「四月は君の嘘」 3巻 椿の想いと2人のライバルの登場意義

この記事は

「四月は君の嘘」第3巻の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

椿’s STORY

以前も書いた気もしますが…。
やはり椿の思いに一つの光明が見えたのが個人的には良かった点です。

椿が公生をどう思っているのか。どれだけ考えているのか。
それが分かるシーンがありました。

第3巻32ページ。
かをりとともに帰路に着く椿。
公生の事に話が及び、かをりは彼を「ダメダメな弟」と表現しました。
これに対して、椿は「ダメなんかじゃないよ」と不機嫌。

ちなみにこの直前、かをりはこんな事も言っています。
「うーん なんていうかやっぱり
“やっぱり”というフレーズ。
辞書を引いてみると「以前と、また他と比べて違いがないさま。」と出て来るように、かをりが過去に口にしたか聞いたセリフがこの後に続くと予想されます。

そんな見たか聞いたかしたセリフが「ダメダメな弟」という言葉で、これは過去一度もかをり自身は発していません。
少なくとも作中の描写内では。

では、誰が言った言葉かというと、当然椿で。
第1巻第4話で椿がかをりに言った台詞なんですよね。
好きなんだねと言われて返したセリフ。

自分と同じ表現をかをりがしたのに、何故か機嫌を損ねている訳で。
でも、これこそが椿がどれだけ公生を想っているのかの証左ですよね。

誰にでも経験のある事だとも思うし、色々な作品にも見られる感情表現。
「あいつの事を悪く言っていいのは自分だけで、他人に言われると腹が立つ」というやつですw

公生の事を何も知らないクセに…自分よりも付き合いが短いクセに。
分かったような事言わないで。

そんな感じでしょうか。

「私たち」というフレーズの中に自分が入っていない事に対する悲哀。
これを中心に椿の思いは存分に語られていますが、それを端的に表現したたった一言のやりとり。

椿が公生を想う気持ちに心打たれた僕としては、帰り道(第10話)での公生とのやりとりは最高な物でした。
2巻から続いていた「どんてんもよう」は、「キラキラした夜空」に変わったのですから。

公生の演奏とは何か?

彼を苦しめているモノ。
公生の演奏には、何も無い。 という事が一つですかね。
それは彼の異名に表れていますよね。

有馬公生は悪名とまで言われるほど、公生を表する言葉はどれも宜しくない。
あやつり人形 機械 ヒューマンメトロノーム
「あいつじゃなくていいじゃん 誰でも同じ」

それ程彼の奏でる音には、個性が無いという事なのでしょうね。
しかし、かをりは違う。

公生らしさをぶつければ良いと言ったり、また、彼女自身
「聴いてくれた人が私を忘れないように その人の心にずっと住めるように」演奏をしている。
個性を前面に押し出した演奏で、かをりは公生にもそれを望んでいるように思うのです。

でも、彼は迷う。
自分が分からないから。

そんな中現れた2人の人物。
相座武士と井川絵見。
彼らが何故現れたのか?
コンクールを盛り上げるためのライバルとして?
勿論それもあるかもしれませんが、僕はそうじゃないと思っています。

「あいつじゃなくていいじゃん 誰でも同じ」
そう思っていない人物が、少なくとも2人居たという事ですよね。
彼らにとっては、公生の代わりなんてどこにも存在しない。
酷評されている公生の演奏を聞いて、人生を変えられた人間。
「聴いてくれた人が私を忘れないように その人の心にずっと住めるように」というかをりの信条を、実は公生は既に出来ていて。
でも、彼はそれを知らない。
知らなかった。
他の人にも、自分にも興味が無かったから。

武士の演奏は、公生ただ一人に向けられていて。
そう考えると本当に圧巻のシーンだったと思うのです。
コンクール開始直前に爆睡してしまった、渡が目を覚まして見惚れるくらい観客の心を揺さぶっているのですし。
音は聞こえないけれど、想いは聞こえるというか。

武士の「公生への思い」が込められた演奏。
それを聞いて…初めて他人の演奏に耳を傾けた公生は、何を感じるのか。

自分に何も無いという思いを払拭できるのか。
取り敢えず4巻の絵見の演奏回は、本当に凄いですよ。
本誌で読まれていない方は、楽しみにして欲しいです。

四月は君の嘘(3) (講談社コミックス月刊マガジン)

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