この記事は
リバイバル漫画に関する記事です。
眠くて頭が働かない。
はじめに
「真似るな危険!13年ぶりの「HERO続編」 知られざる、リバイバルドラマの超巨大リスク」 東洋経済オンライン
日本のテレビドラマに焦点を当てた記事でしたが、とても興味深く拝見させて頂きました。
この記事の冒頭で
ヒット商品のリバイバルは、テレビ業界だけかと思ったら、ゲームでも、映画でも、成熟産業であれば、どこでも同じような傾向が見られるそうです。
とされています。
始まりは2000年代に入ってからでしょうか。
思えば漫画界でもリバイバルブームが起こって久しい。
リバイバルというのは、リスクをヘッジしているようで、実はリスクが高くなっている
というドラマ界とは漫画界に於いては少々事情が違うのかなというのがパッと見の印象です。
漫画界のリバイバルについての私見。
“リバイバル”と”続編”
記事では、先ず次のように定義しております。
過去のヒット作品を再び放送する方法には、すでに獲得した視聴者に向けて制作する”続編”と、新しい視聴者に向けて制作する”リバイバル”があります
なんだかTVドラマでは、このような区別は困難な気がしたのです。
なので、アニメで考えてみました。
朝や夕方、ゴールデンタイムに放送しているアニメは、主に”子供向け”に作られております。
子供と一口に言っても幼児から中学生(作品によっては高校・大学生)くらいまでと幅広く、更に細分化出来る筈ですがここでは一括りとします。
この時間帯にとあるアニメの「第1シリーズ」が放送されたとします。
「第2シリーズ」以降も同時間帯に放送される場合は”続編”。
主に大人をターゲットとした深夜帯に放送される場合は”リバイバル”。
という事かな?
ただ1つ条件があって、「第1シリーズ」とその続編の間の時間が短い事でしょうか。
例えば、10歳くらいの子供をメイン視聴者に据えたアニメが好評のうちに一度幕を閉じ、その10年後「第2シリーズ」を深夜に放送した場合を考えてみます。
(アニメ「スレイヤーズ」シリーズ等が該当)
「第1シリーズ」の頃のメイン視聴者は、10年の時を経て深夜アニメ帯のメインターゲットに成長している訳です。
一見すると”リバイバル”の「新しい視聴者に向けて制作する」という条件を満たしている様ですが、「第1シリーズ放送当時のメイン視聴者層」に訴求しているとも見え、やはりこのような場合は”続編”に区分けするべきではないかと。
故に”リバイバル”と見做すには、時間も関係してくると僕は考えます。
具体例を示します。
アニメ「金田一少年の事件簿」。
第1シリーズは2000年に放送を終え、現在「金田一少年の事件簿R」と改題し第2シリーズを放送しております。
第1シリーズが午後7時から放送され、現在が午後5時半。
メイン視聴者層が同じ(と見做せる)時間帯で第2シリーズが放送されている訳ですから、このケースは”リバイバル”。
もしも「金田一少年の事件簿R」が2001年とかに放送されていたら、”続編”扱い出来るのでしょうね。
うん。
TV番組に当て込むと割と面倒な公式かな…。
時間帯によって想定しているメイン視聴者層はあるけれど、基本「全時間帯全年齢対象」って感じですからね。
「すでに獲得した視聴者」も「新しい視聴者」も、どちらにも見て貰うように作っているというのが、どんな番組でも根本にありそうですし。
これを踏まえて、漫画界に目を転じます。
TV番組よりかは幾分「読者の棲み分け」を明文化しています。
「一般社団法人 日本雑誌協会」では、男性向け漫画雑誌を「少年向け」と「男性向け」に分けています。
更に「少年向け」は「小学生中学年位まで」、「小学生高学年〜中学生」、「中高校生」に細分化できると考えます。
雑誌によってメインの読者層が想定されていて、掲載されている漫画もそういう年齢層に見合った漫画を中心に組まれている訳です。
漫画の”リバイバル”と”続編”
前作の読者の「現在の年齢」を考慮して、そのような読者がメインとなっている雑誌に連載される場合は”続編”。
前作と同じ読者層をメインとしている場合は”リバイバル”。
そのように考えていきます。
ではでは、いくつか続編が作られた漫画を参照先記事の基準に則って”続編”か”リバイバル”に分けてみましょう。
(同一作者を条件とします。)
続編 | 主に既に獲得した読者に向けて連載 |
---|---|
リバイバル | 主に新規読者に向けて連載 |
▼リバイバル
・「王ドロボウJING」⇒「KING OF BANDIT JING」
第1作は95年〜98年まで「月刊コミックボンボン」に連載。
この雑誌のメインターゲットは「小学生中学年以下」。
第2作は99年〜05年まで「月刊マガジンZ」連載。
メインターゲットは「中高校生」かそれ以上。
1作目から僅か1年のブランクで想定読者層の離れた雑誌での連載の為、”リバイバル”ですね。
他には
・「金田一少年の事件簿」⇒「金田一少年の事件簿R」(「週刊少年マガジン」)
・「聖闘士星矢」(「週刊少年ジャンプ」)⇒「聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話」(「週刊少年チャンピオン」)
これらは、前作から時間を空けて「同一読者層の雑誌」で連載されていますので、この括り。
ですが、あまり思いつきません。
作品数的には少ない??
▼続編
・「CITY HUNTER」⇒「Angel Heart」(⇒「Angel Heart 2ndシーズン」)
この2作は全くの別作品と見做すべきかもですが…。
第1作は「週刊少年ジャンプ」。
1作目終了から10年後「週刊コミックバンチ」で連載されたのが「AH」。
当初は「続編」という位置づけでしたが、すぐに「パラレルワールド扱い」になりましたが(汗
それはさておき、「CH」時代の読者を追っかけているので、「AH」は”続編”ですね。
もう一例。
・「To LOVEる-とらぶる-」⇒「To LOVEる-とらぶる- ダークネス」
無印が「週刊少年ジャンプ」で09年まで連載。
「ダークネス」はその1年後の10年から「月刊ジャンプSQ.」で連載開始。
「SQ.」の方が想定読者層はやや上なのですが、被っている部分が大きい事とブランクが1年足らずという事で「無印時代のファンに向けた」作品と見做せそうです。
よって”続編”ですね。
他には
・「北斗の拳」⇒「蒼天の拳」
・「DRAGON QUEST列伝 ロトの紋章」⇒「DRAGON QUEST列伝 ロトの紋章〜紋章を継ぐ者達へ〜」
・「キン肉マン」⇒「キン肉マンⅡ世」⇒「キン肉マン」
・「地獄先生ぬ〜べ〜」⇒「地獄先生ぬ〜べ〜NEO」
・「サイコメトラーEIJI」⇒「サイコメトラー」
・「究極!!変態仮面」⇒「HENTAIKAMEN EX」
・「ミスター味っ子」⇒「ミスター味っ子Ⅱ」
・「みどりのマキバオー」⇒「たいようのマキバオー」
・「陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!!」⇒「陣内流柔術流浪伝 真島、爆ぜる!!」
・「NINKU -忍空-」⇒「忍空 〜SECOND STAGE 干支忍編〜」
・「シャーマンキング」⇒「シャーマンキングFLOWERS」
多い。
“続編”と一括りにしましたが、中身を見ると色々と違っていて面白いです。
第1作と同じ作風のものもあれば、年齢層の上昇に合わせ表現を過激にしてる作品もあります。
「CH」⇒「AH」のように、作風をガラッと変えている作品もあるんですよね。
アクション成分を薄めて、人間ドラマに重きを置いている。
これは読者層の嗜好に合わせた変化だったのかもしれません。
▼リバイバル続編
3シリーズ以上描かれると、折衷案的なシリーズも生まれます。
・「GTO」⇒「GTO SHONAN 14 DAYS」⇒「GTO パラダイス・ロスト」
第2作目までは「週刊少年マガジン」に連載。
ブランクが7年なので、「読者が入れ替わった」と見做せます。
よって、1作目⇒2作目までは”リバイバル”。
最新シリーズは「週刊ヤングマガジン」に連載中。
ここの判断がやや難しく、2作目から考えると「読者層の異なる雑誌にブランクの少ない期間に移籍した」となるから”リバイバル”と見做せます。
けれど、1作目からだと「1作目の読者がメインとしている雑誌での続編」となるから”続編”扱いかなと。
まあ、シリーズ全体で見ればどちらの層にも訴求していそうなので”リバイバル続編”扱い。
他には
・「キャプテン翼」シリーズ
・「やまだたいち」シリーズ
等、やはり3シリーズ以上描かれた漫画が該当します。
あくまでも僕の観測範囲でのお話ですが、漫画界では”リバイバル”よりも”続編”の方が圧倒的に多い印象です。
では、それによるリスクはあるのでしょうか?
漫画界の復活作品にリスクは少ないんじゃないか
多くの”続編”に当て嵌まる共通の特徴は、「前作よりも年齢層が上の雑誌で連載する」事でしょうか。
少年誌から青年誌への「移籍」が多いんです。
僕が挙げた作品の中では、13本中12本が該当。
そこで、先程の「一般社団法人 日本雑誌協会」で公表されている公称発行部数を見てみます。
JMPAマガジンデータ
少年向けと男性向け、それぞれの部数の平均を出してみます。
全雑誌から平均を出すのは面倒なので、それぞれ上位3冊と下位3冊の計6冊から算出します。
JMPAマガジンデータ : 男性 コミック
部数算定期間 : 2012年10月1日〜2013年9月30日●少年向け
雑誌名 出版社名 発行部数 週刊少年ジャンプ 集英社 2,812,041 週刊少年マガジン 講談社 1,365,709 月刊少年マガジン 講談社 695,167 月刊少年シリウス 講談社 12,684 サンデージェネックス 小学館 19,584 ドラゴンエイジ KADOKAWA 30,000 ●男性向け
雑誌名 出版社名 発行部数 ビッグコミックオリジナル 小学館 648,042 週刊ヤングジャンプ 集英社 609,375 ヤングマガジン 講談社 607,920 IKKI 小学館 10,000 モーニング2 講談社 19,692 ジャンプ改(KAI) 集英社 20,000
少年向け平均発行部数 | 822530.8 |
---|---|
男性向け平均発行部数 | 319171.5 |
男性向け雑誌は少年向け雑誌の約4割の読者しか居ない。
概算上ではこのような結果になっています。
実際に4割しか居ないとは言いませんけれど、少年向け雑誌の読者より男性向け雑誌の読者の方が少ない事は事実と断言しちゃって良いんじゃないかな。
「少年ジャンプ」と「少年マガジン」が飛び抜けているとはいえ、発行部数が少年向け雑誌の方が多いですから。
“リバイバル”よりも”続編”が多い。(印象論)
しかも、読者層のより少ない雑誌で”再連載”されている作品が多い。(印象論)
これらから想像出来るのは「漫画界のリバイバルはかつてのファンにウケればOK」という事かなと。
誤解を恐れずに書くならば、「大ヒットを期待してリバイバル作品を仕掛けている訳では無い」ということかなと。
少なくとも「その作品の前作と同程度も期待していない」んじゃないかな。
前作のファンが喜んでくれれば。
前作のファンの何割かがコミックスを買ってくれれば良い。
商業なのですから大ヒットを全く狙ってない訳では無いんでしょうけれど、打ち切られずに連載が最後まで完走出来れば成功くらいの気概で発表している。
あくまでも出版社側の理屈を想像した場合の私見です。
だとすると、リスクって少ない気がしますね。
“続編”・”リバイバル”含め、復活した漫画が打ち切られたケースって、殆ど記憶にありません。
多くが最後まで完走している印象が強いんです。
また、「To LOVEる-とらぶる- ダークネス」のように前作以上の発行部数を誇るケースや「キン肉マン」のように再ブームかと思わんばかりの人気を得ている作品もある。
中には「思い出が穢されるので、復活して欲しくない」という意見もあるかと思います。
実際にそういう感慨を抱いて続編漫画を受け入れられない人もいるかもです。
顧客は日々、進化している。生活環境、家族環境、価値観。その進化を読むのは、とても難しいのです。
と参照先記事にもありますが、同様の理由で「どうしても」というケースはあるはず。
それでも、こういった意見は少数ではないかな。
多くのファンは、復活を喜んでいる気がしますね。
わざわざかつての連載誌と別の雑誌で連載してるケースが多いんです。
それを追いかけてまで復活を追っている人はファンの中でも熱烈な人が多そうですから。
ドラマとは違って、漫画界に於ける復活作品のリスクは少ない…。
そんな気が致します。
終わりに
強調しますが、あくまでも個人の印象論。
“続編”が”リバイバル”よりも多く挙げられた故の結論です。
実際は”リバイバル”の方が多いかもしれませんから、そうであればこの論法はあっという間に破綻しちゃいますが。
(最初から破綻してるかもですけれどw)
なんにせよ続編って嬉しいものです。
かつて嵌った大好きな漫画の続きが読めるんですから。
「危険」とか考えずに、どんどん復活してくれて良いと思います!!
(当然、完全新作の漫画の方が全体の割合から見て多くないとダメですけれどね)