はじめに
「りゅうおうのおしごと!」第9巻を読みました。
感想を書きます。
ネタバレしてます。
…それにしても生まれ変わったら小児科医になりたいとか真顔でのたまう八一が本物過ぎる。
2歳の赤ん坊まで守備範囲とか恐れ入る。
天衣のドラマが良かったぞぉぉ
天衣は結構宙ぶらりんのままここまで来てました。
2番目の弟子なんだけれど、家族にはなれてなくて。
象徴的なイベントが第5巻ですよね。
5巻って当初は、最終巻の可能性がありました。
実際1つのクライマックスでしたよね。
竜王の座を懸けて、八一が最大最強の名人と決戦を繰り広げたあの熱いエピソードの中心に天衣はいませんでした。
5巻執筆時点では6巻以降続くことが決まっていたから、天衣の八一への配慮だったという点を踏まえても、1つのクライマックスの場に居合わせないというのは、それだけ距離感があったという証左になります。
それから特に2人の距離間が縮まるイベントも無く、やってきました第9巻。
8巻から予告があった通り、天衣と銀子の対決になりましたが、まさかここまで天衣に片寄った話になるとは。
天衣が遂に家族になったエピソードで、オジサン大満足ですよ。
僕がこの作品を好きな理由の1つは、バッドエンドを作らないところなのです。
棋士の過酷なリアルがあって、メインどころ以外は厳しいエンディングを迎えることもあるかもですけど、メインどころではきちっと救済があります。
今回の天衣にしても、負けちゃうんですよ。
負けることの辛さ、悔しさ、絶望を徹底的に描いてきてる物語なのに、負けちゃう。
これって普通に考えればバッドエンドです。
故に、どっちにも負けて欲しくないというもどかしさが読む前にありました。
天衣と銀子、どっちが負けても後味が悪そうだなと思っていたのです。
しかし、読後感はどこまでも爽やか。
寧ろ、天衣は負けて良かったんだと心底思えるドラマを構築されている。
ちゃんとハッピーエンドで纏めて来てるんです。
これは凄いです。
もうね、納得のドラマですよね。
いつもながら無駄のない構成にため息が出ます。
天衣自身が負けても良かったと心変わりするまでの理由、八一に惚れるまでの過程が見事に描かれていて。
個人的に一番「おぉっ」と感激したのが、天衣に白いドレスを着せた所。
冒頭の小芝居(八一、嵌められるw)で先ずドレスの存在を披露。
その後、対戦相手の銀子への挑発を込めて「白は嫌」と言わせる。
いつもの天衣の何気ない挑発なんだけれど、白を否定させる事で、今(黒)を肯定させてるんですよね。
で、この話読んでいて気付いたのですが、天衣がいつも来てる黒の服って喪服だったんですね。
言葉通りの喪服って訳じゃないけれど、悪い意味で未だに両親の喪に服し続けているという象徴になっていたのかなと。
黒の反対色(無彩色に補色という概念はありませんので、明度が反対という意味で)の白を否定させている時点で、「過去(両親)しか見ていない現状」を表していたのだろうと解釈出来ました。
これを受けての、白のドレス着用だから、もうね、感動ですよ。
晶らに着せられた訳でもなく、自分の意志で、自身が否定した色に身を包む。
それがどういうことか。
過去に囚われていた「黒の時代」から変わったことを示していて、良い演出だなと感じました。
あいの危機感を煽る煽る
桂香があいの現状を危ぶんでいましたが、ちょっと的を外してる気がしました。
あいが現状に一定の満足感を持ってしまっているというのは間違いないんだろうし、天衣との差を歴然と感じて超えたいと思ったのも、彼女の観戦記から読み取れる。
だから、的を射てるといえば、そうなのかもですが。
なんだろう。
八一のことしか見てないあいだからこそ、将棋の上を目指すにも、八一を取られたくないと感じないと無理な気がして。
そう言う意味で天衣の宣戦布告は意味があったと思うの。
天衣には女の子として敵わないという(恐らく偽らざる)本音をあいに語らせているとこもポイントですよね。
そんな天衣が恋のライバルになっちゃった。
堂々と宣言してきた。
あいが心から燃える動機が最後の最後で出来たと思いました。
終わりに
次は銀子のドラマかしら。
姉弟子の話はガッツリ読みたいですからね期待しちゃいます。
あいが八一を狙ってる。
天衣も好きになった。
それなのに、誰よりも先に八一を好きな銀子が、同じステージに立ててないのは、なんか嫌じゃないですか。
今回なんか、完全に天衣視点で進んでいて、八一も天衣の肩を持っちゃってる。
天衣から見て「勝負に勝って試合に負けた」って感じなので、銀子としては悔しかった事でしょう。
自分の部屋の合鍵を渡して、密室の中、八一の膝の上に座るという分かりやすすぎるラブラブ光線を出してるのに、気づかない八一。
(彼の事だから、気づかないフリなのかもだけれど)
やるせないよね。
そりゃ怒るって。
いよいよもって張りつめていた糸が切れて、爆発しそうな感じにも見えたので、銀子が報われる話がそろそろ欲しい所です。
てな訳で感想終わります。
今回LINEで会話しながら書いていたので、いつも以上に散文になっている気がします。
すみません。