見て来た。
実は5月31日の仕事帰りに見てきました。
見る直前までは、6月1日付で感想を更新しようかと目論んでいたのですが、鑑賞後色々と考えた末にやめてしまったのです。
それから1日経って、やはり言葉で纏めておこうかなと思い直しましたので、記事にします。
メインを張った俳優陣3人の演技について主に書きます。
“中島かずき節”炸裂
TRIGGERのアニメで中島かずきさんが脚本なんだなと節々で思わせてくれる映画でした。
如月弦太朗が火消しに命を燃やして、「キルラキル」的構造の逆転劇を見せてくれる映画。
端的に表現すると、こんな感じでしょうか。
敵対していた相手が実は…といったところに「キルラキル」と似た仕掛けが施されていたわけですが、但し劇場版ということでよりシンプルな形に「リメイク」。
より王道に、より力技で。
劇中の大半を「火消し」に費やしてたんじゃなかろうかという位、キャラ達が叫び倒していた印象が強く残りました。
映像も刺激的であり、TRIGGERならではの縦横無尽なカメラワークはもとより、色彩が非常に独特。
1つの画面内に強い色を複数配置しているため、ともすれば散漫な印象を与えてしまうのですが、しっかりと纏まって見れました。
それを可能としていたのが、火と水でしょうか。
今作を象徴する火や氷(水)の表現するにあたり、元来の色とは異なる色で着色。
画面を所狭しと燃やす火やそれを消化するための氷(水)を緑や紫を中心にすることで、作品全体の色のイメージも独特なものにすることに成功していたのかなと。
映像と脚本、どちらでも楽しめる娯楽作になっていたと感じました。
ただ…。
なんだろう。
メインを張った俳優陣の演技には懐疑的な意見を持ってしまいました。
違和感の方が強かった俳優陣の演技
松山ケンイチさん、早乙女太一さん、堺雅人さん。
3人の演技を絶賛する声を多く目にしていますので、僕の見方はひどく少数派なのかもしれませんが…。
そもそも、今作をオープニング週で見に行かなかった理由も、ここにあるんです。
予告編での松山さんの演技が受け入れられなかったんですよね。
氏が演じる主人公・ガロ・ティモスは、直情型の熱血漢。
消火活動と人命救助に命を燃やす青年で、どこか如月弦太朗を想起させるキャラです。
その為か、声を張ったシーンが多く、予告でも叫んでいるところを中心にピックアップされていました。
その叫びなのですが、僕には感情が聞き取れなかったんですよね。
大声を張り上げているだけで、そのキャラがどんな心情をもって発しているのかが声からは伝わってこなかったのです。
ただ叫んでいるだけにしか思えず、従って、今作の鑑賞は避けようと決めていました。
それでも見に行ったのは、評判が良かったからです。
元々TRIGGERは好きなスタジオで(やや表現がオーバーでくどく感じることもあるのですが…)興味があったことも理由としてはありました。
然しながら、鑑賞した今でも俳優陣3人の演技には疑問が残ってしまったのです。
(実はこれが鑑賞直後に感想更新を躊躇った要因です)
僕は、舞台俳優の演技と声優の演技は似てると思っています。
大仰に・誇張して。
遠くの観客にも伝わるように演じる舞台の演技論と声だけで演じないとならない声優の演技論は似ています。
日本の声優の歴史を紐解いてみても、舞台俳優が「副業」で洋画やアニメに声をあてていたと記憶しております。
確か当時は専属声優という形の方はいらっしゃなかったとも聞いたことがあります。
そういった歴史を鑑みても、実際2つの俳優業における演技の方法論は似ているのかもしれません。
原作・脚本を手掛けた中島さんも劇作家としても活躍されており、俳優陣3人も中島さんの舞台を踏んだ経験があります。
特に早乙女さん、堺さんは舞台出身の俳優です。
プロを差し置いて、素人の僕が分かった風なことを言っているとは自覚してるのですけれど…。
やっぱり「声優の演技」とは違っていたと思ってしまいました。
3人とも舞台での演技というより「テレビの演技」に聞こえてしまったんですよね…。
ジブリとは違うんだな
芸能人を声優として起用するメリットは、いくつか考えられます。
興行面的には、知名度や人気に頼って幅広く宣伝してもらう為ですね。
ただ、こういった理由での起用は、そろそろ時代遅れになるんじゃないでしょうか。
段々と「アニメに抵抗のない世代」が育ってきているからです。
アニメだからという理由だけで興味を示さない世代を、芸能人の人気で引っ張ってこなくとも、見ようと思わせるだけで抵抗なく見てくれるようになっていくんじゃないでしょうか。
また、「ワンピ」、「ドラえもん」、「コナン」がそうですけれど、芸能人に頼らずとも興行収入を劇的に上昇出来ることが実証されつつあります。
「ワンピ」のように原作者に介入してもらう方法や「ドラ」や「コナン」のように内容で勝負する。
結局は中身が評価されれば、結果は自ずとついてくるのでしょう。
とはいえ、これは毎年のように新作が公開されるから出来ることとも言えます。
一発勝負となると、芸能人に頼りたくなるのも自然な気もしてきます。
さて、そもそも論としてジブリとそれ以外のアニメは異なるんだという認識をキャスティング側には高めていただきたいと、やたら偉そうに言ってみたり。
専属声優を差し置いて、芸能人をキャスティングし始めたのは、ジブリの影響が大きいと思っています。
それから「ドラえもん」や「しんちゃん」、「ポケモン」などの定番アニメが追従し、遂には「コナン」もその波に乗ってしまいました。
(「コナン」は一作目から地味に芸人などを起用してはいましたが…)
深夜アニメ発のアニメ映画を除けば、今や芸能人起用は当たり前となっています。
だけれど、その多くは「失敗」してると思うのですよね。
勿論巧い方はいらっしゃいます。
専属声優さん達と混じっても違和感なく声優を熟している芸能人もいらっしゃるのですが、まだまだ少数。
「下手だなぁ」と感じることの方が多いです。
特に「コナン」はそうかな。
そもそも「コナン」は若手声優すら起用しないという方針をとっていたというのはご存じでしょうか。
諏訪Pは、セリフの掛け合いの間やテンポを重視しているために、それが出来る技量を持った声優を優先的にキャスティングしているとかなり昔ですが仰っておりました。
(若手の中でもそういった技術を会得してる方だっているのでしょうから、「若手」=「下手だから」という意味での発言では無いはずです)
それが「名探偵コナン 漆黒の追跡者」から毎年起用されるようになりましたので、ちょっと納得いかない気持ちを引きずっていたということもあります。
脱線しましたが、ジブリとそれ以外の作品では、起用理由が明確に異なるんですよね。
宮崎駿監督の声優嫌いは有名です。(嫌いというと語弊があるかもですが)
作られた声での演技より自然な声での演技を欲したというのはあるはずです。
監督の…ジブリアニメのキャラクターは、基本的には「どこかにいそうな人物」として描かれていることが多いです。
漫画的アニメ的な誇張が少ないんですよね。
だから、自然な演技が嵌るし、違和感は少ないわけです。
ところが、その他のアニメは漫画的メソッドに置き換えられたキャラクターが多いのです。
件の「プロメア」も同様ですね。
しっかりと型に嵌った・一部が誇張されたキャラクターが活躍するアニメです。
「どこにもいなさそうな人物」だから、「自然な演技」をされると逆に浮くんですよ。
「誇張されたキャラ」を自然と演じるには「誇張された演技」の方がしっくりときます。
「プロメア」に関しては、ちょっとその誇張具合が足りなかったのかなと。
声にキャラの感情が乗り切っていないように感じてしまったのです。
終わりに
さんざん色々と偉そうに書いてしまって、すみませんでした。
最後にフォローという訳ではないんですが。
お三方とも怒鳴る演技以外では普通に聞こえてました。
怒鳴るというのは、感情が昂った時なので、平常時よりも感情を乗せる必要性があるのかもですね。
その辺の技術が専属声優と比べれば見劣ってしまったのかなと。
うん。
最後まで失礼いたしました。
以上になります。