この記事は
「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 アンソロジー3 結衣side」の感想です。
ネタバレあります。
はじめに
「俺ガイル」アンソロもラストです。
順番は前後してますが、僕にとっては4冊目となった「結衣編」。
感想です。
【川岸殴魚】こう見えて、由比ヶ浜サブレは賢い。
結衣が家族旅行に行く際、比企谷家にサブレを預けるエピソード(5巻)あったじゃないですか。
何気にあれ好きなんですよね。
バウリンガルでしたっけ。
犬の気持ちを言語化するアプリを使って遊ぶくだりが特に好き。
旅行から帰って来た結衣がサブレに「この人、だれー?」って言われちゃうやつ。
サブレの可愛さ、愛犬に立った数日で忘れ去られる結衣の残念さ、そしてサブレの頭の残念さが、たったの一言に凝縮された名シーンですね。
未だに大笑いできるくらい好きなシーン。
犬って頭が良くて、飼い主の顔を忘れる事は無いって聞くじゃないですか。
逆に猫は数日見ないだけで忘れちゃうというのも一緒になって良く聞きます。
ホントのところは知らんけど。
これに倣えば、サブレはあほの子なのかなと思うのですが、ここで新解釈です。
サブレは人の顔をすぐ忘れるあほの子ではなく、単に結衣のことを自分より下に格付けしてた!!
有り得そう(笑
たったこれだけで結衣のあほの子属性を強調させる見せ方は嫌いじゃありません。
さてさて、やっぱり川岸先生は女の子書いてる方が良いなぁ。
編集長のような謎の生体を生みださないで「普通の」女の子たちのキャッキャうふふをこれからも生み出して欲しいです(笑
【境田吉孝】由比ヶ浜結衣はやっぱり料理ができない。
結衣のアイデンティティは3つ。
純粋。愛に対しても一途だし、基本的に人を疑わない。
あほの子。萌え属性の1つをギリギリ現実でも有り得そうなレベルで保持してる奇跡の娘。
そして、料理が残念。これも属性の1つですが、境田先生の短編はここに焦点を当てたモノ。
恐らく偶然だと思いますが、アンソロ4の原作(渡先生著作という意味)で料理べたを徐々に克服しているという描写がありました。
この短編は、まさしくそこに繋がっていってもおかしくないような内容でした。
独自の世界観やキャラ解釈を盛り込むのもアンソロの醍醐味の1つとすれば、このように「原作にあってもおかしくない」物語もアンソロの魅力の1つですね。
【白鳥士郎】どうしても、由比ヶ浜結衣は麺を食べたい。
これもまた「原作にあってもおかしくない」一遍。
京都への修学旅行で八幡達がこっそりと食べたラーメン。
そいえば結衣だけ行けませんでしたね。
もしそのエピソードを結衣が知ったらと妄想を膨らませると、間違いなく作中のような行動を取るでしょうね。
恋する女の子の嫉妬かわいい。
無料案内所に飛び込んじゃうのもピュアピュア結衣ちゃんらしい。
それにしても珍しくモデルになったお店がヒットしません。
閉店したのかなと思ってググってみたらありました。
「富士見 大勝軒」ってところかしら。
「昔ながらの味を守ってる」とか「つけ麺」とかキーワードだけを拾って連想出来たのが大勝軒だけだったので。
ラーメンって体調とか気候によって感じ方が変わってくる食べ物ですからね。
作り手によっても違うし、1回だけでは一概に「昔より美味しく感じなくなった」とは言えないと思うのと謎フォロー。
【田中ロミオ】隠密スキル(Lv.MAX)比企谷八幡の災厄
ちょっとだけファンタジー入っちゃった…と信じたい。
決して片目が前髪で隠れちゃった程度で八幡の存在が周りから認識されなくなってしまっただけとは思いたくない。
そんな悲しい事実信じたくない。
田中先生は文章も上手いけど設定も本当に上手い。
ファンタジーかどうかはこの際横に置いて、ごみいちゃん大好き妹すら認識できなかった八幡という事実を提示した上で結衣に一目で認識させるというのは超絶分かりやすいです。
戸部やその他モブが八幡を認識できてないっていうのは、「小町と結衣の対比」を目立たなくする為のものですね。
「八幡が人の目から認識されなくなってる」というのを読者に事実として受け止めさせる為の撒き餌。
そうして「八幡は誰の目にも認識されない」ことを事実と理解した上で、結衣だけはいつも通りに認識しちゃう。
彼女だけが特別で、肉親(小町)よりも八幡を意識しているという構図が自然と読者に刷りこまれる訳で。
こういうの本当に好き。
ということで、本作のマイベストエピソードでした。
【八目迷】猫と団地とランド
悲劇しかない想像しか出来ず、それが真実であると思ってしまうのであれば、その逆があったって別に良い。
結衣が猫を苦手としているという設定から膨らませたエピソード。
語られた苦手な理由は、思っていた以上に陰鬱としたものであったけれど、逆にそれが良い。
トラウマ云うくらいなのですから、これくらい重くて正解なのでしょう。
それだけで終わっちゃうと、僕の好みでは無いのですけれど、希望をしっかりと差し込んでくれていたので救いになってました。
猫カフェの老猫が結衣を思い出したかのようなリアクションを取ったら、それはあまりにもフィクションじみた陳腐なものになっていたと思います。
ただただ「保健所から引き取っている」「結衣が仔猫を想起した」という匂わせだけに終始してくれたお陰で、勝手に希望を見出して救いと出来る作劇が良かったです。
【水沢夢】今日も由比ヶ浜結衣は、その一言に思いをこめる。
結衣のアイデンティティ、もう1つありましたね。
寧ろ料理下手を入れるより、こっちを入れるべきだと言うまである。
「やっはろー」は、結衣の立派な個性でした。
僕も好きだなぁ、この挨拶。
結衣らしさが凝縮されてる。
可愛さ、親しみやすさ、明るく元気なところ。
陽の属性を一言に懲り固めたような印象があります。
個人的には、今作もベスト並みに好き。
もうベストが複数あっても良いじゃないってくらい。
何も見ずに八幡の腐った目を描けると自負する結衣の好意には、やはり八幡は見て見ぬフリでしょうか。
【渡航】いつか、その甘さを好きになることができる気がする。
雪乃編に続き、父親目線で娘を描こう第2弾。
こういうのは本当に原作者にしか描けないし、本編でもなかなか難しいプロットのように思うのです。
アンソロは、こういうの贅沢だよなぁと。
沙希がバイトするホテルのバーに集いし、ぱぱのん、がはちち(語感がよろしくないけど、結衣の父)。
そんで恐らく八幡の父。
八幡の父ちゃんは、あれだな。
娘(小町)可愛さに、息子の恋路の邪魔しちゃってるな、これw
いや、真相を知ったところで全く後悔とかしないだろうし、むしろ、やってやったぜ的にがはは笑いしそうではあるけど。
それにしても父親目線でしか見えない一面ってありますよね。
ほんわか結衣さんも父親に対しては一般的な年頃の娘さんなのですね。
塩対応結衣とは珍しいものを見れました。
終わりに
アンソロシリーズ総括でも。
何本か「ん?」と感じるものもありましたが、基本的に高い水準で纏まっていたアンソロ集でした。
流石に僕でも知ってる錚々たる有名作家陣を配しただけあって、バラエティに富んだ読み応えがありましたね。
面白かったです。
渡先生の新作も4本も読めて幸せ。
しかも、どれも原作最終巻のあとの時系列ということもあって、尚嬉しかったです。
まだまだ続いてくれるようですので、アンソロ5弾でも新作書き下ろし短編集でもどんと来いです。
あ。
アンソロなら「いろはside」お願いしやす。