「変猫」を読んだ。
4月から「変態王子と笑わない猫。」を読み始めました。
アニメも見ていたのですが、殆ど記憶を無くしてましたので。
仕方ないね、昔猫に祈ったから。覚えてられないんだ。
殆ど忘れてたこともあり、あれよあれよという間に最終巻まで読みました。
以下、「変猫」のネタバレあるので注意!!
感想的には微妙だったりします。
決してつまらなかった訳ではありません。
最後までいっきに読ませる力がありましたので。
展開には引き込まれましたし、キャラも良かった。
然しながら、夢オチ同然の結末が納得出来なかったのです。
積み上げてきた想いが霧散し、夢が果てて、叶えたかった願い”だけ”はあっさりと成就。
陽人を取り合わなくて良くなったという意味では、確かに「女の子の悲しむ顔を見たくない」という本懐は遂げられてますが…。
僕が望んでいたのとはちっとばかし違ったので…。
自分の思い描いていた結末と異なるからダメというのは、批判の理由としては最底辺だと自覚しつつ、「これまでの気持ち」を無かった事にしないやり方を採択して欲しかったんですよね。
結末ばかりに目が行ってしまったのは、陽人に今一歩感情移入出来なかったからでしょうか。
女の子優先で行動を起こしてしまうのは理解出来ます。
何故そう考えるようになったかのバックボーンがしっかりとしていたので、その点は感情移入出来ました。
それでも、彼の自己犠牲精神は度が行き過ぎてました。
ラノベ主人公よろしく鈍感なのも手伝っていたのでしょうけれど、もう少し月子の心情を考えてあげて欲しかった。
自分が犠牲になる事で、悲しむ女の子がいるという現実に気づけなかったのか、分かろうとしなかったのか。
最終的にはハッピーエンド(?)に持って行ってましたが、結局自分の考えが信念に背いてしまってるのは残念だったです。
まぁ、完璧な人間よりもどこか欠けた人間の方が面白味も親しみもあるから、キャラ作りとしては全くもって間違ってはいないと思いますが。
やはり好みの問題ですね。
あとは、ある一定の条件下の記憶を失っていくというのも関係してるのでしょうけれど、字の文がどこか他人事だったのももにょっている理由。
色々と理由づけては見ましたが、正直はっきりとしたところが見えてこないです。
この辺が「微妙」という評価になっている一番の原因ですね。
作品は悪く無い。悪いのは僕だ。
そんな面白いような微妙なような。
少々煮え切らない想いを抱えていて、ただどこかで信じていたのかなと思う。
さがら総先生の書くコメディは面白いという期待感があったのです。
何故か。
「ガーリッシュナンバー」が好きだからです。
「ガリナン」
ああ、別に勘違いとか間違えてる訳じゃないです。
「ガーリッシュナンバー」の原作は「俺ガイル」の渡航先生。
大丈夫です。
正しく認識してます。
このアニメで、さがら先生は、4,5,8~10話の脚本を担当。
(8話は菅原雪絵さんとの共著)
どういう経緯で担当する事になったのでしょうね。
インタビューを読む限りは、原作は完全に渡先生1人で作られたようですから、Speakeasy関係で…というのは無さそう。
ただ渡先生が「かなりシナリオには口出した」と仰ってるので、「口出ししても問題無い信頼のおける人物」が選出されたのかなと勝手に妄想してます。
兎も角、原作があるとはいえ、さがら先生の脚本回は面白かった。
渡先生脚本回と遜色ない面白さでした。
で、注目は9話「焦燥千歳と疾走ルーキー」です。
松岡重三という(主人公・烏丸千歳の2代目)マネージャーが出てきます。
名前からキャラは察して下さいwうざい熱血漢な彼は、凄く活き活きと描写されていました。
表面的には本当に暑苦しいんですよね。
自分の意見を気合いや根性論で押し付ける性格で、正直苦手なタイプだし、千歳が引いてたこともあり「鬱陶しいキャラ出て来たな~」という第一印象を持ちました。
ただ、話が進むとその印象が変わるようになってるんですよね。
考えを押し付けるのは間違いないけれど、その考えが間違っていない。
伝え方が押し付けがましくて「相手の気持ちを考えていない」ようで、その実「相手にとって正しい考え」をぶつけてくる。
根っこの部分をしっかりと理解してあげられると、そこまで嫌なキャラじゃなくなるんです。
さがら先生は、この仕事の経験を自著に取り入れてるのかなと感じたのです。
やっと今作の感想です。
長く回り道しました。
今作は、塾講師+ライトノベル作家という主人公を中心としたコメディです。
僕は、「自身の経験を基にした作品」が好きです。
やはりそこには、経験した者にしか分からない気持ちが込められているからですね。
どんな作者も、題材に対する取材はするはずです。
職業モノであれば、題材となる職業について調べ、実際にその仕事に従事している人へのインタビューもするでしょう。
綿密な取材に裏打ちされた確かなリアリティが備わる事は想像に難くありません。
然しながら、「本当の気持ち」というのは、その仕事をしてみないことには分かりません。
体感からしか得られない感情って絶対にあるはずです。
他人の喜びや悩みに共感・想像ができても、真の理解は得にくいもの。
取材からの知識では書けない感情ってあると信じています。
さがら先生は、言うまでもなくラノベ作家です。
「変猫」という代表作を持つ売れっ子なので、ラノベ作家の良い面も悪い面も知っている筈です。
売れないまま筆を折らざるを得なくなった作家には知り得ない「売れた者にしか分からない苦労」も知ってるでしょうし、その逆も分かるのかなと。
また、現在は不明ですが、少なくとも2012年までは*1塾講師を兼務されていたようです。
塾講師を実際にやってるからこそのリアリティがありました。
アルバイトと正社員の待遇の差や、実感籠もった悩みや葛藤。
仕事の辛さと、「それでも塾講師であり続ける」理由の深み。
経験者だからこそ書ける自身の気持ちの代弁を主人公に託している。
故に面白い。
さがら先生が普段どう自然と小学生女子と触れ合っていたのか。
どのような目線で小学生女児を愛でていたのか。
その様子が克明に、丹念に綴られているのです。
体験者にしか描けないリアリティを伴った女児との触れあいがそこにはありました。
さがら先生は変態さんですね。
完全完璧全璧にロリコン先生ですね。
まぁ、さがら先生が一流のロリコン先生だということは、同類同格の白鳥士郎先生のお墨付きですからね。
しょうがないね。
兎も角、主人公の「塾講師兼ラノベ作家」の生き様がリアルすぎて、それを面白おかしくコメディ調で纏めているので、面白くない訳がない。
星花に脅迫されるシーンは腹抱えて笑いました。
僕はロリコンネタが大好物のようです。
白鳥先生の「りゅうおうのおしごと!」でも主人公の八一が「ロリ竜王」として周りのヒロインズから弄られているシーンが大好きだし、今作もそう。
編集された独白テープをネタにロリコン呼ばわりされて、社会的に抹殺されそうになって慌ててるシーンが面白くて仕方ない。
陽人よりも素直に主人公の天神を気に入りました。
お話は、大局的には何も解決せずに次へ続くというプロットなので、人によっては満足感を得にくいかもしれません。
ただ局所的には、しっかりとオチが付いています。
大事なのは、天神が塾講師としても、ラノベ作家としても「以前の輝き」を取り戻すことです。
その確かな第一歩が記されていて、そこに今回のヒロインであるシャークが大事な位置に鎮座マシマシしていた為に、僕は大きな満足感を得ました。
非常に続きが気になるラノベでした。
スターシステム?
「変猫」ファンは必見ではないでしょうか。
本文で明言される事は無いかもですが、確実に同一世界観ですよね?
ファンサービスの域を超えてると思います。
メインヒロインが筒隠星花。
サブヒロインに舞牧ひらり。
笑わない猫が出て来て、星花のお母さんの口調がどう考えても月子。
ロリコンを敵視(笑)してるのは、陽人の影響ですね、間違いなくw
「変猫」を知った上で、色々な小ネタを拾いながら読むと一層楽しいです。
あと、室長。
松岡重三にクリソツです(笑
こういう過去作の活かし方、凄い好きです。
終わりに
コメディとしてド嵌りしたので、当然続刊は買います。
面白かったです!!
*1:『このライトノベルがすごい!』2012年度版インタビューより