この記事は
「ストライクウィッチーズ」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。
はじめに
「ストライクウィッチーズ」シリーズを遂に全話視聴し終えました。
いやはや、実に面白かった!!!
こんなにも面白い作品だったとは、今まで敬遠していて損をしてました。
ミリタリーものは、どこかキナ臭くて避けていたんです。
だけれど、全然そんな事は無く、基本的には美少女同士のキャッキャウフフ。
それと友情と成長の物語。
視聴前のイメージを良い意味で覆してくれて、いっきに嵌りました。
で、何といっても熱い!!!
1期の11、12話。
2期第2話。
そして劇場版。
世界中から仲間のピンチに颯爽と現れて、強大な敵を討ち倒すという王道ストーリーが非常に熱い。
涙が出るほどの感動と共に心の底から燃え上がる。
この熱さにも痺れました。
という事で、「ストライクウィッチーズ」について書いてみます。
テーマは、これまでの良かった点とちょっと残念かなと思った点。
そして、きっとやってくれるであろう3期に関しての「こうなったらいいな」という希望です。
ネウロイという存在
この作品、戦争が主題になっていますけれど、ここに焦点を当ててしまうと実際殆どストーリーの進展がありませんでした。
敵であるネウロイが正体も目的も存在意義さえも、何もかもが不明な為です。
唐突に現れては破壊を繰り返し、それを迎撃にストライクウィッチーズが向かうというテンプレが早々に確立され、敵の目的も動機も見えないから、いつの間にか決着する。
1期も2期も「ネウロイとの戦い」という部分に関しては、物語の積み重ねが無いんですよね。
普通だったら1段ずつしっかりと段階を踏んで、最終戦を迎えるという流れですけれど、この作品の場合は、「作品の最終回が見えたから、段階をすっ飛ばしていきなり最終戦に突入している」感じ。
だから、最後っぽい敵を倒して、「これでこの地域のネウロイは殲滅できた。解散」と言われても「え?これで終わりなの?」と感じてしまいました。
だけれど、ここまではこれで良かったと思っております。
1期も2期も僅か1クール12話。
で、メインキャラクターである連合軍第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズの総数は11名。
1期に限って言えば、たったの12回で、11人ものキャラクターの描写が必要となって来て、時間が全く足りない感じです。
敵側の描写に時間を割くよりかは、ウィッチーズ11名を掘り下げた方が断然良いと思うんです。
その点、描写する必要の無いネウロイの設定が活きています。
時間の大部分を彼女達のキャラクター紹介に使えていたし、ネウロイの存在が「キャラを描く為のスパイス」としてのみ機能していた。
祖国を蹂躙されたから。
戦地が生きる場所だから。
大切な人の命を奪われたから。
戦争が嫌いだから。
ネウロイが生み出した負のドラマを各キャラクターに振る事で、キャラクターにドラマを与え、描かれていました。
ただ単に存在し、敵として立ちはだかるだけのキャラクターとしてみれば、ネウロイはこれ以上無い敵です。
まさしくウィッチーズを描く為だけに存在していると言っても過言では無いのかもしれません。
また、ネウロイが生物では無く、どこまでも無機質な存在として淡白かつ機械的な描写に徹してくださったお陰で、殺伐とした雰囲気も全く感じられませんでした。
これも個人的に良かった点。
ウィッチーズがネウロイをどれだけ破壊しても血腥く無く、キャッキャウフフ描写に影を落とさない。
萌え描写を邪魔しないような設計になっていたかなと思うんです。
とはいえ、ネウロイ側のドラマも描こうとされていた節がありました。
宮藤芳佳のドラマ
ここで切り口を変えて、主人公・芳佳にスポットを当ててみます。
彼女は、代々ウィッチを輩出している家系の出で、彼女自身も強大な潜在能力を有しているという設定でした。
実際仲間のピンチには信じられない程の魔法力を発揮して、普段以上の活躍を見せていました。
また、通常は成人する前に徐々に魔法力を失う所、宮藤家の女性は成人後も魔法力が衰えないという特性も持っていました。
芳佳の母も祖母も未だに魔法力を失わず、診療所で治療を続けております。
これを元に彼女のドラマを振り返ってみます。
芳佳の信念は「人助け」ですね。
戦争を嫌い、医者を目指し、自分の魔法や力で人が救えるならば、どんな状況であろうと一心不乱に助けに向かってしまう。
それは時には軍規違反となる事もあるし、仲間を危機に晒してしまう事もある。
何より自らも命の危険に晒すような行為にもなってしまった事もしばしば。
しかし、これはシリーズを一貫して、一切ぶれる事無く貫かれておりました。
その集大成が、2期のクライマックスと劇場版にあるんだと僕は思っております。
2期終盤、尊敬する美緒がウィッチとしての瀬戸際に立たされてしまいました。
19歳の美緒。成人を前にして、自らの魔法力が減退。
それを補うべく鍛え上げた烈風丸ですが、皮肉にもこの剣が「致命傷」になってしまった…。
手にした者の魔法力を吸い取ってしまう烈風丸に、僅かに残っていた魔法力を吸われていき、遂に飛ぶ事すらままならなくなってしまい…。
これを知った芳佳は、「自分が坂本さんの分まで頑張れば、坂本さんは戦わないで済むんだ」と意気込んでました。
いやいや、それは美緒の願いと違うんでは?と思ったりもしましたが、芳佳の中では
魔法力を失った美緒⇒それでも戦いに赴こうとする姿勢を見てしまう⇒美緒の戦死の危険性が高まる⇒自分が頑張って助けないと
という感じで思考を巡らせたのかもなと勝手に納得。
美緒の想いを無視しているとも言えますけれど、「人を救いたい」と心から願う芳佳らしい考え方だと思うんです。
こうして芳佳は、美緒の為に全魔法力を絞り尽くして真・烈風斬を放ちました。
結果魔法力を失ってしまったのですが…。
劇場版は、そんな魔法力を失った状態から始まりました。
ここで芳佳の本来の姿が描かれていたと思うんです。
魔法力という「人を守れる力」が無くとも、他人を助ける為に全力を尽くす。
火災に見舞われ、1人の隊士が死を覚悟した船で、ただ1人命令も制止も顧みず隊士を救いに向かった芳佳。
ネウロイに襲われた村を発見し、力も武器も無いのに、村人を助けに向かう事を指示する芳佳。
彼女の真骨頂ですよね。
ここの流れは本当に良かった。好きですね。
で、彼女の性格とは少々無関係の描写ですけれど、静夏の愛銃である紫電二一型を重そうに扱っている姿が非常に印象的でした。
芳佳が力を持たないごく普通の少女である事すら描いているようなシーン。
2期まで通して見てきましたが、芳佳を始め少女達が銃を重たそうに扱っているシーンは、記憶に無かったんです。
覚えてないだけで実際はあったかもですが、僕の弱い頭は覚えておらず。
だから、余計に印象強く残ったんですよね。
ああ、普通に重いんだ…と。
と同時に、魔法力を使っている状態では、筋力が強化されるのか何なのか易々と扱えるという事も分かりました。
小型の拳銃ですら、ずっしりと重たいといいますし、ましてや発砲には相応の力が必要らしいですからね。
難なく銃を扱えているのが異常だったんですよね。
でも、それを魔法力で可能としているのでしたら問題無し!!
ウィッチには、美緒の魔眼、トゥルーデの怪力等々。
各自が固有魔法を有しているようですが、これは全ウィッチに共通している事なのでしょうね。
ウィッチの力を再確認できると共に、改めてこの時の芳佳の非力さが強調された素晴らしいシーンでした。
さて。
自分の信念を貫いて、村人を助けに向かった芳佳。
でも、力及ばず重体に陥ってしまい…。
ああ、本当にここからが(ここからも)滅茶苦茶良かった。
静夏の必死の呼び掛けに、ストライクウィッチーズの面々が呼応。
特にここまで出て来なかった美緒の「宮藤ーーーーー!!」には心底感動を覚えました。
そんな仲間達の声が芳佳の元に届き、彼女は魔法力を復活させました。
これは彼女の血の成せる業だったのでしょうか。
よくは分かりませんが、その可能性は否定できないので、何とも言えないのですが…。
それでも確かな事は、一度は失った魔法力も時には復活する事もあるという事実ですね。
坂本美緒のドラマ
残念に思った点についても書きます。
美緒のドラマ周りについてです。
彼女を描く際に使われたのが、前述の「成人前に魔法力を失う」というウィッチに等しく訪れる運命。
戦場で育ち、戦場に生きてきた美緒は、戦い、そして人々を守ることが何よりの生き甲斐だったようです。
そんな美緒から戦う力と場所を奪おうとし、それに抗う姿を描く事で、美緒というキャラクターを描かれておりました。
で、残念なのが「成人前に魔法力を失う」という設定を美緒のキャラクターを描く事でしか使用していなかった点ですね。
使いようによっては、非常にシリアスな面を強調出来る事なのに、美緒1人にしか作用させなかったのは残念かなと。
もっと広範囲に使っても良かったと思うんです。
例えば、芳佳に絡めて欲しかった。
芳佳は、まだ15歳。「成人前」とは言えない年齢の上に、家系の事もあります。
芳佳が自然と魔法力を失うのはおかしいかもしれませんけれど、その兆候を見せるだけでも面白かったと思うんですよ。
その上で既存の展開に繋げても問題は無かったと思うし、劇場版の魔法力復活にも違った意味が見出せるようになったと思うんです。
芳佳が魔法力を復活させた事が美緒の復活にも繋げられるからです。
前例を示せば、美緒の魔法力復活劇を描いても自然になります。
まあ、ようするに、殆どのウィッチに訪れる悲哀をたった1人背負い込まされた彼女にも救済と活躍の場を与えて欲しいという事ですね。
劇場版の出演の少なさは、ちょっと残念でした。
もっと胸のすくような大活躍を期待していただけに、戦闘面での活躍が無かったので。
ただ、魔眼すら失い、飛ぶ事も出来なくなり、それでも芳佳を助けに「ストライクウィッチーズの1人」として現れてくれたシーンが抜群に良かったんです。
出演量の少なさを補って余りある名シーン。
芳佳の項で触れた、感動の理由がこれですね。
2期ラストの芳佳の台詞。
「(魔法力を失っても)11人のうちの1人」
を体現していたから。
もうそれだけで「これで良かったんだ」と思えたほどですが、欲を言えば、もっともっと活躍してもらいたい。
2期2話での烈風斬を決めたシーンが何よりも見栄えがし、格好良かったから。
あの勇姿をもう一度見たいんです。
彼女が魔法力を失うまでのドラマ。
そして事実を受け入れ、前を向いて11人のうちの1人として戦場に立つ姿は、凛々しくも格好良い生き様を描いて下さっていたとも思います。
それ故に「成人前に魔法力を失う」という設定を彼女1人に背負わせたのも、納得しなくもない。
けれど、芳佳にも流用して、美緒の復活に可能性を提示して欲しかったんですよね。
そこだけが唯一残念に感じた点でした。
3期への希望
ここまでを受けて、3期への期待というか希望を連ねてみます。
先ずはネウロイ側のドラマの描写。
人型ネウロイを登場させ、ネウロイという敵が何を思い、何をしたいのかの一端が描かれようとされました。
しかし、その想いの殆どは描かれる事も無く、2期や劇場版では本当に単なる「正体不明の敵」としての側面しか描かれませんでした。
既にネウロイを正体不明のままにする意味は無くなったと考えます。
充分にストライクウィッチーズ11人のキャラクターを掘り下げられたのだから。
TVシリーズ24話と劇場版という尺を使って。
だから、ここからはネウロイに焦点を当てて欲しいかなと思うんです。
正体・目的・存在意義。etc.etc.
全てを明かした上で、「対ネウロイ戦争」という主軸の1つを濃厚に描いて欲しい。
今まではここを描いていなかったから、実はいくらでも話が作れる作りになっていたんです。
何処からどのようにして現れるのかも敵の全体像さえも暈し、不明のままにしていたから、無数にネウロイを出現させる事が出来ていた。
ネウロイがいれば、取り敢えずお話は作れますからね。
「名探偵コナン」とかミステリ物と一緒の理屈ですよ。
犯罪者の総数なんて決められないし、決まってないんだから、無数に犯人を作れる。
犯人が居れば、それを捕まえる探偵の出番が作れて、結果話を作れることになる。
無尽蔵に”作れる”ネウロイがある限り、永遠に続けることも可能で、でもそれだと完結しない作品になってしまいます。
どんな名作も完結してナンボだと思ってますし、その為にもネウロイの全容の描写は必要かなと。
兎も角、ここが希望したい点の1。
2つ目としては、やっぱり美緒の復活ですね。
魔法力の無いまま11人のうちの1人として描いていくのも、それはそれで面白いとは思いつつ、けれどもまたあの勇姿を拝みたい。
芳佳の魔法力復活の理由が、血筋や潜在能力の高さからという可能性も否めない(寧ろその可能性の方が高いとすら思えるが)から、これを美緒の魔法力復活の根拠とするにはやや弱いかもしれない。
とはいえ、復活の可能性の提示がされた事は事実。
美緒もまた、魔法力を取戻し、最前線に立って欲しいと願ってやみません。
話の流れから、あくまで後方支援に徹するとした方が綺麗だとは思うんですけれどね。
終わりに
劇場版の最後に表示された「つづく」の文字。
ただのファンサービスなのか、はたまた本当にそういう企画があったのか。
劇場版公開から1年、まだ答えは提示されていませんけれど…。
(僕は本編しか見てないので、他の媒体で既に発表済みかもしれませんが…)
3期は、是非ともやって頂きたいものです。
そしてネウロイのドラマや美緒の勇姿を見たい!!
そう思ってます。
あとあと、リーネとエーリカを最前面に出してくれると、個人的にはもっと嬉しいかな(笑