「スパイ教室」第2巻感想 キャラの確立とトリックを両立させるギミックが凄い。

この記事は

「スパイ教室」第2巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

怒涛のラノベ感想連続更新。
4本目は「スパイ教室」第2巻になります。
非常に面白かった第1巻ですが、その面白さの最大の要因となっていたのが全体に仕掛けられたトリックでした。
当時僕は知らなかったのですが、2巻あとがきによれば、少女達が7人であるという刷りこみを様々な企画を通して行っていたとか。

たったの1度しか使えない極上のトリック。
とはいえ、目新しいものでは無かったので、面白味の根幹を担っていたのはトリック自体よりも、その使い方でしょうか。
序盤から伏線を張りめぐらせ、それを全て読者を騙す為ではなく、ターゲットを騙す為に使用。
何故そのようなトリックを用いざるを得なかったのかが、しっかりと物語に根ざしていたからこその面白さだったんです。

さて2巻ではどうなるのか。
同じ手は使えない。
けれど、どこかで1巻と同等かそれ以上の面白味を付与しないとならない。

取られた手段が、少女達に改めて個性を与える事。
この選択が極上でした。
感想です。

何故その少女は恋に落ちたのか?

1巻はその物語の特性上、キャラを深く掘り下げることが出来ませんでした。
唯一花園のリリィだけ、どういう女の子かが語られたのみ。
他の少女は名前と簡単なキャラクターだけに留まりました。

そこで2巻になって漸く腰を据えてキャラ紹介ということに。
とはいえ、こういうのは1人1人順を追ってが基本。
そうはいってもメインの子以外の活躍も魅せたいところ。
8人もいる少女をどのように魅せていけばいいか…。
取られた手段は、8人をしっかりとした事情を作って2グループに分けることでした。

これが本当に凄い。
4人といっきに少なくなったことで、1人1人に見せ場を作れる。キャラを語れる。
さらに8人の少女達はスパイとしては半人前であるという設定を用いて、クラウスの代わりを務めるに相応しい「参謀役」の少女をメインに自然と据える事に成功していました。
1アイディアで物語とキャラ紹介を同時にこなしているのだから、上手いですよね。
そのまんま読者を欺くトリックとしても機能させているので、もうこのシリーズは安泰だなと確信するには十分すぎる点でした。

という訳で、参謀役を果たした愛娘のグレーテがメインを張りました。

いや。彼女の物語は良かったですね。
確かにクラウスの立場からすると、グレーテが何故クラウスを慕うようになったのか不思議なんですよね。
トマリ先生の口絵も改めて見返すと、タオルでしっかりと顔の左側を隠している。
あまりにも自然な姿なので、気にも留めてなかったです。
(べ、別に腕とか謎の湯気で上手い事隠してるなぁなんて考えてイラストを眺めてたわけじゃないんだからね)
「綺麗だ」というセリフも、今から思うと不自然(クラウスが女性の裸を褒めることは彼の性格上おかしいのに)なのに、読み進めている時は自然と流していました。

変装が得意という部分をこうやって彼女自身のドラマに絡めて、かつ、今回のトリックにも堂々と使っている。
騙しのテクニックがしっかりとしているから、本当に面白さに繋がっています。
恋(キャラの確立)と騙しに同じ手管を使ってくるなんて、ニクイことしてくれるなぁ。好き。

彼女以外の3人もキャラが立ってきましたね。
リリィは既に立ってましたが、ジビアとサラも確立してきましたね。
2人とも良いキャラじゃないですか。
サラは今一歩出番が少なかったので、もうひと押しって感じですがジビアはツッコミキャラとしても定着した感じ。
勝気な性格なので、ツッコミにキレがあって、会話の楽しさを一段階上に引き上げてますね。
楽しい会話劇が彼女たちの「チームワークの良さ」のアピールになってるし、良い意味で緊張感を和らげる清涼剤として機能している。
その中心にいるジビアは、作品に欠かせない存在に思えてきました。

風雲急を告げそうな3巻

2巻で語られなかったであろう伏線…と思われるアレ。
そうです。

ローランドが持っていたクラウスの盗撮写真。
「一人の青年がリラックスした体勢で、笑顔を向けている。まるで家族と談笑している瞬間を切り取ったように。」
この写真は誰が撮ったのでしょうか?

青年というからには、最近。
親しい間柄の人間というのだから、考えたくは無いですが灯のメンバーの誰か。

裏切り者の可能性が示唆された。
だから、NEXT MISSIONでの出来事を鑑みるに「伏線と思われる」のではなく、間違いなく伏線なのでしょう。

クラウスと行動を共にした主力4人は何をしているのか?
裏切り者は誰なのか?
この流れで裏切り者が出てくると、かなり凹むんですがどうなるのでしょう…。

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