「ナナマル サンバツ」 タイトルの意味を考察する

この記事は

「ナナマル サンバツ」の考察寄りの記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

最新の7巻をやっとこさ読めました。
4巻から始まった「麻ヶ丘例会編」が終わり、いよいよ深見兄妹の物語に入りました。
1巻から張り巡らせてきた伏線の回収作業が始まった訳です。

ナナマル サンバツ (7) (カドカワコミックス・エース)

ナナマル サンバツ (7) (カドカワコミックス・エース)

今回は7巻の内容を踏まえて、改めてタイトルである「7〇3×」の意味を考えてみたいと思います。

笹島と誠司の過去を解く2つのポイント

新たに幕を開けた新展開。

誠司は何故クイズを止めてしまったのか。
笹島が開城を離れた理由とは。
2人の間に何があったのか?何も無かったのか。

今まで謎だった数々の過去が判明しそうです。
これら謎を解き明かす際のポイントとなりそうなのが、主に2つでしょうか。

笹島がしきりにいう「クイズはどこでも出来る」という言葉が1点目。
少し遠回しな表現になりますが、第1話冒頭でも「万国共通 誰もが知ってる遊び」と評しています。
同じく1話の部活動説明会の壇上でも「誰でも出来る」と言っていたり。
19話では大蔵にも言っていたように、笹島のポリシーなのでしょうね。

このポリシーの原点とでもいうのでしょうか。
強く意識する事となったのが、1年前の「SQUARE」っぽいですね。
ただ単に大会でのクイズを楽しみたかった笹島は、開城クイズ研究会の伝統や誇りを守る為のごたごたに否応なしに巻き込まれてしまい、つくづく嫌気がさしたのかもしれません。

2点目が35話での回想シーンにて、笹島が誠司に放った一言。

実際大分面倒くさい事になってます。
誠司もまた「SQUARE」が原因で部を離れた様なので、そこでコテンパンにのされたのかもしれませんね。
32話で近衛が「先輩らも西のやつらにかなり苦戦させられた」と言ってますし、西日本の高校に辛酸を舐めさせられた可能性が高い。

中学生の頃からエースと持て囃され、絶対的なプライドと驕りもあったのかもしれません。
「勝ち負けにはに拘らない」と言いつつも、今は「勝たなきゃ意味が無い」と考えを転換させているのも、大きな挫折を味わったからと推測できます。
いや、考えが変わったというのとは少し違うかもしれません。
「勝ち負けにはに拘らない」と言えたのは、「自分が負ける可能性を持てなかったから」なのでしょうね。
それ程自分の力に自信を持っていて、故に驕っていた。
昔から「勝ち」にしか興味が無かったので、一層一度の大敗が重く圧し掛かってしまったのかなと。
ここが「面倒くさくない」クイズを楽しんでいる笹島との大きな違いなのでしょうね。

あらかたの謎は、この2つのポイントを押さえておけば想像出来そうな気がしますけれど、面白いのは35話で描かれている笹島と誠司の考えの違いですね。

「勝たなきゃ意味が無い 敗者には何も残らない 勝負の世界なんてそんなものだ」
誠司が放ったひとつの真理。
競技という性質上、完全には否定できない考え。
これに対して笹島は言い返します。
「俺は彼らにそんなクイズはさせていない」と。

これは第9話でも行われたやり取りですね。
笹島と真理の間で。
くしくも笹島は兄妹2人と全く同じやりとりをしたことになります。

笹島と真理の対話を振り返る

「どうしたら”勝つ”クイズができますか?」
初めて参加した赤河田での4校合同クイズ大会で、己の未熟さを痛感した真理が笹島に問いました。
笹島はこの問いに対して真っ向から「”勝つ”ためのクイズなど必要ない」と返します。

“勝つ”クイズを識る前に、先ずはクイズの何たるかを学べ。
その後でどんなクイズをしたいのか。するのか。目標はどうするかを考えろ。
自分なりにクイズの全てを楽しめと笹島は諭すんです。

これまで一貫して描かれていた「クイズを楽しむ」姿勢を持った笹島のスタイル。
振り返ってみれば常に彼は楽しむ事を掲げ、後輩達に促しています。
“勝つ”クイズをさせていない。
35話での誠司への返しは、笹島の育成スタイルを振り返ってみる事で非常に納得できるようになってます。
今回改めて全巻読み返してみて僕自身気付かされた事です。

で、この笹島の考え方が、そのままタイトルになっているんだろうなと思ったのです。

タイトルに込められた意図を考える

「7〇3×」。
意味合いとしては、この漫画の読者ならばわざわざ書く事でも無いですよね。
「先に7問正解した方が勝者となり、お手付き3回で失格となる」。
早押しクイズなどで採用されるルールの事です。

意味が分かってるのだから、考察もクソも無い…。
そうかもしれません。
でも、何故タイトルに採用したのでしょう?

例えば同じクイズ形式としてならば何だっていいはずですよね。
「5〇2×」でも良いし。「10〇0×」「10〇1×」でも良い。
「7〇3×」にした理由ってあるんじゃないのか。
…と思ったのですが、数字や割合には意味は無いかもしれませんね。
あるかもしれませんけれど、僕には推測すら出来ませんでした。
ゴロが良いとか、足して10になるので…とかそういう理由かもしれないですよね、案外。

ただ、「×」の数ですが、これが「0」「1」。
所謂「お手つき即失格」という意味合いのタイトルは絶対付けられないとは思うんです。

訂正お詫び
この記事の宣伝ツイートをRTしてくださった方のツイートを拝見させて頂き、上記訂正箇所が間違いだと知りました。
ありがとうございます。修正しました。

繰り返すようですが「3×」とは、「2回までなら間違えられる」事を指しています。
言い換えればルール上「2回までは間違えても良いんだよ」という事。
ちょっと拡大解釈すれば、余裕を感じられる部分ですよね。

誠司のような考え方を主旨としていたら「採用されないタイトル」。
「間違える」=「負け」と解釈(曲解)すれば、「負けを肯定するようなタイトル」となり、「勝利至上」を旨とする誠司のスタイルには合いません。
しかし、笹島のスタイルにはしっくり来るんですよね。
「勝ち負け」に拘らずに「好きな事を楽しんでいる」笹島のクイズへの取り組み方には、負け=お手つきを良しとするルールと相性が良くみえる。

数字に意味合いは見出せませんでしたけれど、お手つきを良しとする点が重要なのかなと。
勝ち負けにこだわるな。
それよりも、もっと純粋に奥深いクイズの世界を楽しもう。
そういった意味が込められていて、識の紡ぐ物語や笹島のスタイルがこれを肯定している。
タイトルには、そのような意図が込められているのかなと感じました。

終わりに

笹島と対極のように描かれている誠司ですけれど、でも、クイズに対する気持ちだけは同じなんでしょうね。
今でこそクイズ自体をくだらないと否定してますけれど、本当の所は大好きな筈。

「好きだから負けたくないんです!」

真理が笹島に宣言した台詞。
「どこかで聞いた台詞だな」と何処か懐かしむ笹島は、この時真理と誠司を重ね合せていたんじゃないかな。

「好きだから」

今回の真理との戦いを経て、再び情熱を持ってクイズ界に戻ってくる。
そうして笹島と真剣勝負を繰り広げて欲しいですね。

それにしても、誠司さんは何気にシスコン入ってますよね(笑
言葉は酷いですけれど、大事だからこそ「自分が挫折した想い」を妹に経験させたくないと考え、クイズから身を引く事を強いていそうですし。
変な虫が付かない様に見守ってますしねw

最後に真理の精神論を引用して締めます。

「問題があって ボタンを押して 正解できたら嬉しい!
間違えたら悔しい…!」

真理(まり)の精神論はこの漫画の真理(しんり)なのでしょうね。

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