「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 第12巻 感想

この記事は

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」第12巻の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

感想

なんかもう一言。

感無量。

これに尽きます。
前巻の感想で、

ここまで兄貴ラブの気持ちを読まされると、ちょっと「気持ち悪い」とまでは思えないかな。
フィクションですしね。
桐乃が最後に笑う展開でも良いと思うw

と書きました。

正直、正直に言えば、やっぱり僕も兄妹での恋愛なんて有り得ないと思うし、気持ち悪いと思っちゃう。
目の当たりにすれば、ドン引きしちゃう。

でも、やっぱり、ここまでストレートな…。
小さい頃からの大切な最初の気持ちが成就する展開を読まされると、感動してしまう。
本当に簡素な「はい」の一言を、ああやってイラストをバックに使われると、もうダメですよ。
演出としては、あざといのかもしれないですが、ラノベでこれ以上のイラストの効果的な使い方は無いんじゃないかと思っちゃう。
というか、ラノベだからこその演出ですよね!!

2人が恋人になった瞬間は、もう本当にこれで良いんだと思えてしまう力がありました。

でも、あれですね。
最初は、健全な兄妹関係を面白おかしく描いたコメディだと思ってたんですけれどね。
目ん玉飛び出る位驚いた桐乃の「エロゲーよりすっごいことしてやるんだから!」発言からの京介の

「俺と、結婚してくれえええええええええええええええええええええっ!」

ですからね。
こんな展開、誰が想像できたかwwwww
1巻読んだ時点で、これ想像出来ていた人は神ですよ。

それでいて、きっちりと常識を捨ててない所が、また…ね。
最後の「別れる」というオチは、複雑な読後感を与えてくれました。
これで良かったんだろうという気持ちと、それで良かったのかという気持ちと。

ただ、これも京介の償いってやつでしょうかね。
償いというのはちと大袈裟かもですが、まあ、作中で本人が近い意識を持っているので、合ってるとは思う。

彼の事を想い、そして涙を流していった子らへの償い。

黒猫
あやせ
秋美
麻奈実

なんだか加奈子だけ、ついでっぽい描かれ方でしたけれども…。
そこはなんだか加奈子らしかったので、これで…良かったのかな。
兎も角彼女らの想いに応えられなかった事への償い。

って言うのも普通はオカシナ話なんですけれどね。
男女間の好いた振られたなんで。
それでイチイチ「償い」なんて言葉を選択するのは変なのですけれど、普通の振り方では無かったですからね。
まさしく「気持ち悪い」と両断されるに相応しい、異常な想いの為に”踏みにじられた”訳で。

だからこそ、京介は彼女らの誰とも今後一切恋愛沙汰になっちゃダメなんですよね。
勿論京介もそういう覚悟の元に振ってきた訳で、その辺「10年後の彼ら」がどうなっているのかで確認出来る事ではあるんじゃないかなと思っております。

桐乃が妹モノに嵌った訳から思った事

結局桐乃が、妹モノに嵌ったのは「許されない恋路が許される形のままで終わる」事があるからだったのかな。
そこに、夢を見て、そして京介に知ってもらいたかった。
こういう愛の形もあるんだという事を。
こういう未来に自分を導いて欲しいという事を。

ただ、桐乃はそうじゃないものも沢山あると言ってました。
ゲームという非現実的な・夢を託せる世界でも、現実的な問題に直面し、翻弄され…。
中には破局以上の悲しい結末を迎えた作品もあったのかもしれません。

前に作中で桐乃がやってたエロゲーもその一つかな。
両思いになった兄妹が、離れ離れになってしまってたような。
えと、桐乃がアメリカ行く直前にやったゲームだった…かな?
悲恋のまま終わった作品に、必要以上に感情移入していたのも、自分と重ねていたからだとハッキリ描かれたわけですね。

そんな桐乃だから、ハッピーエンドで終わる実妹ゲームの様な展開に進んでいても良かったのに、そうはしなかった。
結局最後は麻奈実が持って行ったのかもしれないな〜と。

兄妹エンドを選択しなかったのは色々と理由があるんでしょうけれど、根源的なものは麻奈実から聞かされた事だったのかもですね。
どんなに好きでも、兄妹では結ばれないし、結ばれてはいけない。
自分たち以外誰も幸せにならない未来だから…。
結局は常識人な桐乃だからこそ、選択できなかったのかな。
だから、そんな夢は諦めて、しかし、子供の間だけでも子供の頃の気持ちを成就したかった。
彼女が中学卒業を子供の終わりとしていたのは、そういう気持ちがあったからなのかもしれないなと感じました。

兄妹が居る人は分かると思いますが、子供の頃って妹が兄を・弟が姉を好きになる事って割と普通の事ではないかと思うんですよね。
(僕自身は妹の居る兄貴だったので、そういう経験は無いですけれど、実際今では考えられない程、うちの妹も自分にピッタリくっていてましたし…。妹が自分にどういう感情を持ってたかまでは知らんですが)
フィクションでも「お兄ちゃんのお嫁さんになる」みたいな台詞を吐く妹(但し幼児の時に限る)が描かれる事も珍しくありません。

桐乃はこういった割とありふれた兄を持つ子供(妹)が持ちやすい感情を、ずっとずっと持ち続けてしまった子。
だから桐乃からは「気持ち悪い」という感じはあまり受けませんでした。
素直に感動できたのも、そういう部分が大きかったからかもしれない。
(今になって妹を好きになってしまった京介は気持ち悪いままですけれどもwww)
そんな小さい頃の気持ちからの卒業という意味で、子供から大人に変わる節目で「別れる事」を望んだのかもしれませんね…。

桐乃視点で振り返ると、「子供時代との訣別」というものもテーマ的にあったのかもですね。

キャラが最高

キャラが好き過ぎる作品でした。
嫌いな奴が一切いない素晴らしい作品でしたよ。

先ず男性陣。
どいつもこいつも自分の欲望に忠実すぎる連中で、見ていて気持ち良すぎ。
京介は言わずもがな。実妹を本気で好きになる究極の変態でした。
でも、自分の本音を、周りの目なんて気にせずに発言できるのは、とっても格好良い。

赤城。
どうしようもない兄貴だけれど、凄い面白いキャラだった。
そして、どうか瀬菜の事は認めてあげて欲しいwww
真壁君も実に良いキャラじゃないかw
きっと仲良くなれると思うんだ。

御鏡。
最後の告白は盛大に吹いた。
最初から好きなキャラでしたが、余計に好きになりました。
彼もまた、自分の欲望を曝け出した良い奴でした。
彼を主人公にした外伝を割と真剣に希望。

他にも親父や部長など、揃いも揃って良いキャラばかりでした。

女性陣。
みんな可愛らしいですよね。
今巻なんて卑怯ですよ。
黒猫やあやせとの楽しかった日々の思い出なんて無くたっていい。
散々描写されてきた事だから。
でも、それがあったから余計に彼女らが振られて泣き悲しむ様は、読んでいて辛くなりました。

活き活きとした楽しい面を見せてからの、告白失敗というドラマは、王道パターンだからこその威力が凄かったです。

秋美とかも、登場したばかりだったのに、かなり好きだったんですよね。
加奈子も一種のネタキャラとして機能していたし、沙織が居ないとこの物語は始まってすらいなかった。

で、麻奈実。
黒猫ともあやせとも違う、「京介を一番想っていた」子。
桐乃とのキャットファイトは、描写以上の激情があったんでしょうね。
本当に良い子だった。

桐乃。
台詞がきつ過ぎる嫌いは確かにありました。
別にイラッとする事は無かったですけれど、自分が言われたら、かなりイライラするだろう台詞を吐きまくりの子でした。
「自分の妹だったら」と有り得ない仮定をすれば、色んな意味で京介は何故好きになっちまったんだと思っちゃう子。

でも、ちょっとひん曲がってるけれど、根は真っ直ぐな子で。
純粋に京介を・兄貴を大好きで大嫌いに育ってきた。
それが桐乃を好きでいられた理由かもしれません。
あと丸い所が堪らなく好きでしたw

メインは勿論端役に至るまで、本当に面白いキャラクターばかりでした。
前も書きましたが、新シリーズの合間とかでも良いので、京介・桐乃以外のキャラ視点の外伝を読んでみたいものです。

総括

えと。
ホント、凄い作品でした。
結局は、高坂兄妹が「普通の・世間一般的な健全な兄妹関係」になるまでのお話だったんですね。
最初に桐乃の兄への「異性としての愛情」があり。
近親婚のタブーという絶望、尊敬していた兄への幻滅、冷戦。
エロゲが繫げた関係から始まる数々の人生相談。
和解・理解があって、両想いになり、そして別れる事で、一般的な兄妹関係になる…。

そこに、色々な個性強すぎる面々が加わって、実に楽しく・騒がしいお祭りのような物語となっていた。

腹抱えて笑えて、ちょっと泣けて。
しんみりできて、いつまでも見ていたくなる。

そんな素晴らしいシリーズでありました。
非常に取り留めも無い感想となってしまいましたが…。
個人的には、「スレイヤーズ」を抜いて、No.1ラノベ作品になったかもしれません。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)

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