この記事は
「食戟のソーマ」に端を発した料理漫画のリアクションに関する記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
はじめに
「食戟のソーマ」の第71話を読みました。
遂にスタンドを出して、オラオラやり始めましたね(笑
どんどんとリアクションが派手というか笑いの方にというか…。
大きなリアクションを取るようになってきました。
ちょっとだけ料理漫画とリアクションについて。
料理漫画に於けるリアクションの位置づけ
絵で描かれた料理からは食欲をそそる匂いもしてきませんし、頬が蕩けるような味も感じられません。
どれだけ絵や台詞で説明されても、どれ程美味しいのかは読者には伝わりにくいんです。
だから、少しでも理解出来るようにと薀蓄が入ります。
食材はどうこう。調理法はあれこれ。
厳選した食材と卓越した調理技術。
そして、料理通をも唸らせる圧倒的なアイディア。
薀蓄によって、その料理がどれ程美味なのか説明している訳です。
でもね。そういう薀蓄は身に染みて「理解」出来てないと、やっぱり伝わりにくいんです。
例えば、宮廷料理がどれ程美味いのか薀蓄で語られても、実際に食した事が無いと分からないですよね。
厳選された食材の良さも食べた経験が無いと、スーパーで売られてる物と何が違うのか区別がつけにくい。
調理法も同じで、同様の調理法で作られた料理を味わった事が無いと、やっぱり分からない。
味に関する薀蓄を理解するには特に経験が必要であって、これは人生経験豊富な読者を想定してるかどうかでリアクションを必要とするかどうかも変わってくるのではないか?
どんな読者層を持つ雑誌で連載しているのか。
料理漫画とリアクションを考えるには、ここから出発する必要があります。
先ず、一定の経験を積んだ大人を読者にしてる雑誌の場合。
青年誌ですね。
青年誌連載の料理漫画では、リアクションに頼る必要性が無いのでしょうね。
薀蓄を正しく理解してくれるという期待の元、あくまでも誌面の料理の美味しさを伝える手段を台詞に頼っている。
大人し目のリアクションを取る作品が多いようなイメージがあります。
しかし、それが出来ないのが少年・少女漫画。
小学生、中学生を主に相手取る訳です。
漫画に出てくるような奇跡の舌を持つ天才料理少年(少女)とかで無い限り、薀蓄を正しく理解出来ない。
勿論料理を説明するのに薀蓄は必要不可欠なので、最低限しっかりと盛り込まれてる事が多いですけれど、読者に味を伝える表現は別の事に重点が置かれている。
それがリアクションですね。
料理を食べた時の、大げさすぎるリアクション。
ここに頼っているのかなと。
では、何故少年誌連載の料理漫画は、ギャグかと思う程奇抜で大袈裟なものになっていくのか…。
「焼きたて!!ジャぱん」に僕の考える「答え」がありました。
バトル漫画に例えてみると分かり易い。
主人公が敵Aと戦闘に入ります。
まだまだ物語が序盤だとすれば、主人公も敵も然程強くありません。
周囲に及ぼす影響というのは知れたものです。
敵Aに勝った主人公。修行をして強さを増したところで敵Bに出会います。
この戦闘では、村が1つ半壊してしまいました。
お互いに強くなった分、周りへの被害も大きくなりました。
更に主人公は敵Cと戦い、遂には都市を丸ごと崩壊させてしまいます。
被害は甚大。
でも仕方ないのです。それだけ敵Cは強く、熾烈な戦闘が行われたのですから。
以下次第に周囲への被害状況は悪化していくのですが、これと少年誌の料理漫画に於けるリアクションは同じだと思うんです。
件の「焼きたて!!ジャぱん」でも描かれていましたが、料理が美味しければ美味しい程、食べた人のリアクションも大袈裟になる。
食べた人の中で、料理に因る被害が大きくなるという事ですね。
こういう1つの指針を立てておくと非常に分かり易いです。
薀蓄を理解出来なくとも、どちらが美味しいのかが分かる。
そもそも味覚なんて個人差があって、優劣を付け難いことではあるんですが、基本「料理勝負」を描きがちな料理漫画に於いての勝敗を区別する手法として、リアクションは大きな位置を占めています。
ギャグに走るか否か
でも、だからといっても笑いを堪えるのが大変というか。
アニメになったら、もう本当に凄いですよね。
色と動きがある分、リアクションの破壊力が増します。
基本光りますからね。
料理が(笑
料理を目の前にして「うぉ。何て眩しんだ」とか言ってる人見たことありません。
が、料理アニメでは普通の光景です。
美味いと光ります。
正直子供の頃は腹抱えて笑っていました。
リアクションもいちいちツボに嵌って、下手なギャグアニメより笑ってましたね。
でもこれは仕方ない。
ここでいうリアクションとは、芸人が取るのと同じ意義。
大袈裟で滑稽であればあるほど、素晴らしいという類の行動だから、笑えるというのは寧ろ「素晴らしいリアクション描写」になるのかなと。
もう一度出しますが「焼きたて!!ジャぱん」がその最たる例。
リアクションに特化し、中盤以降は最早料理漫画というよりリアクション漫画な感じになっていましたけど。
あくまでリアクションを笑いにして、読者を笑わせに来ていました。
月乃の可愛さとリアクションの笑いに撃ち抜かれて、コミックス集めまくったのも良い思い出…。
まあ、でも、「焼きたて!!ジャぱん」は中盤までの比較的真面目なパン漫画のままで有って欲しかったというのが本音ではあります。
中盤以降は料理漫画の体を殆ど無さず、リアクションに傾倒し過ぎていたかなと。
月乃がハゲになりましたとか流石に引きましたし…。
人間とパンの融合体・ヒューパンとかラストのダルシムとか、ハチャメチャが過ぎていましたね…。
リアクションの笑いに走るというのは非常に納得出来るし、「焼きたて!!ジャぱん」はそこが面白かった。
しかし、料理漫画であるという基本は貫いて欲しい。
「食戟のソーマ」も最近分かり易い「蕩け顔で全裸」から次第にバリエーションが増え、大仰になってきました。
今回のように(厳密には今回のは「美味いものを食った時のリアクション」では無いですが)狙ったギャグに走るのもアリかと思います。
ただ、あくまでも料理漫画であるという基本はしっかりと守って欲しいなって。
終わりに
「火ノ丸相撲」が面白かったです(本論とは関係無い
読切の時も面白いと思ったのですが、連載版も面白かったです。
やっぱり主人公の火ノ丸の芯が通った動かし方が良いですよね。
力士には体格が重要な一要素であると開始1ページ目で言っていて、火ノ丸には、それが無い。
だから、「心」「技」「体」のうち「体」が生まれつき無いから、「心」まで無くすわけにはいかないって台詞とそれを裏打ちする行動に得心できるというか。
言ってる事とやってる事がちゃんと一致しているから、凄く格好良く見えます。
「身体が小さい」という火ノ丸というキャラを形作るマイナス要素から出発しているのも、成りあがり系(サクセスストーリー)の少年漫画としてはワクワクできますしね。
小さな体(しかし鍛え抜かれた鋼の肉体)で、大きな体が有利だという相撲界でどんな活躍を見せてくれるのかという先への期待感も高まります。
「WJ」では10年振りの相撲漫画になるでしょうか?
僕の記憶にはつの丸先生の「ごっちゃんです!!」以来。
その前だと、いっきに遡って「力人伝説 -鬼を継ぐもの-」(92−93年)かな。
確か当時大人気を博していた花田兄弟を主人公にした漫画。
小畑先生の絵が凄くて、大相撲に興味が無かったのに読んでいましたね…。懐かしい。
約10年周期で相撲漫画が連載してるようですが、今作はどれよりも長く連載してくれると良いなと。
…。
いや、ここまで「ジャンプ」感想のつもりで書いていたのですが、急に料理漫画のリアクションについて書きたくなったものでして…。
消すのも忍びなかったので、強引に挿入w
うん。
料理漫画。特に少年誌連載では、料理の美味しさを伝える手段としてリアクションが発達したのかなと。
これを分かり易く示してくれた「焼きたて!!ジャぱん」。
「食戟のソーマ」ももっとリアクションを派手にして良い気がしますね。
というか、派手に・大袈裟に・よりギャグっぽくなっていくんじゃないかな。
リアクション芸に注目していきたい。
そう思わせてくれる1話でした。