この記事は
「ルパン三世 THE FIRST」の感想です。
ネタバレあります。
はじめに
山崎貴監督という事で、少々不安を持って鑑賞に臨みました。
ううううん。
監督、脚本向いてないよ…。
カリオストロの城を彷彿とさせる物語
考古学の夢を持ちつつ、しかし、育ての祖父から泥棒じみた真似をさせられてきた少女。
半ば支配されてきた少女がルパンと出会うことで、自由になるという物語。
冒険を経て少女はルパンに淡い恋心を抱くが、ルパンは颯爽と去っていく。
うん。
なんか「カリオストロの城」じみてるなと思ったら、実際インスパイアして製作されてたのですね。
長い長い「ルパン」シリーズの中でも最高傑作の呼び声も高い名作。
同時に「異色なルパン」でもあるんですよね。
今作もその辺りの立ち位置は、しっかりと踏襲出来るのかもしれません。
なんていったって初めての3DCGルパンですからね。
この辺りの映像クオリティは、流石の山崎監督。
日本ではトップレベルの3DCGアニメになってます。
でもさ、3DCGである必要性が全く感じなかったです。
「3DCGである必要性」って何さと逆に問われると答えに窮しちゃうんですけれどね。
手書きアニメーション信奉者の僕だからこそ、こんなこと思ってしまいました。
さてさて、問題は脚本ですね。
あまりにも無難で真っ直ぐ過ぎて、捻りもどんでん返しも何もない。
その上、微妙に整合性が取れてないことがあったり、キャラがぶれていた。
痒いところに一切手の届かない脚本
多分なんでもそうだと思うのですけれど、完成映像と完成稿の内容はイコールじゃないですよね。
脚本からコンテが描かれて、それを映像にして編集して。
この過程で、脚本にはあったシーンのいくつかを上映時間の都合上カットせざるを得なくなる。
今作で言えば、例えば、ルパンと次元たちの間のやり取りが無くなってしまったのではないかなと感じました。
銭形に逮捕されたルパンを救出に来た次元と五エ門。
次のシーンでは、自宅に戻ったレティシアの下にルパンが現れて、次元たちとは別れたと言います。
話は進んで、ルパンたちの危機に駆け付ける次元たち。
砂漠の上で再会を果たします。
そこで、ルパンと次元がいつもの言い合いを始めます。
「おまえ、財宝を追ってるんなら俺たちにも言えよ」
「現金な奴」
って感じで。
一瞬「ん?」となりました。
で、次の瞬間カットされたのかなと思ったんです。
プレッソン・ダイアリーの盗難に失敗したことで、次元たちは「俺らは(この件から)下りる」と宣言して、ルパンと別れるシーンがあったんじゃないかな。
若しかしたら、不二子が絡んでることでやる気を無くしたのかもですし、ルパンはルパンでレティシアのことは伏せていたのかもしれませんね。
こうやって想像できるシーンならカットしてあっても問題ないんだけれど、ランベールのレティシアに向ける感情が全く読めなかったので、キャラがブレて映っちゃったんです。
プレッソン・ダイアリーを奪い、財宝を得るためにレティシアを利用していた。
その為に引き取ったのだから、最初から打算ありきなんですよ。
そもそもレティシアの両親を「殺した」のですし、愛情なんて持っていた訳も無く。
育ててるうちに情が移ったとかならまだ分かるんですけれどね。
何故引き取りの際にレティシアには「情があるように」映ったのか。
ここの説明が一切無くて、全く分けわからなくて、だからこそランベールもレティシアも一部の言動がちぐはぐに感じたんです。
ランベール自身「施設から引き取った」と言ってるにも関わらず、ランベールを実の祖父と信じていたレティシア。
引き取ってくれた時に「肉親と思えるほどの情」を感じ取ったからなのでしょうけれど、何故そうなったのかが描かれてない。
基本的にはレティシアを「道具」として扱っているにも関わらず、命は助けようとする。
最期は、自身の命すら投げうってまで助けた。
レティシアを引き取った際の「情」が決して嘘やまやかしではないということが窺えるのですけれど、何故そのような本物の感情を抱いたのかが描かれてない。
完成稿にはそのドラマがあったのかは不明ですけれど、必要なドラマだったんじゃないかな。
あと、そもそもあのオーバーテクノロジーの平和的利用って何???
兵器以外の何物でもないんだけれど。
そっか。
将来的なごみ問題を憂慮して、大量のゴミを無限の彼方に消し飛ばす使い方を想定してたのかなかな。
ここら辺のドラマも欲しかった。
アルセーヌが協力した理由も分かったでしょうし、よりドラマが盛り上がったと思うのよ。
物語に仕掛けが一切無いのだから、その分ドラマを盛り上げる要素やキャラの感情をもう少ししっかりと盛り込んで欲しかったです。
終わりに
相性というか好き嫌いかな。
「スタドラ」は良かったので。
「ドラクエ」は最悪でしたけれど。
今回の「ルパン」は「ドラクエ」ほど悪い印象は無かったです。
ただ、もうちょっと練り込んで欲しかったかな。