「プーと大人になった僕」は現代社会に生きる大人向けのお伽話【ネタバレ感想】

羽入君に負けない

僕は羽入君には負けていないと自負してることがあります。
プーさんへの愛情です。
数あるプーの中でもウチの…いや、世界一可愛いプーさんがこちら。
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超可愛いです。
ちなみに電話中です。
相手はピグレットでしょうか。
この顔見てるだけで癒されますね。

そんな訳で、初日に見てきました実写版。
正直肝心のプーさんの顔がブサ入っていて、そこが残念って言えば残念でしたが。
実車作品ならではの「プーさんの世界観」がしっかりと出ていて映画だと思えました。
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以下、感想です。

プーさんの名言

最近本屋に行くとプーさんの名言集的な本を見かけませんか?
割とありますよね。
ネットで検索しても、いっぱい類似サイトが見つかります。

プーさんのおっとりとしていて、まったりした性格。
仲間を大切にする言葉が、現代人の疲れた心を癒してくれるのでしょう。

そんな名言の中でも、代表的なものがこちら。

みんな不可能なことは”なにもない”っていうけど、僕は毎日”なにもしない”をやってるよ。
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プーさんの性格を端的に表している言葉ですよね。
特に後半部分が有名かもしれませんね。
「何もしないをやっている」。
ナマケモノを遥かに凌ぐのんびり屋さんな一面を表現しています。
自分で言っちゃうところがプーさんらしいです。

今回の映画はこの台詞をフィーチャーしていました。

映画の主題

実写化するにあたって、方向性としては大きく2つあったと思います。
ディズニーが仕掛けているので、原作の絵本の世界観を踏襲という方向性は無いとしても、アニメの世界観をそのまんま実写にするというのは、恐らく誰もが望んでいた道だったのではないでしょうか。
のほほんとしたプーさんとクリストファー・ロビンの何も起こらない日々を優しいタッチで映像化する。
そういう実写化もアリだった筈です。
もう1つは、そういった誰もが思い描く絵を描かない路線です。
本作はこちらを採用されていましたが、これは正解であったと思っています。

アニメファンとしては、どうしたってアニメ版を絶対神に置きがちなんですよね。
無駄にハードルを上げてしまって、故に「実写でも面白かった」とは思えないといいますか。
自分の中で自然と「超えられない壁」を作ってしまうのです。
だから、アニメ版とは全く異なるアプローチを見せた本作は、「比べる基準」が無い分、すんなりと受け入れられました。

こういう僕なりの「面白さの基準」をクリアしていたというのもありますが、なによりもアニメと違ったアプローチを見せながら、それでいてしっかりと「くまのプーさん」らしさを取り入れ、「プーさん」である必然性を持たせていたのが大きかったです。

クリストファーがプーさんに「なにもしないをする」を伝えたのが面白い点。
友達想いのプーさんは、彼と別れ、月日が流れても、彼の言葉を忘れずに、ずっと「なにもしない」をし続けてきた。
実にプーさんらしいし、しかも、この言葉が物語の主題にもなっている。

プーさんらしい説教臭くないテーマの説き方

子供時代の終わり。
それは、「なにもしない」を出来なくなること。
そういう流れで、クリストファーは成長します。

大人になり、家庭を持った彼は、戦争を経験したのち就職し、多くの部下を抱えるまでになりました。
すると、色々なしがらみで雁字搦めになっちゃったりますが、クリストファーはまさにそんな感じ。

会社では上司から無茶振りをされ、家に帰っても家族を顧みて欲しいと責められる。
なにもしないなんてしてられない。
必死でしがみついて、泳いで、安全な陸地に辿り着くまでもがく日々。

いっそ現実的すぎて清々しい位にファンタジーの要素がありません。
喋るクマさんも撥ねるトラさんも出てくる気配がありません。

しかし、プーさんにとっては、そんなこと関係無くて。
のほほんとした空気を纏いながら、居る筈の無いロンドンに現れます。
そうしてクリストファーと再会したプーさんは、かつて自分が聞かされた「なにもしない」を伝えて…。

結論から言えば、お伽話に過ぎませんよね。
「なにもしないことが最高の結果を引き寄せる」なんて現実じゃ起こりません。
ディズニー映画だからこそ可能としたファンタジーです。

それでもこの精神は見習いたいというか、持ち続けていたいなと素直に想わせてくれます。
きっと、説教臭くないからですね。

物語の時間軸が戦後間もないロンドンになっているからというのが先ずある気がしますね。
現代にしようと思えば出来た所、原作に合せたのか僕らか見れば「ちょっとした昔」にしている。
絵本の中のお伽話と同じ感覚で日常と切り離して見る事が出来たのは大きいです。

もう1つ、プーさんは決してクリストファーに自分の考えを押し付けてないんですよね。
「なにもしない」ことを強要してないし、強弁もしない。
ごめんねと謝り姿を消したり、最後も無言のまま見守っている。
プーさんのそんな姿勢が説教臭さを感じさせない要因になっているし、また、クリストファーが自ら「間違い」に気づいたことも大きい。

「なにもしない」ことなんて出来ない。
けれど、足を止めてゆったりすることがあっても良いじゃない。
そういう時間も大切だよねってことが気付ければ、この映画を見た意義もあるんじゃないかな。

まとめ

僕は結婚もまだだし、「家族の為に」働いた事も無い。
(そもそも仕事に忙殺された経験が無い)
だから、クリストファーの気持ちも、イヴリンの気持ちも本当の意味で理解は出来てないかもしれません。
けれど、マデリンの気持ちは痛い程分かるんです。

子供時分「仕事で忙しくて休日の少ない父親」を持っていたからです。
仕事人間という訳では無かったですが、週6勤務(数週間休みが無いことも)の午前様。
販売員だったからたまの休みも平日で、お盆も正月も無いような感じ。
当然どこか行くにしても母と妹と3人だけという事が多かった。

「一緒に出掛けたい」
「遊んでほしい」
「仕事ばっかりしてる」
何度こんなことを口にしたか。
母とも口論が絶えませんでしたしね。
僕はマデリンほど大人じゃ無かったから、随分と父には辛い思いをさせていたのかもしれません。

父親としても辛いですよね。
家族の為に働いているのに、働けば働くほど、その家族から非難を浴びる訳ですから。
母としては、仕事の重要さを分かってはいても、家事や育児の辛さ、子供の寂しさを汲んで当たってしまっていたのでしょう。

多分似たような環境は、誰しもが身を置いた事があるんじゃないでしょうか。
若しくは、今現在、クリストファーやイヴリンと似た境遇に置かれている人もいることでしょう。
現代に於いて普遍的で一般的な人々の日常を切り取っているので、きっと誰しもが誰かに共感出来る。
その上で、一服の清涼剤的な形で本作のテーマを汲んでみれば、面白く鑑賞できるんではないでしょうか。

プーさんのビジュアルについても、動いて台詞が付くとイメージが変わりました。
ほっこりして、いちいち笑いながら鑑賞しました。
プーさんの癒しが台詞や動きから、そして、物語のテーマからも感じられる。
「くまのプーさん」以外の何物でもない実写化作品だったと思いました。

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