「スパイ教室」第5巻感想 「愚人」に込められた真意に感動し、ラストの悲劇に愕然とする

この記事は

「スパイ教室」第5巻の感想です。
ネタバレあります。

宣伝に出られなかった不幸な少女

「スパイ教室」の第1巻。
数々の騙しがこれでもかと詰め込まれた中で、最大のトリックは、やはりエルナの存在でしょう。
ずっと「7人の少女」だと読者をも欺いた後、クライマックスで明かされた驚愕の真実。
「8人目」のエルナが大逆転の切り札となり、また、読者にとっても最もインパクトのある真実となりました。

つまりは、彼女の存在を隠すことは必須であり、存在を公にすることは「最もやってはいけないネタバレ」に等しかった訳です。

だからこそ、初代担当氏の判断は間違ってはいなかったと思います。
最初に作られたPVにも宣材にもエルナのエの字も見当たらないのは、きちんとした理由がありました。

ただ、その状態が3巻発売時まで続いたことに関しては「不幸」と言うほか無いですが(汗
確かにエルナを「いつ」宣伝に使っていくかは、判断の難しいところだよね。
いつまで「1巻未読者」にネタバレ防止策を講じていけばいいのかって考えると、答えは無い訳で。

結局第1部では、スポットの当たらなかった彼女ですが、第2部開始と同時にメイン回をゲットとなりました。
エルナという少女の全てが凝縮された第5巻。
感想です。

何故「愚人」なのか疑問が解ける

エルナのコードネームが「愚人」なのが何故なのか不思議でした。
キャラクターとも能力とも結びつかないコードネーム。
8人の中でも最も似つかわしくないコードネームを背負う理由は何なのか。
天然を名乗らないリリィもいるから、深い意味は無いのかもなと思いつつでしたが、遂にその理由が判明。

自作自演の構ってちゃんをやっていた部分には、正直引くところもありましたが、小さな女の子が身を守る手段としては、そうおかしいことではないのかなと。
行き過ぎなのは否定できないけれど、愚かであることを自覚していることもあって、エルナの見る目を変えるまでは無いかな。
しかも、サラも言ってましたけれど、マジもんの不幸も多いですからね。

街中で車に引かれそうになったこともあったけれど、あんなの自作自演では出来ませんもの。
不幸を呼び寄せるというのは、あながち嘘でも無いし、その不幸の中に小さな自作自演が混じったところで評価は変えようがないかな。

今回に至っては、完全に仲間の為でしたし。
「鳳」の介入は予定外だったにしても、仲間に危機意識を植え付けるためというのは大成功。
その後の成長にも貢献したし、身を削ってでもという心意気には、とても感動しました。

喋り方とかキャラが好きなので活躍を願っていたのですが、僕の期待以上のお話だったので満足感でいっぱいです。

NEXT MISSIONの絶望感よ

王道展開ではあります。
主人公やそのチームをよりも強いライバルを出す。
両者の戦いを真っ向から描き、読者に対してライバルの方が上と植え付けておいて、次の展開であっさりとライバルを破った敵を出す。
その敵の脅威が分かりやすく読者に伝わるというのです。

それにしても、実際に目の当たりにするとショックが大きい。
まさかの「鳳」全滅。
遺恨なく「灯」と爽やかに別れたのに、その直後にあっさりと「死にました」はキツイって。

ファルマの「貢ぎマゾ」がどんなのか知りたかったし、クノーがお面を付けてる深い事情について語明かす様を読みたかった。
良いライバルチームが出てきて、世界観も広がりを見せるんだなとワクワクしてただけに、これは辛い。

ただ、今にして思えば伏線はありました。
このままではメンバーの誰かが死んでしまうかもというのは、最も分かりやすい形でしたね。
次の展開に向けてのパワーアップが必要となり、その為に詐術というキーワードを出したのでしょう。

では、誰が裏切者となるのか。
最重要候補は、草原のサラだと思っています。

彼女の今巻における「中途半端な活躍」こそも伏線だと感じたからです。
クラウスを奪われてなるものかと、格上相手にたった一人で挑んだサラ。
この時の詐術は、モニカに徹底的に否定され、モニカの考えを取り込んだ詐術の完成を目指していました。

エルナを相手にその一端を練習していましたけれど、まだまだ全貌は不明なんですよね。
子犬に対象の嘘を見分けさせることが、どうスパイの戦いに活かされるのか皆目見当もつかないので。

モニカが考えているサラの詐術は、もっと先にあるんじゃないかな?

犬は人間の汗の匂いから様々な感情を読めると言います。
それらを嗅ぎ分けて、異なるリアクションを取るようになれば、騙しに使えそうじゃないですか。
サラの詐術の全貌が語られなかったところが、怪しいなと。

もう1つ、サラの動機が明かされた点。
スパイになった経緯が初めて語られたわけですけれど、サラの両親は恐らく健在ですよね。
これはwikipediaの記述とは異なるんですが、ソース元の記述を読み直すと、サラに身寄りが無いとは書かれてないんですよ。
「どうやら彼女は身寄りが無いらしい」と書かれていて、これは恐らく「リリィがサラの言葉から類推した情報」なのでしょう。
両親が健在でも矛盾は無いと思われます。

想像通りサラの両親が健在であれば、それは彼女にとってのウィークポイントとなります。
「翠蝶」に両親を人質に取られたなら、「灯」を愛するサラと言えど、敵の術中に嵌ってしまっても不思議では無いです。

もしサラが裏切っても、モニカが打開してくれそうなのですけれど…。
不安は尽きない。

果たして、どうなってしまうのか。
願わくば誰ひとり欠けることなく、「翠蝶」を倒して欲しいところです。

終わりに

死すら偽装で、実は生きてましたという展開を期待してるんですが…。
わりと普通にキャラが死ぬ作品だから…無いかなぁ。
「鳳」をもっと活躍させて欲しかった。

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