古今東西ミステリ漫画レビュー

この記事は

ミステリ漫画のレビュー記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

「金田一少年の事件簿」に出会ったのは、もう何年前なんでしょう。
当時小学生だったかな?
堂本剛さんがハジメを演じた処女作である「学園七不思議殺人事件」で今作を知った僕は、妹と共にコミックスを集めていたものです。
それから「名探偵コナン」が始まり、すっかりミステリ漫画の虜になりました。
こんなに面白い世界があったのか…と。

当時ジュブナイルすらまともに読んでおらず、ホームズも大して知らなかった僕。
ミステリの世界の面白さに魅了され、特に漫画が好きだったこともあり、様々な作品に手を出しました。
という訳で、今回はそんなミステリ漫画の数々をご紹介。

以下ルール等々です。
1. 有名作品である「金田一少年」、「コナン」、「Q.E.D.」の3大作品を除く
2. あくまで私的な感想です
3. 紹介している一部の作品は全話読んで無くとも感想を書いています
※タイトルが赤字の作品は全話既読。黒字は全巻読めてない(一部のみ既読)作品となります。

で、一番大事なのは
「刑事事件」
を主題にしていることです。
殺人事件の謎解きをメインにした作品に絞っており、所謂サスペンスものは扱っていません。

ではでは、氷山の一角ではありますが。

少年誌系

サイコメトラーEIJI
「マガジン」のミステリやサスペンスものの原作者は殆ど樹林氏と考えても問題無い気がしますw
現在も続編が連載中の人気作。
サイコメトリーを駆使した推理漫画としての側面と異常犯罪者との闘いを主眼としたサスペンス漫画の合わせ技。
トラウマを抱える殺人鬼達のキャラが濃かったな〜。
(SF要素を強めて、色々とぶっとんだ作風にすると、ちょうど「ネウロ」になりそうな気がするのは僕だけでしょうかw)

探偵学園Q
「金田一」コンビのミステリ漫画。これも有名ですよね。
天樹先生が「漫画から生まれたミステリ」と仰っていたように、漫画のギミックがふんだんに盛り込まれた作品。
探偵学園VS犯罪組織を縦軸のドラマとし、全編に亘って壮大な伏線が仕込まれているのがポイントでしょうか。
長編・短編織り交ぜた構成も飽きさせずに、最後までいっきに読めるかと思います。

C.M.B.-森羅博物館の事件目録-
「Q.E.D.-証明終了-」の姉妹作品。燈馬君の従弟である森羅少年を主人公としたミステリ漫画。
「Q.E.D.」がガッチガチのロジック型推理漫画とするならば、こちらは博学系とでも言いましょうか。
燈馬君があまり扱わない歴史・考古学・動植物などのジャンルを得意としています。
初期は前後編形式を採ることが多かったですが、中期以降は1話完結を主としていて、基本どこからでも読める作りになっています。
ミステリとしては、やや弱いエピソードが多いかな。

ロケットマン
ココに載せようかどうか迷ったんですが、初期の方ではミステリ漫画としての体裁を十二分に採っているエピソードもあるので。
全体から見ればSF冒険活劇なんですが、加藤先生らしくしっかりとしたミステリが全体を貫いた作品にもなっています。
個人的には(ミステリ漫画としてでは無いですが)イチオシ。

探偵犬シャードック
天樹先生原作という事で期待していましたし、1巻は間違いなく面白かったんですが…。
早々に悪い意味で話がワンパターン化。
シャードックが事件に気づくまでもやや強引な面があったり、トリックも「金田一」ほどではなかったりで、個人的には総合的に見て楽しめなかったです。

少年名探偵虹北恭介の冒険
「月刊マガジンZ」で連載されていた漫画。
はやみねかおる先生の「虹北恭介シリーズ」の漫画化で、挿絵のやまさきもへじ先生がそのまま作画担当に。
日常の謎がメインなので、ここに取り上げるべきでは無いのかもですが、結構好きでした。
講談社BOXで復刊してたんですね。機会が有ったら買ってみようかな。

人形草紙あやつり左近
「週刊少年ジャンプ」のミステリ漫画の中では一番好きです。
連載1話である「豆州弐面鬼傀儡地獄」が最も凝っていて大満足の出来だったんですが、これ以降が事件の規模もトリックもイマイチな感じになってしまったのが残念ではありますが。
小畑先生の(恐らく意図的にしてたであろう)不気味なタッチが非常に印象的で、ミステリという題材にピッタリ合っていました。
アニメ版がWOWOW限定だったのが残念。

心理捜査官 草薙葵
目次コメントでの”場外乱闘”の方が有名かもですね(汗
プロファイリングを推理手法に持ってきていた作品で、「読者が推理できる」という余地がやや無かったような印象です。
ただ、サスペンスとしては恐ろしさもあり、適度なグロさも兼ね備えていました。

少年探偵Q
当時本誌でしか読んでなかったんですが、舞台裏では色々とあったようですね。(wikipedia参照)
しんがぎん先生の可愛らしい絵が大好きだったという記憶しかないです。
ミステリ漫画としてはそれほど話もトリックも印象に残っていません。

▼名探偵コナン 特別編
学習雑誌で青山先生のアシさん達が連載していた、文字通り「アシさん版コナン」。
3組が連載していて、それぞれ↓な感じでした。

・山岸栄一版*1
個人的に話も絵も一番好きでした。
唯一特別編からアニメ化された2話も山岸先生の描いたエピソード。

・阿部ゆたか・丸伝次郎版
当時は一番絵が青山先生から遠く、(失礼ですが)雑な印象だったんですが。(1巻に1コマくらい滅茶苦茶似てるコマがあったりと画力に関しては結構謎でした)
ですが、今はかなり近い絵柄になっていてビックリしました。
死体を特殊な装置で薄くスライスして本のページに挟んで処分するという「小学生に読ませて良いトリックじゃねぇぇぇぇぇ」と本気で狼狽えちゃう、とんでも死体消失トリックが未だに頭にこびりついてます。

・太田勝と江古田探偵団(窪田一裕)版
3話以上に亘るエピソードがあったりと、他の組とはやや長尺なエピソードが多かった印象です。
絵は青山先生とは違うものの、線のハッキリとしたもので、好きな部類でした。
唯一現在も連載誌を移行して継続中。

秘密警察ホームズ
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「コロコロコミック」で連載していた為、主人公達の設定にリアリティは無いんですが、毎回しっかりとした本格ミステリを描いていた貴重な作品。
トリックは簡単な物が多いんですが、見せ方が上手い為か、しっかりとした謎として成立しているので、最後まで楽しめました。
終盤漫画らしく犯罪組織が出てきたりしますが、あっさりと壊滅させちゃうのは、寧ろ良かったです。

▼少年探偵彼方 ぼくらの推理ノート
1巻のみ既読。推理クイズ本をそのまま漫画にした作品。
1話あたりのページ数も少なく、本当にクイズといった趣の為、「取り敢えずミステリに触れてみようかな」という人には持って来いな気がします。
どうやら続編では本格度が増すようなので、最後まで読んでおけばよかったなと。

▼スパイラル 〜推理の絆〜
「漫画から生まれたミステリ漫画」の元祖といっても良いかもしれないですね。
タイトルが示すように1つの事件を解決すると、新たな事件が発生するという連続性があり、「1つ1つ別々のエピソードの連続体」というよりかは「作品全体で大きな1つの物語」を構成している印象が強いです。
その「大きな物語」が「(殺人)事件の謎解き」ではなく「ブレード・チルドレンとの頭脳戦」な為か、本格ミステリ漫画とは見做しづらいというのが本音。
でも、序盤はしっかりとした殺人ミステリを楽しめます。

探偵ボーズ21休さん
「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」でお馴染みの倒叙ミステリ。
予め犯人が分かっている構成の為、トリックが面白い方が読み応えがあると思っているんですが、今作のトリックはどれもこれも非常に面白いものでした。
比較するのは野暮なんですが、この点「シャードック」より抜きん出ていたかな。

「タイトル失念」(光文社のコミックス)
うわああああああ、タイトルが思い出せない…。
少年探偵倶楽部的な感じで、トリックもなかなか面白いものがあった気がするんです。
レギュラーの少年探偵が1人終盤で殺されてしまうというトンデモ展開があったりして、結構ショッキングでした。

青年誌系

▼ミステリー民俗学者 八雲樹
「金田一」原作者の金成先生原作の漫画。TVドラマにもなってましたね。
民俗学を題材とし、初期の「金田一」を彷彿とさせる雰囲気でしたが、トリックがやや簡単だったかな。
しっかりと読者に向けて謎解きのヒントが提示されているフェアな作品。
エログロが苦手な人には向かないかも。

▼オサムシ教授の事件簿
1巻のみ既読。
ミステリという体裁を採っているものの、謎解きとしては残念な部類でした。
昆虫の習性をまんま事件の中核に取り入れていたり、ただ単に昆虫の特徴を絡めているだけだったりと、割と単純なので解決編前に真相が見えちゃいました。
物語にもう一捻りあったら面白かったです。

▼なんてっ探偵♥アイドル
昨日読んできたばかりなのですが、結構面白かったです。
トリックがしっかりとあり、謎解き要素も満載。
殺人ミステリと日常ミステリの塩梅も良く、全体的にラブコメで纏められているので読み易い。
ラブコメ要素アリなので、キャラクターも良いし、続きが読みたくなる作品でした。
2chまとめ系ブログで嘲笑の対象にされていたのが悲しい(該当部分まで読んでないので、何とも言えないですが、決してダメなミステリ漫画では無いと思うの)

逆転裁判
カプコンの同名ゲームのコミカライズ。
ミステリ作家の黒田研二先生をシナリオに迎えているだけあって、ストーリー面は本格そのもの。
ゲーム同様二転三転する逆転劇を読めます。
が、漫画になると容疑者たちのキャラがくど過ぎるのが偶に瑕かもです。

逆転検事
漫画版「逆転裁判」コンビが同じくカプコンの同名ゲームをコミカライズ。
ゲームでもそうだったんですが、漫画版も「逆転裁判」の方が好きでした。

終わりに

少女漫画系が無いです。
作品としては存在するんですが、読んだことが無いか、あまり覚えてないか。
「名探偵保健室のオバさん」とか読んだのが昔過ぎて思い出せなかったり。
今度どうにかして読み返したいな。
あとは「リモート」とか、青年誌系も読んでないの多いですね。

正直難しいジャンルであると思います。
「金田一少年」、「コナン」、「Q.E.D.」の三大漫画があまりにも抜きん出ていて、後に続く作品が同じ作者ですら生み出しづらい状況になってるというか。
(あくまでも僕個人の見解)
ミステリを謳いつつ、まだまだサスペンスや「ミステリの皮を被った作品」が多く、僕の求める本格志向のミステリ漫画がなかなか無いというのもありますね。

ただ、このジャンルが確立されて20年程。(先駆者の「金田一少年」が生誕22周年なので)
日が浅いので、まだまだ掘れば掘るほど新しい鉱脈が見つかりやすいジャンルでもあるのかと。

近頃は「サンデー」周りで「女子高生刑事 白石ひなた」や「名無しは一体誰でしょう?」等ミステリ漫画を続々と世に送り出していたりとまた活発になりつつあるのかもしれません。
「ジャンプ」でも久々に小畑先生作画で「学糾法廷」が始まりますので、大いなる期待感を抱いております。

*1:名前の「きし」は正確には違う漢字です

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