの多くは、最初に「ウケたネタ」を延々と引っ張るんですよね。
だから、次第に飽きられちゃう。
本当に面白い芸人は、アドリブで世間を笑わせられる。
つまりは、トークが面白い。
だからか、早々に「ウケたネタ」を”捨てて”、話術で仕事を増やしていける。
この違いが、ブレイクしてから引っ張りだこになっている間に世間に知れちゃうのでしょうね。
トークで笑わせられるかが、両者を分けるポイントなんじゃないかなと素人的には思う訳です。
これと同じような結論の記事をyahooだかで何か月か前に見て、とても共感した次第です。
話変わりまして。
近年、「一発ネタ」漫画をよく目にします。
何とは言いませんが、最初のシチュエーションが「出オチ」的な面白さに溢れていて、序盤こそその力でグイグイと引っ張っていけてるんですが、そのネタだけに頼る余り「同じことの繰り返し」に陥って、早々に飽きちゃう。
そういう漫画。
1〜2巻とかで終わってると「面白い漫画だったね」で終われるんですが、あまりにも巻数を重ねると総合的にも「面白くない」と判断しちゃう嫌いがあります。
買っておいてなんですが、「恋するシロクマ」もその類なのかなと。
序盤を読んでいる段階で抱いてしまったのは事実です。
違った。
違うんじゃないかと1巻を読み終えた段階では確信に近い考えを持てました。
“トーク力”が如何なく発揮された第3話
この漫画のシチュエーションの面白味は「弱肉強食を越えた関係性」にあります。
本来シロクマにとってアザラシはエサでしかありません。
食うか食われるかの厳しい世界での摂理ですね。
今作のアザラシ君もそれをしっかりと認識し、故にシロクマ君のことを心の底から恐れています。
「自分はシロクマに食べられてしまう」という「正しい認識」を持っているんです。
けれど、そうじゃなくて、シロクマ君はアザラシ君を愛してしまいます。
同性だけれど、エサのはずだけれど、アザラシ君を好きになってしまう。
「君のことは決して食べたりしないよ」と誓う。
これはもう「弱肉強食の関係性」をぶち壊した「在り得ない関係性」です。
この「在りえなさ」がギャップを生んで面白さとなっている。
これを理解し、面白いと感じた時点で芸人の「一発屋」と同様、ブレイク成功ですよ。
(商業的なブレイクに繋がっているとは言ってないです。あくまで僕個人の中でのブレイク)
面白い。笑える。
掴みはOKってものです。
この最初のブレイクで2話まで楽しく読みました。
楽しかったのですが、一方で「一発ネタ漫画なのかな」と思い始めてしまったのも事実。
2巻は買わないかもなとまで考えていたのですね。
そんなことを想いながらページを捲り続けて、第3話。
シロクマ君の悲しい過去が語られます。
それはアザラシ君のこんな台詞から始まりました。
シロクマ君がどんな言葉を投げかけようと、アザラシ君は恐怖を覚えるだけ。
だって、そりゃそうです。
シロクマ君は天敵。
自分達を食べるだけの存在なのですから。
「君が好きだから食べないよ」なんて言われても信じられる訳もありません。
本能からくる途轍もない死への恐怖。
それに伴う精神的な苦痛は、計り知れないものでしょう。
そういった本音をぶつける訳です。
君ら強者に弱者の気持ちなんて分かるわけがない!!と。
それを受け、シロクマ君は答えます。
「わかるよ」…と。
ここから語られたのは、間違いなく「弱肉強食の世界」でした。
何故「弱肉強食を越えた関係性」をシロクマ君がアザラシ君に求めているのか?
その理由が分かります。
ただ「意外性があって面白いから」という理由だけに留まらない、設定の奥深さ・本当の面白さが出ていました。
「一発ネタ」にバックボーンを与えて、物語性を高め、長編に耐え得るネタに昇華してるんですよね。
芸人で言う所の「トークが上手い」を体現してる訳ですよ。
シロクマ君の過去はちょっと泣きそうになりました。
温かい愛情が、切ない別れがしっかりと、しっかりと優しい筆致で描かれていて。
それでいて、オチはちゃんと笑いのほうに落としてくれている。
作品全体がしんみりではなく笑いなんですよというアピールを忘れていないのが喜ばしい。
3〜4話に亘って描かれた物語が、僕にとって、この作品の評価を一変させてくれたのです。
終わりに
出会えたことに感謝です。
本屋さんありがとう!!