【月刊アフタヌーン】「メダリスト」第1巻感想【つるまいかだ】

この記事は

「メダリスト」第1巻の感想です。
ネタバレあります。

久々に掛け値なしに良い作品に出会えた!!

作品に出会って、語りたい・感想をぶちまけたいと思える作品って、存外多くはありません。
「面白いけれど、その思いの丈をぶちまけたい」とは思えないことが往々にしてあって、最近はそういう時は無理して感想記事を書かないことが多いです。

でもこの漫画は違った。
久々に「感想を書きたい!!」と心から思えた。
こういった気持ちにさせてくれた作品に出会えたことが嬉しくてたまらない。

しかも、「つまらないから愚痴を零したい」というマイナスな気持ちでは無い。
純粋に「こんな面白い漫画あるから見て!!」と大声で叫びたい作品に出会えたことが、この上もなく嬉しい。

僅か2コマで吐き出される心情。

結束いのり。
小学5年生。11歳。

フィギュアスケートは、世界を目指すならば5歳から始めなければいけないらしい。
他の子よりも勉強ができない。
他の子よりもどん臭い。
他の子よりも忘れっぽい。
そして、自分と違って何でも出来るお姉ちゃんが、挫折した道だから…。
様々な事情で、親にすらやりたい事を言えずにいた少女。

そんな少女が、振り絞った本音が、本当に読んでいて辛い。
分かり味がありすぎて、辛すぎます。

親に迷惑をかけていると自覚があるからこそ、これ以上迷惑をかけないようにしなきゃ。
僕も子供の時に同じようなことを考えて、グッと堪えていたことがあります。
勿論、彼女ほど辛い目にはあってはないけれど、それでも気持ちはずっとわかるし、大人になった今「子供にこういう風に思わせること自体ダメだろ」とも思う。
だからこそ、彼女の気持ちを読んで、その置かれている立場の辛さが身に染みて分かるのです。

「思いっきりスケートをやらせてあげたい」って。

軽いノリは、本気の証

嗚咽を漏らして、やっと言えた気持ち。
それを聞いた大人の第一声がこちら。

重たい雰囲気をぶち壊すギャグ描写。
軽い。
あまりにも軽い。

でも、だからこそ彼女を1人の大人として扱っている。
それは「親」には決して出来ないこと。

いのりの母にとっては、娘の希望(あまりにも過酷ないばらの道)よりも「現実的な幸せ」を望んでいて。
どれだけ努力しても報われない夢よりも、楽しくできることを沢山経験させたいという親心は、決して軽い返事なんか出来ないのです。
どこまで行ってもいのりは、「子供」だから。

もう1人の主人公・明浦路司(凄い苗字だ)は、違う。
他人だから軽く言えちゃう。
やりたいってここまで言ってるんだから、やらせようよと。
けれど、ただ無責任に言うだけじゃないのですよ。

自分が面倒を見ると堂々と宣言しちゃうんです。

何故って彼もいのりに感情移入しちゃったから。
お金が無くて、親にわがまま言えなくて、中学生から初めたスケート。
年齢を理由に誰も教えてくれずに独学で励んだものの、結局夢を諦めざるを得なかった過去があって。
いのりの「出来ない」に自分を重ねた熱い気持ちが、頑なだった親の心を溶かす叫びになる訳で。

溶かすというよりも勢いで押し倒したという表現の方が正しいのだけれど、兎も角として、出来ない同士が出会って物語が始まるというこの冒頭が、あまりにもグッときました。

この後のお話で、彼はいのりに選択の重要性を説いています。
決して遊びなんかではない。習い事なんて軽いものじゃない。
本気なんだ。
人生を賭けているからこそ、自分の選択を軽んじてはならない。
他人に左右されず、しっかりと考えて納得いく選択をしていって欲しい。
司は、どこまでも対等の大人として、いのりに説きます。

そういう彼だからこそ、この時の軽いノリも、決して勢いでもなければ、他人だからという無責任さはないんですよね。
いのりを「1人のフィギュアスケーター」として扱い、彼女の選択を最大限に尊重している。
その上で、全力でサポートすると言っている。

一貫した彼の姿勢が本当に清々しいのです。

終わりに

周りから馬鹿にされていた女の子が、周りに誇れることを求めて、一歩一歩成長していくシンデレラストーリーに熱くなる。
ライバル達と出会い、彼女達に追いつけ・追い越そうともがく姿に勇気を貰う。
1巻を読んだだけで、そういった物語を読ませてくれるという確かな期待とそれを裏付けるだけの理由がありました。

この後、彼と彼女はどうなるのか。
きっと、「新米コーチ」の司では、いのりの才能を花咲かせられない的な展開とかも待ってるんだろうなぁ。
名コーチに付いてオリンピックを目指すのか。
司を信じて、彼に託すのか。
そうした時のいのりの選択と決断を見てみたいな。
妄想も膨らむ楽しい漫画に出会えて、マジで幸せ。

最新情報をチェックしよう!