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毎度お馴染み「ラブライブ!サンシャイン!!」の記事です。
僕のサンシャイン熱は不滅だよ。
アニメ演出のルール
アニメの演出には様々なルールがあります。
その内の1つに「上手と下手」というものがあります。
改めてガイナックスの鶴巻さんのお言葉をお借りします。
もともとは、演劇やステージのルールだったものだと思います。
観客席から見て、右側が上手。左側が下手。
演じる人が入ってくるのは上手側から、退場するときは下手側へ。
映像も一緒で、画面の右側が上手、左側が下手。
誰かがインしてくるときは上手からになります。アウトしていくときは下手へ。
上手から入ってくるという事は、キャラクターは左向きで芝居をするという事です。
キャラが能動的に動いて何かをしているときは、たいてい上手から下手に向かって行動しています。
(中略)
アクションの主体が誰なのか?
その主体のアクションは、上手から下手に向かうのが基本と考えていいと思います。
画面右手(上手)から左手(下手)への動きを能動的。
「能動的」は、他からの働きかけとは関係なく、すすんで物事を行ったり、他に働きかけたりするという意味合いで使われる
では、逆側。
左手から右手への動きを受動的とします。
自分の意志からでなく、他に動かされてするさま
これをもとに、「ラブライブ!サンシャイン!!」のハグに纏わるいくつかの場面を見てみます。
ケース(1) 果南が鞠莉をスクールアイドルに誘う時。
第8話「くやしくないの?」より
2年前。
1年生だった果南は、ダイアと共に鞠莉をスクールアイドルに誘います。
興味が無いと言い遺した鞠莉は、下手側へ退場します。
そこを上手側から果南が強引にハグ。
果南の行動はまさしく能動的な行為。
綺麗に右手から左手へ移動しています。
鞠莉が説得されたのも頷けるんです。
ケース(2) 鞠莉が果南を迎えようとハグの姿勢を取った時。
鞠莉の行動は、能動的だったのでしょうか。
確かに自ら色々と動いて、果南やダイヤを迎え入れようと動いていましたので、能動的にも見えます。
しかし、彼女はどこまでも「待ち」に徹していたんですよね。
果南の復学に関しても、書類を渡しただけで提出したのは果南自身の意志。
理事長になって統廃合を阻止しようとしても、実際に動いてるのは千歌達Aqoursに任せた感じ。
果南達と大切な場所を取り戻す行為そのものが、統廃合阻止に繋がると信じているものの、ただただ待つばかり。
場所や物の提供はするんだけれど、待っちゃうんですよね。
鞠莉は、受動的であると思うのです。
第8話。
海岸で対峙する鞠莉と果南。
鞠莉は戻って来て欲しいと意思表示として、両手を広げます。
ハグの姿勢を取るんです。
しかし、果南は、自らの意志でそれを拒否。
左手側へと退場していきます。
受け身側(下手)で「待ち受ける姿勢」を取っても、果南に通じる訳はなく。
鞠莉の気持ちは受け入れて貰えませんでした。
ケース(3) 悔しくて泣き崩れる千歌を後ろから優しく抱きしめる梨子
同じく第8話より。
東京での結果はゼロ。
あんなに頑張って来たのに、1人からも支持を得られなかった。
悔しい。
あんなに皆に付き合ってもらったのに。
「私に付き合ってもらってるのに」という受動的な意見を右手側から優しく抱きしめる梨子が否定します。
「バカね。皆千歌ちゃんの為にスクールアイドルやってるんじゃないの」と能動的な意見で慰めるんです。
敢えて千歌を受動的な立ち位置である左手に立たせたのは、この構図を綺麗に決める為だったんじゃないでしょうか。
「スクールアイドルやってもらっていた」から「皆の意志でやっている」と千歌の考えを変える演出としては、非常にしっくりくる配置です。
ケース(4) 鞠莉を優しく迎え入れる果南のハグ
第9話「未熟ドリーマー」より。
ここは一連の流れから書いていきます。
鞠莉は受け身であることは既に書きました。
その立ち位置は基本的に続いています。
教室で向かいあう2人。
右手に果南、左手に鞠莉がいます。
この直前の神社でのやり取りでは、立ち位置が逆になってますが、その時は珍しくも鞠莉が能動的に動いていたからですね。
「今は後輩達も居るから」「まだ1年も残ってるんだから」「一緒にやろう」
自分からグイグイ攻めてますが、振られています。
この後のシークエンスが教室。
左手に居る鞠莉は、またしても受け身の姿勢を取るんです。
昔の制服を差し出して、「受け取って」と待ち構える。
この後の2人は、果南が動き出したのを見るに、鞠莉の元へと行って制服を外へ投げつける。
そこを鞠莉が捕えて、もみ合いながら教卓の方まで移動したと考えられます。
左手で待ち受けていた鞠莉がその場で強引に抱きついた結果のハグ。
やはり受け身なんですよね。
ここのハグを拒否されるのはルール的にも自然です。
場面は変わって、果南の真実をダイヤから聞いた鞠莉は雨の中必死で走り出します。
この場面、気持ちを考えれば能動的に動いているので、左手に向かって走っているシーンにするのが普通に思えます。
しかし、実際は逆。
右手に向かって走ってるんですよね。
今まで「受動的」だった鞠莉が果南の待つ「能動的」な位置へ向かって必死に走っているという解釈をします。
夜の部室。
立ち位置は、やはり右手に果南、左手に鞠莉がいます。
今までと違うのは、左手にいる鞠莉は「受動的」では無いって事。
必死に走って能動的な位置…つまりは果南と同じ位置にいるのです。
だから、彼女の気持ちは初めて果南へと伝わった。
果南のハグは、とてつもなく母性に満ちた素晴らしいものでした。
和解のハグ。
何度泣かされたか…。
素晴らしい流れだったんですよね。
終わりに
8話と9話のハグに絞って、検証してみました。
強引な解釈になっている点は否めませんが、彼女達の気持ちが綺麗に演出に落とし込まれていたんじゃないかと踏んでおります。
果南の「ハグ…しよっ」の優しい口調。
優しいハグ。
ココに至るまでの彼女達の心理描写が映像に溢れていて、それを自然と感じ取れていたから、より感動も一入だったんじゃないでしょうか。