この記事は
「ライアー・ライアー」第11巻の感想です。
ネタバレあります。
史上最も濃かったラブいエピソード
クリスマス。
緋呂斗を巡るヒロイン達の勝負の日。
主人公1人に多数のヒロインが登場する物語だと、基本的にはヒロイン1人1人に焦点を当てた「お当番回」といっせいに全員を登場させる「集合回」があります。
後者の場合紙幅の関係でなかなか1人1人との関係性に深く切り込めないことが多いなというイメージを持っているのですけれど、今回は例外と呼んで差し支えないかと思いました。
6人ものヒロインとの甘くときめく「恋人たちの日」を過ごす緋呂斗。
ヒロイン1人1人をしっかりと立てつつも、本来の主旨であるゲームをも盛り込んだお買い得な1冊になっていました。
感想です。
飽きの無いよう工夫されたゲームの構造
乃愛の提出したイベントプランを緋呂斗が「多くのゲームを内包させることの出来る枠組み」のような言い方で評していました。
1000通を超える応募作の中から優秀なイベントをピックアップして、乃愛の考案した大きなゲーム内のミニゲームにして活かしていけばよいという緋呂斗のアイディアが功を奏し、無事に乃愛とのゲームクリアとなったのですけれど。
この構図がまんま今回の物語だったなと思ったのですね。
今回のメインイベント《LOC》がそもそも乃愛のアイディアの元となっているので、雑多なミニゲームで構成されているものという設定。
けれど、これをそのまんま描くと、縦軸となるストーリーラインの無い「ただのミニゲームの集合体」になってしまうのかなと。
有体に言えば、緋呂斗がヒロインそれぞれと楽しくゲームを行っていく様をヒロイン分繰り返すだけの物語ですね。
勿論、これがつまらないとか言うつもりは無いですけれど、あまりにも番外編が過ぎる。
短編集的な位置づけの巻だったらアリだけれど、しっかりとナンバリングされた巻の物語であると「ライアラ」(推奨略称と言うことで使わせていただきます)らしさが無いじゃないですか。
ぶっちゃけ緋呂斗が追い込まれてくれないと、ただただ緋呂斗がモテてる様子だけを眺めることになってしまう。
そんなの嫉妬しちゃう。
冗談は半分にして、「らしさ」はやっぱり薄く感じてたと思うのです。
だからこそ、より「らしさ」を演出する「枠」が考えられ、それが柚葉との疑似ゲームだったんだなと。
1つの疑似ゲームという「縛り」が出来たおかげで、緋呂斗はマジにならざるを得なくなり、緊迫感も生まれ、更には、「全てのゲームで勝つ必要がある」という1本の大きなストーリーラインが出来る。
6人の女の子と「デート」する以上は、「1人も泣かすなよ」的なフリをしっかりと効かせて、「逃げ道」を塞いでるところも抜かりない。
緋呂斗のキャラ的に元々採用しない選択肢だとは思うのですが、それでもこのフリのお陰で「白雪の自己犠牲」に乗らないでくれましたからね。
緋呂斗がただただ姉とのゲームの勝敗に拘るだけならば、あそこで白雪の「好意」を受けちゃえば良かったじゃないですか。
あまりにも分が悪い学園長との交渉(疑似ゲーム)に臨まなくても良かったし、読者だってそう考えてしまうかもしれない。
そういった「逃げ道」を「緋呂斗が女の子全員に誠意に向き合う」ようにすることで防ぎ、絶対的に危うい賭けに乗ったことにも納得出来たのです。
元々1つ1つのゲームが全く異なるということで、6人とゲームを行っても飽きの来ないようになっていたし、ゲーム面の工夫はいつもながら凄いなぁと感じつつ読んでおりました。
ヒロイン達の魅力が高まりまくり
摩理の誠実さと「妹萌え」要素がとてもよく出ていた。
乃愛の真剣さが伝わってきた。
雫の反則級の可愛さにノックアウトされた。
紫音は別として、各ヒロインの魅力がぎゅうぎゅうに詰め込まれていた今回。
僕としては、雫の魅せた新たな一面に萌えまくってヤバかったのですけれど、乃愛のいじらしさも中々どうして。
あざとさが出まくってる分、どこまで本気なのか計りきれない部分もあったのですけれど、ガチだったんだなと十分に伝わってきたのが凄く良かった。
乃愛の恋が報われて欲しいなと本気で思えるほどには、彼女の気持ちの大きさに心つかまれました。
と、同時に絶対的な溝、超えられない壁を実感したのです。
摩理、乃愛、雫の3人には共通して「諦観」のような感情が読み取れました。
緋呂斗が自分に振り向いてくれることは無いんだろうなという想い。
それが如実に感じられたのが乃愛の「のんびりしてると奪っちゃうからね♡」というセリフ。
緋呂斗の想い人は他に居て、彼自身がまごついてると、自分が強引に攻めちゃうぞ…と言う感じでしょうか。
第一に緋呂斗自身の想いを尊重してるのは、つまるところ、一種の諦めを持っているということ。
そういう風に僕は解釈しちゃいました。
物語的にも、この3人(紫音を含めれば4人)とのゲームは、言葉悪いですが「前座」。
今回最大のゲーム、クライマックスと呼べる戦いの理事長戦を経て、「本命」との物語があって…。
やはり白雪と更紗が、メインヒロインなんだよなと言う構成に感じたのです。
2人共緋呂斗にキスしてますからね。
更紗は頬、白雪は額でしたけれど。キスもキス。
緋呂斗自身述懐していたように初恋の子も2人のうちどちらかなのでしょう。
(個人的には、同じ癖を持つ白雪だと確信してますが)
ヒロインそれぞれの魅力がググっと高まったと同時に、「格差」も感じてしまいました。
終わりに
緋呂斗が誘拐されるとは…。
ヒロイン達がヒロインムーブをこれでもかとかましてくれる中、最後の最後で「ザ・ヒロインムーブ」とも言える「誘拐される」をやってしまう緋呂斗さん。
今作の真のメインヒロインは緋呂斗だったか。