この記事は
「【推しの子】」第16巻の感想です。
ネタバレあります。
物議をかもした最終回、遂に読む
厳密には、最後の1話前か。
やっぱりキャラクターの死って良くも悪くも衆目を集めるよね。
感想です。
ネタバレすんなと思いつつ強烈に同意した
あのエピソードが「週刊ヤングジャンプ」に載った少し後のこと。
とある日、とある本屋で、とあるカップルがしていた話。
たまたま傍にいた僕が一部だけ聞こえてしまった話。
見た目陽キャ20代前半くらいの彼氏が、自分の彼女に「どれだけ有馬かなが可愛いか」力説していました。
その彼氏は本当にかなにのめり込んだらしく、かなの恋愛が成就することだけを一心に願って読んでいたらしい。
かなをどうして推せるのか。
いじらしいまでのアクアに向ける強い想いに心打たれたという彼氏さん。
だからこそ、だからこそ、アクアが死を選び、かなが慟哭した場面を見て、酷く絶望をしたというのです。
あまりにも酷すぎるラストであると。
故に、もう読みたくないと断言していました。
コミックス派の僕は、不慮の事故でネタバレされたことに嘆きつつも、そりゃそうなるわなぁと共感。
なんなら僕もかな推し。
彼氏さんと同様にかなの恋が実って欲しかった派です。
アクアがかなの事を想っていると判明し、(゚∀゚)キタコレ!!ってなりましたもの。
希望通りのハッピーエンドが待ち受けていると信じて疑ってませんでした。
どういった終わりなのかも知ってしまった上で、それでも「その後を描いた描きおろしエピソード」に淡い期待を抱きつつ読んだ最終巻。
分かってはいても辛い、あまりにも辛かった。
辛かったし、最後の希望だった「描きおろしエピソード」の内容も「違う、そうじゃない」と僕の中のアニソン界の大型新人が騒ぎまくり。
カラスの化身のような幼女神様っぽいのにアクアが蘇らせてもらって皆笑顔という予定調和を期待してたのに。
アクアの死。
それに伴うかなやルビーの絶望感。
どんなに悲しくとも人は立ち上がることの出来る(勿論立ち上がれないことだってある)生き物で、かなもルビーも悲しみを抱きつつも強く逞しく前を向いて歩き始めたという締め方は、痛みだけを残した訳ではないビターな終わりだったとも言える。
吾郎やアイが殺され、復讐に生きた中で、真犯人だけが捕まって、最後は皆で笑って終えるハッピーエンド。
そんなのよほどご都合主義で毒にも薬にもならない物語よりかは百倍マシという意見もあるかもしれない。
それでも、どんなにご都合主義でもそういったラストを見たかった僕としては、やっぱり何を言っても辛いものは辛かった。
ただ、ただそれでも、「人間らしさ」をアクアの最期に見られたことは、ほんの些細な「救い」になっていたなとも思ったのです。
生にしがみついたアクアに見た本当の顔
自分の感情を極力殺して復讐に人生を捧げてきたアクア。
最後はルビーを守るために自分の命を犠牲にして、憎きカミキヒカルもろとも海に身を落とした訳ですが。
全て覚悟を決めた上での行動。
自分のお腹にナイフを突き立てた最初のアクションが彼の覚悟の全てを物語ってましたよ。
そこまでの描写が無かったので恐らくという予測でしかないけれど、「カミキに殺された被害者を装う」としたのだから、その傷は浅くは無かったはずです。
致命傷か、それに近い深さで腹部を刺したはずです。
ここには、医者だった頃の経験が活きたのかもしれない。
刺した瞬間絶命しない程度に、その後もカミキを海の底に沈められる余力を残す程度に、されど、「殺意を持って刺された」と警察に思われる程度に。
なんにせよ、自分のお腹にそれだけの深さまで刃を入れたのです。
間違いなく死を覚悟した者の行動。
それなのに、死の間際、アクアは藻掻いた。
海中で生きたいと願った。
痛い、寒い、怖いと嘆いた。
後悔し、死ぬことを躊躇い、生への執着を見せた。
酷いシーンだなと思ったよ。
死にたくないと言いつつ死んでいく様を見届けるというのは、本当に心が痛む。
創作物であっても、読んでいてしんどいシーンのトップ3には確実にランクインする程、僕は苦手。
どうしてこんな酷い仕打ちをアクアにするかなぁって。
そう思わずにはいられなかった。
あまりにも辛抱堪らないシーンだったのだけれど、辛さと同じくらい不思議と「良かったなぁ」と思えた。
矛盾。圧倒的な矛盾。
何を言ってんだと思われるだろう。頭おかしいんかと言われても仕方がない。
けれど事実だから仕方ない。
死の間際だからこそ、アクアの偽らざる本音が見えたんですよ。
ルビーの為に死ぬことを選択したのも本心。
その上で、もしかしたらそれ以上に、その選択を後悔し、ルビーの傍で何もない日々を過ごし、かなと恋をし、あかねに恩を返し、MEMら仲間達と楽しく生きていきたかった。
そういった生の感情が出ていた。
ずっと心を偽っていたからこそ、アクアの顔が見えて、「良かったなぁ」って。
アクアの死を受け入れるとか肯定は出来ない。
予定調和、ご都合主義全開のハッピーエンドを今でも望んでいる。
そういうラストだったけれど、ほんのちょっぴり。
少しだけは、このラストを許せた自分も居ます。傲慢な言い方だけれどね。
終わりに
切ない。