「俺の彼女と幼馴染が修羅場すぎる」最終第18巻感想 ラブコメとしての終わりと「夢を追う少年たちの物語」としての終わり

この記事は

「俺修羅」第18巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

中断期間を含めて11年間の物語のクライマックス。
僕はアニメで作品に触れて、原作はつい最近手を出しただけなので、11年追ってきたファン程の感慨は無いのですけれど、それでもしんみりとなれる良いエンディングでした。

感想です。

これぞ俺修羅

17巻の感想でも触れましたけれど、途中から作品のトーンが変わった本作。
だけれど最後は原点回帰。
これぞ俺修羅というノリでした。

29歳という設定は、ちゃんと作品の11年間とリンクさせているのですね。
夢を叶えて南の島で診療所を営む鋭太の元に集うヒロインズ。
相も変わらずの銀髪の悪魔が裏で全ての糸を引いていて、最後は千和と小学生染みた修羅場で締める。
タイトル回収、トーンも初期に戻って、メンツも千和と真涼が鋭太を間に挟んで争うというもの。

11年できちんと大人になって、成長をした半面、根っこの部分は高校生の当時と同じ。
物語開始時と終了時を比較して、「何も変わってないじゃん」と思えるのが最高だよね。
これまでもこれからも変わらぬ日常が続いていくってことを想えるのだから。

「夢に向かって直向きに走る少年少女たちのドラマ」としてのフィナーレが最高だった

「俺修羅」って「未来を見続けてきた」作品だと思うのです。
主人公の鋭太が「一生ガリ勉」を標榜し、医者になるために奔走してきたからですね。
ラブコメと比肩する作品のもう1つの柱が「夢に向かって直向きに走る少年少女たちのドラマ」だったのかなと。

であるならば、「夢を叶えた姿」をエンディングに持ってくるのは必定。
18巻が蛇足か否かで考えれば、僕は「必要だった」と声を大にして言いたい。
その上で、「夢を叶えてハッピー」で終わらないのが最高だったよね。

漫画家になった姫香の悩み。
夢と現実の落差に生きる愛衣。
ここら辺のトーンは、後半のシリアス成分を活かして、実によかった。
「夢を叶えた。今が幸せ」だけだと、やっぱり薄く思えちゃうからね。

鋭太もそうかな。
彼自身の日常は、「今が幸せ」に終始していたけれど、研修医時代の仲間のエピソードを掻い摘んで描写することで「影」のような面をきちんと見せてくれている。
鋭太は不便に感じてないようだけれど、多くの若者にとっては、彼の環境そのものに「幸福さ」を覚えることは少ないだろうから、そういった面でも大変さは感じたかな。

「姫香も愛衣も現実から目を逸らさずに前を向いて、鋭太の元から立っていく。」描写も、17巻のラストシーンを体現していて、ここもラストに相応しいシーンだった。

疲れたり、悩んだら、南の島にいる鋭太の元へ帰ってくる。
そして、英気を養ったら再びそれぞれの夢へ向けてひた走っていく。

ただただ5人がくっついてハーレムになって終わりというのも悪くないけれど、「夢」を蔑ろにしないこの形での締めくくりもテーマを尊重した素晴らしいものだっと思います。

終わりに

ラブコメとしての終わりと「夢を追う少年たちの物語」としての終わり。
短いエピローグの中に2つの終わりを確りと描いた珠玉の締めでした。

裕時先生の次回作も期待してます。

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