この記事は
「おおきく振りかぶって」の記事です。
21巻のネタバレありますのでご注意下さいませ。
2年目開始の新展開
「おお振り」待望の21巻が発売されました。
やっぱり面白いですね。
で、帯には「このチームで戦えるのはあと2年。オレらの季節がまた始まる!」との文字と「新章突入」の文句が書かれていました。
高校野球の”始まり”は、秋なんですよね。
1年目は、入部(入学)から始まり夏の全国高等学校野球選手権大会まで。
2年目は、夏の甲子園後から始まり、翌年の全国高等学校野球選手権大会まで。
3年目は、同じく秋から始まって、翌年の夏の甲子園まで。
基本的にはこういうサイクルで、1年目が滅茶苦茶短い。
夏の地区大会で敗退した西浦にとっては、その時点から既に「2年目」が始まっていて、この秋季大会でチームとしてのリスタートが着られたという事ですね。
という事で、そんな切り替え期間を描いたのが21巻収録のエピソード。
焦点が当たっていたのは、チームメイトの絆と変わりゆくチームだった気がします。
チームの絆 西浦高校サイド
先ず、西浦サイド。
1年生のみで構成された西浦は、「新チーム」という概念自体がまだありません。
その代わりと言っては何ですが、描かれていたのはチームの絆だったと解釈しました。
その為に明かされたのが、モモカンの高校時代。
モモカンの同期で、当時の軟式野球部唯一の野球部員の死でした。
これを機に「1人も欠けてはならない事」と「監督含め全員の目標が一致した事」が伝わってくるようになっていました。
モモカンが言ってましたけれど、「11人の内1人でも欠けてはならない」チーム事情があります。
野球は9人必要なスポーツであり、11人というのは交代要員含めても必要最低数でしょう。
いや。実際には少なすぎる位です。
1人欠けてしまうだけで重大な局面を迎えますし、「死」というものはそれを端的にした表現。
若しかしたら、三橋達が文化祭周りの際に「11人全員のクラスを見に行こう」としていたのも、こういった絆を強調したシーンだったのかもしれません。
そして、モモカンが甲子園優勝を目指したのは、今が初めてと分かったのも大きいです。
例えば、モモカンが過去を引き摺っており、自らの学生時代に果たせなかった夢を、今のナインに託している…となると…。
それはそれで燃える展開なのかもですが、なんか違ってきます。
「現西浦ナインの物語」というよりも「モモカン(旧西浦軟式野球部)の物語」になりそうで。
個人的な感覚になりますが、ここは「過去は過去」と踏ん切りをつけ、「過去とは全く関係なく、今初めて目標として持っている」とされた方が燃えますね。
こうすると、モモカンは自分の為では無く、今のナインの為に頑張ってくれていると分かるから。
全員が一致した目標を持ち、監督もまた彼らの事を第一に考え同じ夢を追ってくれている。
誰一人欠ける事無く、一丸となって夢に挑んで行こう。
こんな青臭い事は漫画には一切書かれてませんけれど、でも、流れているメッセージはこういう事だったんじゃないかと思ったのです。
より強固な一枚岩になった西浦ナインが描かれていたなと。
変わりゆくチーム 武蔵野第一高校サイド
夏が終わると、3年生が引退し、チームは2年中心のチームに移行します。
新チームの船出が描かれていたのがこちらで、その中心に据えられたのは秋丸でした。
「2年生だから」という理由で、取り敢えず補欠からスタメンになった秋丸。
彼の評価は、部内外どちらからも芳しくありません。
実力も今一歩というのもそうですが、一番は主体性が無いから…でしょうか。
頑張って頑張って、何が何でもレギュラーで居るんだという気概が無く、なんとなくで野球をやっているように周りからは映り、本人もそういう気持ちでいる。
こうなると1年生からの信頼も得られないでしょう。
更には、1年より実力で劣ると判断されれば、1年生にポジションを奪われてしまう事にもなります。
実力まで下となれば、尊敬すらされなくなる。
何ていうのかな。
古臭いですけれど、スポーツの世界は未だ縦社会ですよね。
当然2年生が1年生に舐められてしまうと、色々と問題があります。
秋丸は、「舐められてしまう先輩」なんですよね。
新チーム移行時に浮き彫りになる事が多いイメージの「問題」です。
やる気と実力、そのどちらかでも1年を凄いと思わせれば面目は保てるけれど、どちらも無い秋丸は…。
現状の武蔵野第一の1年は秋丸をどう思っているのでしょう?
恐らく「どうも思っていない」気がします。
秋丸の事は見向きもせずに、榛名の為に頑張っているだけに見えます。
最終ページの「オレらで(榛名を甲子園に)連れて行くしかない」というセリフから読み取れた1年の総意。
なんでしょうね。
正直一枚岩で固まっている西浦とは真逆に居る気がしますね。
「榛名の為」と纏まっているように見えるけれど、その榛名にとって秋丸が「足を引っ張る存在」と1年が認識してしまったら…。
チームの和が砂上の楼閣が如し、瞬時に崩れ去りそうです。
変わりゆくチームが抱える問題点。
これを克服するには、秋丸が動かないといけないのでしょうね。
チームの為に、部を辞めるというのは見たくない選択。
この作品にそれは求めていないかな。
見たいのは、「信頼を勝ち取る秋丸」ですね。
次巻予告を見る限りこっちの展開になりそうですし、すると1年の意識も「2年生を甲子園に連れて行きたい」に変わってくれるのかなと。
西浦の「後輩」について
こういう物語を見せられると心配になるのが、西浦ナインが2年生になった時です。
前々から思っていた事ですが、西浦ナインに後輩が出来るのか否か。これが心配になってきます。
僕は今の11人に、感情移入しております。
21巻分もの物語を追って来たのですから、当然です。
正直この11人の和を崩して欲しくないし、誰も入って来て欲しくは無い。
今回のお話を読んで、よりその想いは強くなりました。
でも、「後輩入部」展開は高校野球漫画に限らず、部活漫画には既定路線ですよね。
このイベントを排除しても問題は無いけれど、入れた方が色々とプラスにはなりますから。
ただ、今の11人に加えることが…ねえ。
特に全員同学年という点が、このイベントを難しくしている気がします。
過去、ナイン全員が同学年という設定の漫画を思い返してみます。
とはいえ、僕が思い出せたのは「ROOKIES」だけでした(汗
この漫画では、非常に綺麗に新入生加入イベントを消化していた気がしますね。
元不良の集団という特徴を使って、喧嘩(決闘)させる事で新入生を馴染ませた。
血気盛んなキャラが多かったという事もあり、部内のポジション争いにも良い意味で刺激が与えられ、自然に浸透したように見えました。
うん。参考にならんですが、西浦ではどうなんでしょう。
多分1人か2人位は入ってくるんでしょうね。
0という方が不自然ですし。
とすると、どのポジションの選手が入ってくるのでしょう?
僕は今作は「キャッチャーが主役」の漫画だと思っております。
だから、キャッチャーが入ってくると面白いと思うのですが、すると今回の武蔵野第一と被るんですよね。
なので、確立としては低くなったのかもしれない。
まあ、武蔵野のこの展開が、将来の西浦新人への長い布石なのかもしれませんけれども。
もう一つは、やっぱりピッチャーでしょうか。
僕がどう見ようと、この作品の主役は投手の三橋ですから。
現実的に考えても第2の投手は必要ですし。
花井と沖のような急造・急場凌ぎではなく、本格的な投手は、今後夏の大会を乗り切るには必要でしょうから。
高校野球は1人のエースで勝ち進んでいく事も珍しくも無いですけれど、三橋はそういう投手では無いですしね。
「リアル」を求めるならば、求めているこの漫画なら、第2の投手は居た方が絶対に良い。
後輩の件は、まだまだ先の事ではあると思います。
しかし、チームの絆が強くなった件を見せられ、更には新チーム移行の事を見てしまうと、どうしても西浦の新チームについて考えてしまいます。
始まった”2年目”。
どのような展開が用意されているのでしょうね。
- 作者: ひぐちアサ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/04/23
- メディア: コミック
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