LGBTと漫画。 「少年サンデー」が踏み出した大いなる第一歩

はじめに

LGBT…性的マイノリティについて扱った漫画で1つ記事を上げようかなと最近考えていたら、興味深い記事が2本出てきました。
1つはAERA.comの「職場でLGBTをカミングアウト「絶望しか感じない」 30代当事者が語る現実〈AERA〉」。
もう1つはNEWSポストセブンの「なぜ今LGBTドラマが量産? 今春は5作放送で軒並み好評」です。

これらの記事内容を踏まえつつ、漫画界について思ってることを書いていきます。
尚、参照先記事へのリンクはしません。ご了承ください。

現実とドラマ

普段はあまり読まないというか信用してないサイトの記事なのですけれど、今回は興味深かったので言及してみます。
まず前者では、30代の男女それぞれが肌で感じている現実について書かれています。
以下、記事を抜粋しつつ纏めてみます。

LGBT当事者が周囲にカミングアウトをしたくてもできない環境がまだあることがわかった。
制度や知識は広まってきたが、安心して自分をさらけ出せる社会には至っていない。

LGBT当事者のうち65.1%が誰にもカミングアウトしていない──。
今年1月、そんな調査結果を電通ダイバーシティ・ラボが発表した。
しかも2015年の調査(56.8%)より、8ポイント以上上昇した。
調査した同社の吉本妙子さんはこう話す。
「世間にLGBTについての認知が広まったのは事実。
ただし、真の理解ができているかといえば、そこまで追いついていないのが現状だと思います」

会社が理解を示しているかのような姿勢を示していても、当の働いている社員にはそういった意識が根付いていない。
普段の言葉の端々から理解されてないことが窺え、ばれたら陰でネタにされてるかと思うと恐怖で絶望しかない。
故にひた隠しにしている…というような内容。

これを踏まえつつ、2つ目の記事では、ドラマでLGBTをテーマとした作品が増えてきてる理由について1つの意見が載っています。
こちらもまとめてみます。

昨年、男性同士の恋愛を描いた『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が大ヒットしたのが記憶に新しいが、今クールのドラマでも、LGBTを題材にした作品が増えている。
このところドラマに限らず、テレビ番組全般のキーワードとなっているのは、さまざまな人柄や生き方の尊重。
年齢、性別、職業、学歴、趣味、嗜好などの違いを平等に扱い、「自分らしく生きる姿を描く」「マイノリティにスポットを当てる」というコンセプトの番組が増えています。
なかでも、生きづらい理由がわかりやすく、根が深いのはLGBT。
好奇の目、上から目線、微妙な距離感、露骨な特別扱いなどに直面しながらも、自分らしく生きる姿が視聴者の共感を呼び、困難を克服したときのカタルシスはひとしおなのです。

妙に納得しちゃいました。
まだまだ理解されずに世間から「特別扱い」されているからこそ、そこに「ドラマ性」を見出しやすく、ドラマの題材にしやすい…ってことですか。
最初の記事の「現実」があるからこそ、ドラマ界で取り上げられている。

なんとも酷いお話。
LGBTの方が自分の側にいると戸惑うのは、否定できない。
僕がそうでしたから。
数年前、職場の後輩がそうだと聞かされて、少なからず動揺しました。

正直BLは漫画やドラマとしても「見たくない」と思っているのですけれど、じゃあ、後輩君のことを拒否するかというとそれは無かったですね。
お互い当時の職場は辞めちゃったので普段は会ってないですけれど、未だにたま~に飯食うくらいはしてます。
先月も焼肉喰ってきました。

LGBTの方のことを理解してるなんて言う気はさらさらないんですが、遺伝子的に「本来の性とは逆の性で生まれてしまった」ケースもあると子供の時に習って以来、差別的なことはしないように心がけてはいるつもりです。
つもりなだけで、実際もっとLGBTの人と出会ったら自分がどういった態度を取れるかは分かりませんけれど。
僕は未熟な人間なので。

話が逸れましたが、2つの記事からはまだまだ理解がされていない現状が裏付けされた思いです。
ただ、2つ目の記事には結びでこのようなことも書かれてました。

ただ、LGBTのキャラクターが当然のように設定され、視聴者も当然のものとして受け止めている欧米と比べると、まだまだ特別な存在として扱われているのが現実。
その意味で現在は、「LGBTが個人を尊重する社会の象徴ではなく、当然の存在として描かれるようになる」ためのステップを一歩一歩進んでいる最中なのかもしれません。
昨年の上半期がホップ、今春がステップ、そして来年がジャンプと、三段跳びのように大きく前へ進んでいけるのか。
その動向に注目してみてはいかがでしょうか。

ただの「エンタメ」・「虚構の中の出来事」という認識だからこそ、LGBTじゃない人は、この手のドラマを楽しめてるのだと思う。
そうではなく、「現実である」ということを理解した時、初めて真の理解への道が開けるのかもしれません。
そういった作品が生まれるのか…果たして。

さて、漫画やアニメの方でも百合やBLを扱った作品が増えてきた印象があります。
深夜アニメでも毎期最低1本は、百合またはBL作品が放送されているんじゃないかな。

ちょっとずつ受け入れている人が増えているのでしょうか。
少なくとも商売として成り立つレベルで、興味を持って楽しんでいる人がいるのは事実なはずです。
そういった人々がまだまだ「エンタメとして」作品を楽しんでいるだけなのか、はたまた理解して(理解しようとして)作品に触れているのかは分かりませんけれども。

実態こそ不明ですけれど、「人々の理解を促す契機」になりそうな出来事が、昨年の「週刊少年サンデー」でありました。
あったと思うのですよ。

「はなにあらし」の読み切り掲載

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©古鉢るか

「サンデーうぇぶり」で連載されています古鉢るか先生の「はなにあらし」。
周囲に付き合っていることを秘密にしている2人の女子高生を主人公にした百合漫画です。
同アプリに於ける紹介文はこんな感じです。

好事魔多し、月に叢雲、花に嵐──良いことには、とかく邪魔が入りやすいことの例え。
同じ女子高に通う「千鳥」と「なのは」は、親友にして「恋人」関係。
だけど、それは誰にも「内緒」。
人目を忍び、こっそりイチャイチャしつつ、邪魔が入りつつのヤキモキな日々を過ごします──わたしと私の“内緒”の交際ダイアリー、「共犯」気分で陰からニヤニヤ見守ってください。

1話10ページ前後のショート漫画で、そんなに深刻なドラマがある訳でも、腹抱えて笑えるコメディ的な要素もなく。
女子高生カップルがこっそりとイチャついている模様をこっそりと「覗き見」するような感覚の漫画です。

今作が、昨年の「サンデー」19号に掲載されたのです。
(掲載されたのは、第1話の再掲でした)
確かセンターカラーだったと思います。
結構な厚遇ですよね。

これ当時はなんとも思ってなかったのですが、今にして考えると大事件だったなと。

LGBT漫画って、専門誌(「コミック百合姫」など)や漫画マニア向けの雑誌などを中心に掲載されていて、子供が読む少年誌に掲載ってなかなか無いと思うのです。
え。
1981年に「ジャンプ」で「ストップ!! ひばりくん!」が連載してたぞって?
……確かに。

少女漫画なら普通にBL漫画載ってそう。
これも調べたらいっぱい出てきそうではありますが…。
あるのですが…大事件なんです!!(強引)

世間からLGBTに対する理解を勝ち取るには、教育するのが手っ取り早いですよね。
偏見で凝り固まった大人をこれから再教育するよりかは楽そうです。
そこで、少年誌や少女漫画の出番。

漫画で子供の頃から親しんでおけば、成長してからも変な誤解や偏見は持ちづらい気がします。
全員が全員そうなるなんて単純なことは考えちゃいませんが、割合的には理解できる人が増えるんじゃなかろうか。

少なくとも「サンデー」は掲載できる下地があり、最初の一歩を踏み出せています。
「ジャンプ」もとうの昔からある。
(但し「ストップ!! ひばりくん!」も「ボンボン坂高校演劇部」もギャグとしてLGBTのキャラを描いているので、真摯に向き合ったキャラを出せるかどうかが鍵なのかもしれません)
「マガジン」は兄弟誌の「別冊」で「将来的に死んでくれ」を連載中ですから、含めても良いはず。

少年誌でLGBT作品を本格的に扱いだしたらば、世間は変わっていく…のかもしれないなと思うのですが、どうなんでしょう。
そんな簡単な話では無いんでしょうけれども。

終わりに

僕自身「エンタメ」として百合漫画を楽しんでいるので、己自身を変えてからモノを言えって話ですね。
すみません。

かなり要領を得ない内容になってしまいましたが、昨年の「サンデー」が行ったことが大きな意味のある一歩になれば良いですね。

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