この記事は
「声優ラジオのウラオモテ」第3巻の感想です。
ネタバレあります。
ネタバレ防止対策
今更なんだけれど、僕は凄いことに気づいちゃいました。
主人公の1人・夕暮夕陽。
本名、渡辺千佳。
わたなべちか
渡辺千歌
渡辺千歌
二月公先生は、ようちか推し!!【確定】
実のところ2巻は評価高くなかった。
1巻を読んで、これまた面白いシリーズが始まったなぁと嬉しくなり、勢い込んで読んだ第2巻。
感想では良かったとしたのですが、実のところ期待通りという訳ではありませんでした。
率直に言うと、「この方向性は望んでいない」でした。
1巻の続きと考えると、確かに2巻のような「学校バレ」からの騒動というのは、今の世の中を鑑みても自然に思えます。
アイドル声優の危機どころか日常生活に支障を来すレベルの危機ということで、超えるべきハードルは1巻を超えており、その点も物語構成としては正しいのでしょう。
しかしながら、やはり僕はこの路線は望んでいなかったのです。
第一、この物語だと声優である意義がありません。
アイドルや俳優でも成立しちゃうんですよ。
折角声優という職業にスポットを当てている以上、声優ならではの物語を読みたくなるのが人情。
声優活動を発端とした事件の延長線上の物語であるとはいえ、脱線感が否めませんでした。
1巻から2巻の待ち時間に比べれば、遥かに3巻へのワクワク感が薄れていたのです。
が。
これだこれだ、これですよ!!
僕が読みたかった物語が、そこにはありました。
しかも激熱!!!
声優ならではの物語を望んでいた!!
「歌種やすみ」こと佐藤由美子。
今回のメインは、彼女。
ベテランばかりの現場に放り投げられた1人の「新人」声優。
要求されるのは、難しい役どころを妥協無く演じ切る演技力。
力量以上のものを要求され、神経はすり減り、心は砕ける。
ずたぼろになりながらも、懸命に必死にアフレコに臨む…というのが簡単なストーリー。
もうこの物語はさ、声優じゃないと成立しないわけですよ。
アフレコは、声優さんの仕事の屋台骨ですから。
原点回帰っていうとあれですけれど、作品の本懐を遂げたと勝手に盛り上がっちゃいました。
ただ、あまりにも本格的にアフレコについて書かれると、それはそれで「ラノベ」としての領域は超えちゃうのかなと。
いや、別に超えても問題ないんだけれど、その辺は調整が入っていた風に取れました。
というのも、アフレコ経験なんてまるっきり無いにも関らず、由美子の立たされている状況を、心境を理解出来ちゃったから。
演技がどうのと小難しいことは一切ないし、専門用語も無い。
この辺の描写はバッサリとオミットしつつ、「自分のせいでベテラン陣を待たせている」という状況は、どんな業種であれ働いたことがあれば辛さ・居た堪れなさは理解できるはず。
学生で言えば、部活でも何でもいいです。
ベテラン声優を部活の先輩に置き換えてみればいい。
凄く凄く辛いよね。
プレッシャーだって半端ないだろうし、由美子が陥った悪循環の下りなんて、読んでいて共感しか無かったですよ。
よほど強心臓を持ってない限りは、誰だってパニ来ると思うよ。
誰でも共感できるレベルまで描写をかみ砕いてくれているからこそ、余計に由美子の物語に引き込まれました。
乗り越え方も良いよね。
唐突に作中劇を挟まれても、何の感慨も湧かないんだけれど、それは織り込み済みの筈。
大事なのは、由美子の役が壮絶に難しそうだということを伝えること。
少なくとも僕には伝わった。
これ演じきったら話題になるだろうなぐらいの想像力は働いた。
由美子の演技については、これまでの物語が巧みに活きている。
熱くなったら向こう見ずな行動に移しちゃうところが、由美子の良いところであり、また、悪いところでもあって。
1巻で千佳を救って、2巻で活路を開いた点でもある。
ついでに、騒動を無駄にでかくしちゃった点でもありますね。
それを演技に転嫁して、全身全霊で役になりきる。
非常に彼女らしい。
千佳が思わず迫力に飲まれてしまったり、急遽神代監督が完成した映像の差し替えを決意したり。
周りのリアクションから由美子の演技の出来を描写するのも良かったなぁ。
とにかく、今回は熱かった。
声優ならではの物語で、多いに満足しました。
ラジオのこともしっかりと絡めていたりして、とっても面白かったです。
めくるが良いキャラすぎる
2巻最大の功績は、柚日咲めくるというキャラを投下したこと。
この子、本当に良いキャラしてる。
めくるの焼肉屋でのエピソードは、3巻に於いてのもう1つの見せ場だったと思う(笑
声優と声優オタの間を行ったり来たりするめくるが面白すぎでした。
3巻の表紙も飾ったことですし、今後もメインキャラの1人として大活躍させて欲しいですね。
終わりに
ということで、大大大満足の第3巻でした。
4巻も是非声優ならではの物語を期待します。