この記事は
漫画の読み方に関するエントリーです。
漫画の読み方って意外と難しいというのを忘れている自分がいる。
はじめに
この間「月刊少女野崎くん」を読んでいて、ふと頭に浮かんだのが
「そういえば漫画を読めない子供がいるらしいけれど、4コマ漫画でも読めなさそうだな」
というもの。
割と前。
最近では無いです。
5年は前だったかと思うのですが、その頃ネット記事で「最近の子供は漫画を読めない」というものを見かけました。
当時は「え?なんで?」と正直思ってしまったのですが、今回この件を膨らませてみます。
漫画を読めないのは「最近の子供」だけなのか?
ニュースサイトを巡回していましたら、ちょうどこの疑問に答えてくれそうな記事を見つけられました。
「最近の子どもはマンガが読めないのか? Twitterで議論に – トゥギャッチ」
漫画家のたかのあつのり先生のツイートを発端とした一連の流れを纏めているのですが、そのツイートがこちら。
引用させて頂きます。
以前とある雑誌で漫画を描いた時、「今の子供は漫画を読めないので、ひとつのコマに2つ以上の行動を入れないで下さい」と言われた事がある。(例えば)ハッとなって、ふりむいて「なんだって!?」と叫ぶ。↑1コマで済むけど、3つの行動をしているので3コマ必要になる。
同じくこの記事内で紹介されていた「読めない理由」を抜粋させて頂きます。
(該当ツイートを引用。以下はたかの先生では無い別のユーザーです)
ちなみに、その大学時代の友人曰く、「ここがこうだから読みづらい」という説明がこちら。 URL
おまけ。「何でこの人は自分のアタマで考えていることを常に絶叫しないといけないの?バカなの?」って聞かれた。コレも『漫画を読むためのルール』だよなぁ… URL
僕が読んだ記事では、その他に
・「コマの読み進め方」が分からない。
・間を読めない(コマとコマの間にある「描かれて無い情報」を読み取れない)
とありました。
今や「漫画を作っている側」も「子供が読めない事」を意識して作られているという1つの事実が伝わってきます。
ただ、誤解してはならないのは「漫画の作り手全体に波及している事案」では無い可能性が高いという点。
たかの先生は「最強ジャンプ」等主に児童誌で活躍されている方。
あくまでも「子供」。
ここでいう子供とは、児童誌を読むような小学生以下の子を指すとみて問題無いかと思われます。
つまりは、10歳前後位までの子を対象に「彼らはまだ読めないから、作り手から意識して行きましょう」という事なのかなと。
また、「最近」というのも鵜呑みにしてはならない部分ですね。
5年程前にも「最近」という言葉を頭につけて紹介されていたように、今はネットが発達しているからこのような情報が入ってくるだけで、今も昔も変わらないと思います。
昔から児童誌を作っている側は「対象読者は漫画を読めない」前提でいたのかもしれませんよね。
普通に考えれば「漫画を読み慣れてない人」は、年齢の如何に関わらず漫画を読めなくても何ら不思議では無いからです。
引用させて頂いた2つ目のツイートにあるように、漫画には独自の文法が多数あります。
これらを「漫画に触れたばかり」の人に読めと言ってもどだい無理な話。
学校で教わる訳でも、親から教えられる訳でもありませんから。
なら、人は何故漫画を読めるようになるんでしょう?
漫画の文法はどうやって身に付いたのか?
記事のはてブコメにもありましたが、僕等はどうやって漫画の文法を学んだんでしょうね?
自分自身の事を振り返ってみても、思い出せないんです。
親に聞いたのでしょうか?
友達や兄妹に習ったのでしょうか?
多読しているうちに、自然に身に付いたのでしょうか?
誰かに聞いたという記憶も無いので、個人的には”独学”かもしれませんが確証を持てません。
人間の記憶。特に子供の頃のような何十年も前のものだと当てにならないですからね。
もしかしたら、割と漫画好きのウチの父に教わっていたのかもしれません。
もう1つの可能性としては、「漫画の読み方講座」的な漫画を読んだのかもしれません。
児童誌にこのようなハウツー漫画が載っていてもおかしくないですし、その手の漫画を読んだかもしれない位のおぼろげな記憶もあります。
上の7番目にあるような「声に出してない内面の台詞」のような吹き出しは、誰かから教わらないとなかなか気づけない文法の1つかもしれませんから。
このような難し目の文法を分かり易く解説した漫画は、必要な気が致します。
主に漫画家の卵向けにはいっぱいこういうのあるんですけれどね。
例えば、かとうひろし先生(「仮面ライダーSD 疾風伝説」、「駆けろ!大空」等コロコロコミック等で活躍されている漫画家の先生)のホームページにある講座なんかが分かり易くて面白いです。
「マンガ文法 7つのポイント」 かとうひろしのHP DRAGON MY FRIEND
漫画家になりたい人向けの解説ではありますが、子供も読めるような配慮(ルビを振る、更に要点を絞る等)をすれば、そっくりそのまま「漫画初心者向けのハウツー」に成り得るのかなと。
特にその4からその6は、上で挙げられているような「読めない理由」のいくつかの回答にもなっています。
その6のコマ割りに関しては、これは児童誌に限らず「ネーム作りの基本」になっているようですが、読み易さという観点からは大切な点でしょうか。
「次のコマ」が読者に分かり易く伝わる様に”上下左右のコマと大きさを敢えて揃えない”割り方が基本だと、他の漫画家の先生の解説でも読んだことがあります。
作り手側が「分かり易く」を心がけている点ですが、それでも分からない人の為に、このような(かとう先生が公開されている)解説は必要に思われます。
児童誌には毎号この手の「ハウツー漫画」を常に掲載しておくのも良いのかもしれませんね。
流石にそれが難しいのであれば、公式サイトで公開するというのでも良いですし。
漫画が読めないというのは不思議でも無い「誰しもが通る道」。
漫画を好きになれば多読する事で自然と身に付いていきますが、最初で躓いたまま離れてしまう様な人もいるかもしれない。
そういう人を少しでも減らす一助とする為にも。
ハウツー漫画などの導き手は必要なのかもなと。
4コマ漫画は優しいか、難しいか
もう少し続けます。
視点を変えて、では、「初心者に優しい漫画」ってあるんでしょうか?
真っ先に浮かんだのが4コマ漫画です。
コマの読み進め方は一定。
基本的には上から下に4コマ読むだけだから。
漫画特有の表現(上にあるような一部のキャラの顔がアップになるようなものや変則なコマ割り)は少ない。
4コマしかないから。
台詞量も必然少なめなので、吹き出しの読む順番も迷わないでしょう。
思えば僕も4コマ漫画から漫画を読み始めた気がするんです。
家で購読していた朝刊に連載されていた4コマ漫画が最初だったかな。
入り方としては、最も身近で、最も優しい気がします。
でも、それでも漫画の文法を身に付けてないと厳しい面もあるのかなと。
冒頭に戻りますが、「月刊少女野崎くん」ですね。
ああ、「野崎くん」が「分かり辛い」って訳では無いんです。
そこは誤解しないでくれると助かります。
非常に読み易い4コマ漫画なんです。
「野崎くん」に限った話では無くて、たまたま「野崎くん」で気付いたからこの作品を引き合いに出しているだけで他意は御座いません。
閑話休題。
該当の4コマは2巻収録の第16号から「いつも身近にあるもの」。
2コマ目までは野崎邸でのやり取り。
ちょうど堀先輩が帰り支度をしてる時でしょうか。
千代ちゃんが堀先輩が野崎くんの漫画を持ってる事に気づいて、野崎くんもそのことを気に掛けているシーンですね。
3コマ目からは時間と場所が変わります。
2コマ目とは別の日の学校での出来事になっています。
漫画に読み慣れていれば何の問題も無く読み流せる点ですけれど、読み慣れていないと戸惑ってしまうのかなと。
時間と場所が3コマ目で変わったと理解していないと、千代ちゃんが堀先輩の傍から校外までワープしている様に見えるから。
4コマ漫画以外のストーリー漫画形式ですと、通常2コマ目と3コマ目の間には「時間が経過した、若しくは、場所が変わった事を示す”だけ”のコマ」が挿入される事が多いです。
この場合、学校だけが描かれた小さめのコマとかでしょうか。
ページを変える事で時間の遷移を示す演出も多いですから、2コマ目までと3コマ目まではページを変えて描かれるパターンも考えられます。
とかく、何かしら時間経過・場所変更が読者に分かり易いような配慮があります。
これによって読者も自然に「別の日の学校での出来事」なんだと理解出来るんです。
が、4コマ漫画って当たり前ですが、4コマしかありません。
これは漫画として「分かり易い点」にもなりつつ、反面、「分かりにくい点」にも成り得る。
平たく言えば、「時間経過・場所変更”だけ”」を現したコマを挿入する余裕が無いと。
笑いに繋がる”テンポ”という観点からも、例え挿入できたとしても無い方が良いケースの方が圧倒的に多そうです。
4コマしかないので、多くは「同一時間・同一の場所」での出来事が切り取られて1つの4コマ漫画として描かれていますが、中には途中で場所や時間を変えるケースも少なくはありません。
ストーリー漫画では、そのような場合間を繋ぐ演出が入っている事が多いのですけれど、4コマでは読者の想像力に委ねられている割合が高いんですよね。
「行間(コマとコマの間)を読めない」。
漫画の読めない人に多いとされるこの問題がボトルネックとなり、一見入門編として相応しそうな(実際入りやすいとは思うんですが)4コマ漫画も入門編には使えない場合もありそうです。
終わりに
漫画の読み進め方。
即ち、「どの順番でコマを読み進めるか」・「どの順番で吹き出しを読み進めるのか」。
これに関しては、台詞の繋がりさえ意識すれば、普通に解決出来ると感じます。
台詞の繋がりが吹き出しの読む順番を意識する事に繋がり、コマの読み進め方にも繋がっていくから。
問題はその他の間合いや独特の演出・文法でしょうか。
多読すれば自然と理解出来るのは確かですけれど、そこまで多くの漫画に触れようとしない読者を対象としたようなハウツー漫画の必要性をもっと意識すれば幾分解決出来そうな問題な気がします。
年齢を問わず読めるような「漫画を読むなら先ずはこれを読んで」的なハウツー漫画の決定版があると良いかもですね。
既にあったらごめんなさい。