事実「ライアー・ライアー」は巻を増す毎に面白さが加速する

はじめに

「ライアー・ライアー」4巻までの感想です。
ネタバレあります。

はじめに

この記事は久追遥希先生作「ライアー・ライアー」について書かれています。
同名他者作品は無関係です。ご了承ください。

 

帯に「どんどん面白くなる」って書いてあったのでこの記事タイトルにしたのだけれど、どうやらそれは嘘だったようだ。
いつから錯覚していた…?
僕の中の藍染隊長が不敵に笑っていますが、面倒なのでタイトルは変えません。

ググっても帯に同様の惹句は書かれてなかったようですが、事実1巻より2巻、2巻より3巻とどんどんと面白くなっていってるんですよ。
という訳で、4巻までの感想を「何故どんどん面白くなっていっているのか」に焦点を当てて書いてみます。

ハッタリ

これ系のジャンルは何て呼べば良いのでしょう。
2巻の帯には「学園頭脳ゲーム」とあったようですが、これでいっか。
当ジャンルの作品の中で大事な要素は何か。
ゲーム性?
戦略性?
見応えある頭脳戦?
様々なご意見があるでしょうけれども、僕は一番に「ハッタリが利いているか」を重視しています。
これはミステリに於いても同じですね。

例え陳腐なトリックであっても、見せ方を変えるだけで面白く出来ると思っています。
「金田一少年の事件簿」とか、もろにこれ。
(誤解をして欲しくないので一応。「金田一少年」のトリックを陳腐とは思っていません。物語や演出がトリックの魅力を引き上げているという意味で、例として挙げてます)
例えば「吸血鬼伝説殺人事件」。
とある理由から被害者の体重をほんの少し軽くする必要が出きました。
そこで犯人は、吸血鬼伝説を利用することを思いつきます。
先ず被害者の首筋から血液を抜き取ると、とあるモノを使って遺体を運搬します。
その後、今度は抜いた血液を元に戻すんです。
この過程で出来た2つの注射針の穴を「吸血鬼が血を吸った時に出来た噛み痕」と誤認させ、真の意図を隠すというもの。

「そんな誤解しねぇよ」とか「んな簡単に血を抜いたり戻したり出来ねぇよ」というツッコミは無粋です。
要するに物語的に面白いかどうか。
トリックから逆算しておどろおどろしい伝説を組み立てて、舞台装置にすることで、グッと怪奇性を持たせて面白く魅せています。

有名なものだと「金田一少年の殺人」の密室トリックなんてドリフターズのコントから発想したっていうから、完全に魅せ方の勝利ですよね。

さて、本作。
ブラフやハッタリで全員を騙さないといけなくなった篠原緋呂斗が主人公なのです。
従って、自然と物語全体にハッタリが利いているんですよね。
なので、僕がハマる要素は最初から持ち合わせていました。

但し、1巻を読んだ時は、そこまで面白いと感じなかったのです。
何故なら、ハッタリの方向性が少しばかり好みとは違っていたからです。

忍者ハッタリくん(言いたいだけ)

ハッタリが大事とは言いつつも、やはり肝となるトリックも大事。
面白いトリックがあって、さらにそれを魅力的に見せれて、そこで初めて僕の好みと合致します。

今作はミステリでは無いのでトリックはありません。
ミステリのトリックに相応するのが「緋呂斗の策略」。
とすれば、1巻はその点が徹底的に他者に依存していました。
彼がしたのは演技のみ。
こう書くと語弊はありますが、頑張ったのは緋呂斗の後方支援をしている≪カンパニー≫の力が大きかったのは事実。
主人公・緋呂斗自身の活躍、見せ場としては弱かったです。

ただ、これは敢えてだったと思うのです。
基本の「き」を示すべく書かれていたんじゃないかなと。
「この作品が描いていく決闘とは何ぞや」をベースに、主人公の能力よりも彼の周りの力を誇示したかったのではないでしょうかね。
緋呂斗は策略家としての頭の切れこそありますが、それを実現する能力は持っていません。
実現できなければ嘘を貫くことも出来ない為、「彼の嘘を実現できる能力」=≪カンパニー≫の力を先ずもって見せる必要があったのだと解釈しています。
それと、とあるキャラクターが吐いている爆弾級の嘘の開示も重要な点なので、緋呂斗の有能さを示すことは優先度的に低かったのだと思います。

だから2巻からが本番。
緋呂斗の協力者、後方支援を行う組織は1巻で十分に示した。
ここからは倒すべく敵が登場し、いよいよ彼自身の策略家としての一面が前面に出てきます。
2巻を読み終わった時に、次巻も読んでみようと素直に思える様になりました。

そして3巻。
3巻と続く4巻は、上下巻構成なのですけれど、もうね、ここで僕の心は鷲掴みされました。
掛け値なしに面白いと言っちゃう。
緋呂斗自身の策略自体が面白くて、ハッタリも利きまくっていて、先の展開が読めない。
実のところ「誰が犯人か」なんてバレバレなんですよ。
「新キャラの美少女を疑え」はお約束ですからね(笑
でもそんなことお構いなしに、先が気になって気になって仕方ない。
あまりの面白さにこの週末でいっきに読み終えちゃいました。

いっきに増えた新キャラを持てあますことなく、しっかりと物語に組み込んでいるし、2巻までのキャラも活躍させている。
これまでにない規模のゲームをかつてない知略で緋呂斗が攻略していく様は、爽快感いっぱい。
作中でもあったように絶対的な窮地からの逆転劇は、それだけでも魅力的。
しかも逆転の方法が鮮やかだとこんなにも面白い。
いや~、楽しかった。

肝となるゲームの攻略に関しても勿論面白過ぎたのですが、個人的に巧いなぁと思ったのは、何気ない設定でした。
それは、「五学期交流戦のゲームの内容は、毎年変わり、直前まで公表されない。」という設定。
後半での緋呂斗のブラフのいくつかを成立させているのが、この細かな設定でした。
もしこれが無かったら逆転劇は成立しなかったのではないかって位重要なのに、後半で全く触れられてないっていうね(笑
伏線としては、さり気なく、しかし、印象に残るようなものでしたので、最後まで読み終わってはたと気づいた時の「やられた」感は快感でしたね。

まとめ?

なんだか具体性に欠ける感想に終始してしまいましたが、物語が進むごとに面白さも加速するぞということだけ覚えて頂ければ。
どんどん面白く感じる要因としては、キャラの魅力が増していくことも勿論関係してますが、それ以上に緋呂斗のハッタリがゲームの趨勢を決するレベルまで大きくなっていってるから。
≪カンパニー≫がいるから勝ててるという印象は、巻を増す毎に薄まり、緋呂斗のハッタリあればこその勝利という描写にシフトしていってるんです。
だから個人的にどんどん面白く感じているんですよね。

うううん。
説明が下手糞過ぎて魅力が伝わらない気がする。
面白いので、是非読んでみてください。

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