「スパイ教室」第3巻感想 圧倒的で緻密な構成力健在な3巻

この記事は

「スパイ教室」第3巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

今、トップクラスに新刊が待ち遠しいラノベの1つ「スパイ教室」。
待望の第3巻が発売されました。

不穏な状態で続いた前巻からの続きです。
2巻では描かれなかった残り4名の少女たちにスポットを当て、圧倒的なまでの構成力で彼女たちの魅力を魅せてくださいました。
感想です。

凄まじい構成力

やはり今作は、構成力が他作品よりも頭一つ図抜けています。
1巻の頃からそうでしたが、どこか読者の予想を裏切る、読者を騙すことに力点が置かれている節があります。
どの作品だって多かれ少なかれそういう要素はあります。
だけれど、ここまで見事に読者を欺きつつ、物語として成立させている作品はそうはありません。

一口に読者を騙すと言っても、簡単じゃないと思うのです。
単純に騙すだけならば、「超展開」と揶揄されるような強引な方向性を取り入れたりすれば可能なのですけれど、破綻させずに纏め上げることが難しい。
エキセントリックさにばかり気を取られると、「何故そのような展開が必要であったのか」という必然性を盛り込むことが疎かとなり、結果としてとっちらかった印象を与えてしまうからです。

ですが、この作品は違うんですよね。
実に巧いです。

3巻で僕が最も痺れたのは、戦慄するような邪悪の存在について。
基本的に捻ってくることが多いのだから、ここも素直に味方にそういう存在がいるんだなと想像を働かせるべきだったのかもですが、僕は単純に「敵国のスパイ」を想像してしまいました。
新たに凄腕かつ残忍な敵スパイが出て来て、そいつと戦うことになるのかなと。
事実直後にスナイパーが登場しています。
なにも疑うことなく、キノコ男を「戦慄するような邪悪」と見做してしまいました。

それが、まさか…ね。
灯の少女たちの弱点である甘さ。
そこを的確についてくる奸計に優れた敵スパイ。
語られたこれらの要素をまぜっかえした上に、実はアネットが…というのは、呆気に取られました。

またしてもやられた~って感じですよ。
毎回毎回こうも読み切れないとは、なんて清々しいんでしょう。
物語の全てがこの真相に収れんされていくので、感嘆の言葉しか出ません。
嬉しくて仕方ありませんよ。

今回はさらに追い打ちがあって、彼女の一人称である「俺様」にも意味がしっかりとあったこと。
いや、気づかんて、流石にw
だって、個性だって思っちゃうじゃない。

漫画やアニメも含めて、キャラの一人称というのは、個性を演出する1つの手段として良く用いられていますよね。
特に活字媒体では、「誰のセリフなのか」一人称を使って、読者に区別させるような意図もあると思っています。
灯のメンバーも1人1人違っていて、「俺様」という現実では中々女子が使わないような一人称を使うキャラがいても、そういうものとしか捉えていませんでした。

一体どこまで計算して作られているのか。
構成力の高さには舌を巻きますね。

コメディとシリアスのバランスも〇

3巻の感想に書くことでは無いのかもですが、今作の魅力は、卓越した構成力で纏められた面白すぎる物語だけではありません。
キャラあってのラノベということで、キャラクターの魅力を十全に発揮したコメディ描写も秀逸。

感情の機微を殆ど表に出さないクールなクラウス。
彼は絶対にコメディしないと思っていたのに、思っていたのに。
3巻早々に描かれたクラウスのリアクションには、腹抱えて笑っちゃいました。

前回4人が失踪したというシリーズ屈指のシリアスさで物語が引いたのですよ。
当然3巻でもその重苦しさを引きずったまま読み始めたのに、いきなりコメディパートをぶっこんでくるなんて誰が予想できますか。
この落差も手伝って、冒頭は笑いっぱなしでしたよ。

でもこれもやっぱり考え抜かれてると思うんですよ。
あくまでも主観ですけれど、シリアスなシーンよりもコメディシーンの方がキャラに親近感を湧くんですよね。
「このキャラ面白い」ってなると、グッとキャラを好きになる。
3巻の進行役となった〈夢語〉ティアにコメディアンとして振舞わせてくれたことで、すっと彼女に親しみを覚え、以降の物語がより楽しめました。

コメディパートにも物語上の意味を持たせていると信じちゃうくらいには、僕は竹町先生の手腕に心酔しちゃってるかもです。

終わりに

そして第4巻。
決戦!!!
そんでまさかの「第1章」最終巻。
あとがきでも驚かされるとは。
シリーズのラスボスとなると思い込んでいた「蛇」を次巻だけで倒しちゃうのかな。
全く予想がつかない。

最新情報をチェックしよう!